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4.ままならない腕探し

 不明確な状態は確かに怖い。今、自分の状態を知るだけでも大した収穫と言えるだろう。

 僕はキャンプを後にした。

 また、来ると思うのが、今も自分の腕を探しているのだ。

 ...多分もう近い、はず。

 正直言って、そんなに飛ばすとは思わなかった......かっこいいけど、今度気安く使わないでおこう。だから今はその剣を暫くの間使わせてもらう。

 機械とは言え、壊れるんだ。動いたら構わず襲いかかるものが現れない保証は何処にもないから。先の蜘蛛はまだましの方かもしれない。

 自分は未知な世界にいる。ゲーム感覚も段々抜けて、”異世界だな”と言う実感も浮き始めた。

 余計な危機感などは、ないだがな。

 いつ命を失ってもおかしくないかもしれないな、これは。

 ははは...笑う場合じゃないけど。

 先のキャンプの中にある血の痕跡はこの剣にも存在している。でも、僕はそれを気にしていなかった。

 目の前に広がっていた森から生まれたサバイバル意識が目を遮られたのか?それとも平和バカとも言われた前世の社会からもらった影響か?

 僕は危険がまだ近くにいる可能性をスルーしてしまった。

 実際に何も起こらなかったことに、幸いとしか言えなかった。


 沼のエリアから離れ、地面も前より大分ましになった。昆虫や植物種類も増えてるが、全て正常なサイズである。前の世界との品種こそ違うものの、大きさからは特に変なところはない。

 そんな大きな蜘蛛に出くわす沼の隣でテントを張るやつがいるだなんて、神経が太いにも程があるだろう。

 二つの腕は歩く担当で、一つの腕はその剣で植物を切ってちっさいな道を作る。

 ちなみに、僕の腕は右利きか左利きか、そう言った概念がないみたいだ。それだけではなく、腕と足の違いもとっくに分からなくなったみたいだ。

 例えば、今僕は剣を使っている腕を歩くのに使って。そして、歩くための一本の腕を剣を握らせる。

 結果的に、左手から右手に代わるのと同じ感じであった。

 もし必要がある場合、この三本の腕を全て戦うことに使うのも可能だ。

 まぁ、その場合は移動手段がなくなって、慣性法則に沿って移動し続けることになったのだが、力のある敵に強制移動されるかもしれない、すなわち、持ち帰り...

 まぁ、僕のネガティブの予想をほっといて。この剣は凄いな。何もないところで素振りかのように、煩い植物を切り落とした。

 体積からみると、僕は大きめの西瓜ぐらいのはずだが、こんな剣は成人にとっても結構な重さがあるはずだ。それが満足に振ることができる。もしかして、実は僕凄いじゃ...

『エネルギー低下中。

 現在ーー70%。

 予測活動時間はーー2日19時間17分。』

 ええええ?......こ、こんなにか?!

 思わず手を止まってしまった。

 嘘だろう......何分も動いていなかったのに......

 剣先の部分はだらりと地面に落ち、砂や土がちょっと舞い上がった。

 ......これは僕が思ったより重いかもしれない。

『叩き斬りーー動作確認。』

 おお!システムからの反応が出た!

 動作?ただの振りだけなんだが......いや、これは何の意味があるなんだ?こんな簡単な動きを確認しても特に利点が見つからないが。

 でも、こんなことに反応するのか......

『解析システムは主となる意識の思惑によって自動的に作動し始める”自立型AI”。

 動作の確認による世界システムとの繋ぐを確認。』

 これは説明になるのか?言ってることが全然わからない...

 ......そして、AI。僕の中に他のAIを作るのか?つくづく実感がなくなったな......

 僕も...そのようなAIで出来ているのか......悲しいと言うより寂しいに近い感情が出てきた。

 僕は人間だった。いい人間と自称する自信がなくとも、悪い人じゃないはずだ。

 若いうち死んで、そして、ロボットになって、このわけのわからない世界に放り込んだ。