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この世界で上を目指したい。  作者: しゃーー
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5話 事件の匂い

 さて、どうするか。

 どうやらエアが誘拐されたらしい。

 その犯人が目の前にいる。

 まぁいい。

 乗り込んでみるか。


 「その話、詳しく聞かせてくれませんか?」


 ──バンッ!っとドアを開き中の男たちをにらむ。


 「・・・何の話ですか?」


 頬に傷のある男が言う。

 さすがに部屋の中ではフードをとってあるようで顔を確認できる。

 片方の顔の堀が深い男はじっとこちらを見ている。


 「え、えっと・・・。誘拐をした話ですけど・・・。」

 

 聞き間違いじゃないよな?

 部屋を間違えたとかじゃないよな?


 二人ともこちらをじーっと見つめている。


 「し、失礼しました。」


 耐えきれられなくなり、部屋を出る。

 そのままどっかいくふりをしてコソッと戻る。

 そしてドアに耳をあてる。


 ──お前声が大きいんだよ・・・!


 ──す、すまん。気を付ける・・・。


 ──いったんボスの所まで戻るか・・・?


 ──そうだな。あのゴリラいないみたいだし。


 ──あぁ。この誘拐を成功させないと。


 「そこまでだぁ!!今誘拐って言いましたよねぇ!!」


 俺は先ほどよりも強くドアを開け、中に飛び込む。

 その反動でドアが壊れたが緊急事態だ。

 女将さんも許してくれるはず。


 「な・・!?俺ら小声で話していたぞ!なんで聞こえてる!?そうか!ずっとドアの前で聞き耳をあてていたな!この盗聴癖の変態め!」


 バカめ。

 そんなことを言うということは罪を認めていることと同じだぞ。

 それはそうと俺はそんな趣味を持っていない。


 「人を勝手に変態呼ばわりするな!誘拐をしているほうが変態だろ!」


 誘拐犯のほうが変態だ。


 「宿屋の従業員が人様が休んでいるときに聞き耳を立てるんだぞ!それを変態と言わず何と言うのだ!」


 鼻息を荒くして頬に傷のある男が言う。


 「・・・それは確かに変態と言います。」


 い、言い返せない。

 なんか勢いで言い負かされている感じがあるけど。


 「ガイ!落ち着け!そこまでにしろ!まずは俺らの計画を聞いていたこいつをどうするかだ!」


 顔の堀が深い男が言う。

 ガイと呼んだ頬に傷のある男はハッとした様子をして腰に手を伸ばす。

 手を伸ばす先は小刀の鞘のようだ。


 「させるかぁ!」


 俺はガイまで走っていき足で地面を強く押して腰の回転を利かし、体重の乗った右拳であごを打ち抜く。


 ゴッっと鈍い音がする。


 そのままガイは派手に音を立てて吹っ飛び気絶する。

 地球でボクシングの真似事をして遊んでたのが役に立った。

 

 「いってぇぇ・・・。」


 思いっきり殴ったせいで右手が痛い。

 今は使い物にならないだろう。

 

 あと一人。


 そう思い後ろを振り返るともう一人がナイフを構えて首筋をめがけて突いてこようとする。

 

 「くっ!」


 それを右手でガッと払ってそのままカウンター気味に左手で一撃を入れる。

 ガスッとなって顔の堀が深い男はのけぞり、ナイフを手放した。

 カランッとナイフが落ち乾いた音がなる。


 「・・・いつから『ブローベア』の宿にいた?」

 

 そう顔に表情をなくしながら言う。


 「『ブローベア』って?」


 なんだその痛い名前は。

 

 「あのゴリラのことだ。」


 あぁ、女将さんのことか。

 あの人『ブローベアー』って呼ばれてるのか。


 「それなら昨日からここで働き始めたけど。」


 どうしてこんな話をする?

 時間稼ぎか?


 「・・・そうか。働くってことは金が欲しいんだろ?どうだ。俺たちと手を組まないか。あのゴリラは結構名を轟かせた冒険者でな。金はたんまりと持っているはずだ。これを成功させれば1割やろう。悪くない話ではないか?」


 ニンマリと笑いながら問いかけてくる。

 

 「いやいやいや。お断りしますよ。俺はそのお前たちが誘拐しているエアや女将さんに助けられ感謝しているんです。それを裏切れと?」


 俺はひねくれているが薄情なやつではない。

 多分。


 「そうか。」


 そう言い、笑みを崩さないまま顔を蹴り上げてきた。


 ──油断した。

 

 目がチカチカする。

 なんとか立ち上がって構える。


 その瞬間また衝撃が走る。

 はいつくばって何が起きたのか理解しようとする。

 頭が痛い。

 また蹴られたのか?

 いや、分析している暇などないか。

 次にくる攻撃に備えなければ。


 そう思い、地面に手をついたまま男みるとナイフを拾いに行こうとしている。


 どうする?どうやったらアイツを倒せる?


 ズキズキと熱をもつ頭で必死に考える。

 そしたら一つのことを思いつく。

 

 ──想像さえできれば簡単にできて、基本攻撃に使われない『魔法』なら奇襲できるのでは──


 ただ、何の魔法を使う。

 『火』ならただ相手は火傷するだけで不利なこの状況は変えられない。

 『水』はただその通り水を出すだけ。

 『風』は・・・ナイフをこっちに持ってくるか?いや。成功するとは限らない。勢いが強すぎたらナイフで俺が怪我をする可能性もある。

 『氷』は・・・これだな。水を一回出さないといけないけどこの状況を解決するにはこれが一番だろう。


 狙いはアイツがナイフを持った時だ。

 落ち着け。

 頭がグワングワンするがそれくらい耐えて集中しろ。


 もうすぐナイフを持つ。

 そのとき極度の集中のせいか時間が進むのが遅い。

 

 まだか・・・まだナイフを持たないのか・・・。


 あとナイフまで数センチ。


 ──よし。つかんだ。


 「いっけぇぇぇぇ!」

 

 俺は床に落ちたナイフと触れた手を目がけて水を出す。

 その直後にすぐさま氷にする。


 「な!?」


 男は驚いた声を出して目を見開く。


 よし。成功した。


 今、男は床と手が氷で固められて自由に動けないはずだ。

 まぁ、時間がたったら溶けるから動けると思うけど。


 「お、お前!親に人に魔法を向けてはいけないって習わなかったのか!?」


 この世界では人に魔法を使ってはいけないらしい。

 そりゃそうか。


 「誘拐している人に言われても心にきませんよ。」


 俺はそう言い、あごを思いっきり蹴り上げる。

 

 よし。気絶したな。


 俺はこの二人をきつく縛り上げた。


 いそいでエアを助けに行こう。

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