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7.前世の縛り

 段々と暗くなっている。

 僕も今できるだけ周りを確認しといた方がいいと思ったのだが、暗くなると視界も同じく暗くなる、記憶のなかの人間の目と大した変わらない。

 どうやら、この体の性能も段々とアップグレードしないといけない仕組みのようだ。

 幸い、睡眠の必要性もなく、色々考え事もできる。

 ......

 火をつけよう。

 ...いや、暗いままだったら、怖いじゃないか。体から出た青い光りもあるが、はっきり言って、これを光源としては使えない。

 そう言えば、怖い感情も残っているのか...まぁ、人間である記憶が残っているのはきっと何かの意味があるだろう、と信じたい。

 それに、何も見えないところでずっとボーっとしていてはいささか人間らしいとは言えないな。

 それにちょっと考えもある。

 ライターを願い。

『了解』

 腕から青い光強まって、周りの木が青く照らされた。

 正直...これもちょっと怖い。

 そして、ライターだ。

 一旦拳銃をちょっと大きめの箱の上に置いといて、ライターを拾い、点火。

 うん、コンビニで買える普通のライターと同じだ。

 ちょっと安心した。

 エネルギーも大した減らしていない、多分質量の関係かな?同じく点火によって使うもので、火薬とガス。この二つは確かに同類とも言えるが...

 ちょっと実験してみよう。

 今あるリボルバーの弾一発。

『了解』

 うん...よくわからないな、もしかしてデータは自動にダイジェストされた?もっと詳しく見たいだが...

『詳細データ』

 おお、でたでた。

 どれどれ...弾一発のコストはライターよりやや高い。重さもそうだ、火薬やガスなどは専門外だから、質量で測るのは大雑把すぎるかもしれない...創りだしたものにも関わるかもしれないな。

 弾をリボルバーの隣に立たせる。

 うんうん、ゴージャス。

『意味不明』

 男のロマンだ。

『意味不明』

 うん...気にしないでくれ。

 周りの地面に転がっている枝が湿っているのばかりだが、ちょっと探せば乾燥なのも結構ある。

 野営はしたことがないが、テレビで見た内容から得られた知識を頼っているしかない。幸い今の僕は呼吸する必要もなく、一酸化炭素中毒の恐れもない。

 でも、燃えにくい湿っていた枝はやっぱり避けたい。煙が出るからな。

 人間感覚は大事にしないと。もし傷とかを負った人に出会ったら、不注意で止めを刺すのはごめんだ。

 そうなりたくないからな...まぁ、ただの焚き火もそうならないだろう。

 葉っぱをライターでもやして...枯れた枝をゆっくり追加していく。

 よし、上手く行ったか?

 うん...やはり湿気が酷いからなのか?

 いまいち燃えにくい上、すごい煙が出てくる。

 どうしたもんか。

「な、アイ。ガソリンやアルコールってどのぐらいのエネルギーが消費されるんだ?」

『計算中...』

 うん...結構かかったな。

『結果:

 ガソリン:1L/30%

 アルコール:1L/20%』

 うん...どういうこと?ライターも弾も...基準がわからん。

 アイ、その基準とは一体何なんだ?

『解析不能』

 無からものを作るなんてあるはずがない。きっと何かの仕組みがあるはずだ。でも、一体どういうものなのだろうか...

 はぁ...謎が深まる一方だな。多分僕だけだと一生もわからない可能性があるじゃないか?この機体を。

 でも、燃料はやめとこう。割に合わない。

 それよりもっとも聞きたいことを聞かなきゃ。

「僕はいったい何なんだ?」

『孵化機。』

「...何の?」

『さぁ?』

「さぁって...」

 おいおい...

「まぁ、そのことは一旦置いといて。この火はエネルギーになれるのか?」

 エネルギーはいつも最も大きな問題とみなされている、前世も今も。少なくとも今の僕はそうだ。

 燃え盛る炎の塊に目を置く。火であることは変わらないが、形を変えないことできなかった。ゆらゆらと僕の目を引きずっている。

 淡い青い色の目が黄色の光に囲み、後ろに広がる夜の暗闇がより色濃くなって、そして気づいた。いつの間にか自分は一人きりこのような暗闇に残された。

 闇は物凄く濃い赤に見える。

 そういえば夜があるってことは、その太陽みたいな長いものも変化するのか、僕の記憶の中にある太陽と違うようだがな。

 あの部分は白に近い淡いピンク色になっている。まるで夜空に流れる光る川のようだ。

 木々の隙間から空を眺めたら、その不思議の景色に初めて気が付いた。

 星々はその川に溶け込んで色んな色で飾られ、淡い光を放っている。太陽の光を遮った時と同じく、葉の隙間こそ覗けるその儚く美しい光景をもこの森の外へ追い出した。これしか見ることがかなわなかった。

 それでも綺麗だな......

『火のエネルギー転換率計算

 10%エネルギーの補充はおよそ10時間が掛かる。』

 意外な景色に夢中になった僕はアイの言葉によって現実に戻った。

「火だけでもエネルギーに転換できるのか。」

 効率は悪いが意外と便利だな。

「でも、このままでは埒が明かない。最も効率な方法はあるのか?」

『物質の摂食及びマナの吸収。』

「マナ?」

『生物及び人工生物に存在するエネルギー』

 生物か。

 僕はロボットである先入観が強すぎるかな。アイの話によると、エネルギーを補充する最も効果的な方法は食うってことか。

 ...そして、多分だけど、生嚙り。

『生命活動が停止した途端に、マナの流失が発生する。』

 そうか...

 要するに、野生動物みたいな感じ?

『半分正解』

 普通に料理したものを食うのは?

『エネルギーの補充が30%落ちる。』

 ...ちょっとキツイな。

「でも、何か食えないはあるのか?」

 人間感覚で食事をすると機械に悪いものを取り込むかもしれない。最も簡単な例としたら水とか。

『制限なし』

 うん?なんかこれはこれでやりづらいな...

「じゃ、どうすれば...どんなのがあるのか?」

『...』

「え?アイ?」

『土』

「...は?」

 まさかね...土を食うのか?

「本当に?」

『...』

 返答はなし。

 多分アイは問題を判断する基準があるらしい。

 まぁ、この機体の可能性を図るには丁度いいかもしれないな。

 口は...ボールの光るところちょっと下のところか、人間のと同じようだ。

 試しに口をパクパクすると、なんとなく人間だった頃みたいに動けそうだ。

 前の足で土を一杯掴んで、目の前に運ぶ。

 まっし、まっっしだな...

 じゃ、いただきます。

 ......

 うん、土だな。

『プッ...』

「プ??」

『ぷっはっはっはぁ...!!』

 え?

『相変わらず天然だな...』

 アイ?!急にどうした...いや...

 この声...まさか!?

『本当に...また会えるとは思わなかったよ、お兄ちゃん。』

「遥!?遥なのか!!どこ?お兄ちゃん見ての通りこのざまだ、お前は...」

『兄ちゃん...落ち着いて聞いて。』

 僕の中で響く渡るかのようにはっきりと聞こえる、彼女の言葉を聞きに逃がすのを怖くて、ただ何の声も出さなくなり、静かに次の言葉を待つ。

 そして、気づいてしまった。

「...ハルカ。まさか...ウソだろう...」

 話しかけてみた、うまく自分の考えをまとまらなかった、本体の発声の部分もぎこちなく動くだけだ。

『そう...多分それよ。』

 僕は絶句した。

 ...祈ったばかりなのよ......お前らが幸せにって...

『私も死んちゃったね...』

 パッキパッキと薪から小さな爆音が響いる。他人の目があったら、ここは途轍もなく不気味な一幕であるのだろう。

 彼女が今どんな気持ちなのか...何と宥めるのも分からなくなかった。その腕を周りに飛ばせて、バタバタしていただけだった。

『...あんた、それってエネルギーの無駄遣いじゃないの?』

「あっ」

 間抜けの声と共に腕の動きがピタッと止まった。

『はは...冗談だよ。時々冗談言わないと狂ってしまいそうだからね...』

「え?ちょっ...遥?!何があったのか?」

『あっ...そうだ、おニーチャン...ゴカンがじゃんとある...だなァ...』

 え?どいうこと?

 遥の声はとても弱々しく、頭の中に溶け込んで消えてしまいそうなほど小さくなっていく...

 じょ...冗談だよな?!せっかくこんな奇跡があったのに...これからの日に自分一人で向き合いしかないと覚悟を決めなければならない時に、僕にこんな奇跡を...それなのに...

『AIから汚染が確認された。』

 ...汚染?

『BUGの修復によってAIに支障が発見した、思考領域のスペースが大幅に使用され、本体に過熱の恐れがあり。』

 ちょっと待て!汚染って?どうしてAIが突然人格が持ち始めるのか?!

『AIの転換は外部から、或いは思考領域からの干渉によって行われたものと推定。』

 え?...あっ、ってことは、彼女は遥...僕の妹本人じゃない可能性だってあるってこと?

『はい』

 でも...それでも...

 やはり放ってはいけない...

 事実はどうであれ、彼女は遥だ。偽物であっても僕の一部であり、ただのAIだ。

 僕は信じることにするよ。僕だってこんなものになったじゃないか。

 それで、どうやってそのAIを安定させるんだ?

『①.活動スペースの拡張。

 ②.思考領域の改造

 ③.AIのダイジェスト化。』

 僕に与えた喜びと希望が僕を臆病にしたようだ。機械の腕の先端から出て来る人間の手を模造してたかのような指がついてある。両腕の指がが絡み合い、とても神経質そうに見える。

 やはり現状維持するしかないか。遥には悪いが、僕はこれからもっとエネルギーを確保しない限り彼女を復活させることは叶わないのだ。

 土...消耗を含めて計算した後、一握りの土で2%のエネルギーが回復した。このペースを上げるには、他のものも試さないと。

 ザラザラ...

 思考に深入りすぎたか、直ぐ傍に生えたちょっと高い草むらそういう物音か出て来たのが気がつかなかった。

 自分の無機物の体が狩猟の対象にならないと言う慢心か?それとも妹との再会なのか?

 パキパキ

 いや...そいうことより!...そう!そうだ!僕の銃は?!

 ここにいたはずだ!クソっ...どこだ!

 パキ

 あっ、あったあった!まだ出てこないのか...今のうちに弾を...

『警告!警告!...』

 今度なんだ?もしかしたら草むらに潜んでいたのは結構やばいやつなのか?!

『高温警告!速やかに火元から離れ!』

 そっちかい!!

 僕は慌てて焚き火から離れてた、どうやら火が当たったところは背後だったらしい。

 感触がない、故に痛みも熱さもない。

 この体の致命的な不足が気づいた、でもいまはそいうことより...

 草むらの騒がしい声が段々収まった。

 なにかが出てくるだと思っていたが、意外な高鳴りが聞こえた。

 後から知ったことだが、それは悲鳴であると。

 キシャァァァ!ッキシャァァァ!!

「キシャ?」

 それも意外なことに、聞き覚えのある声だった。

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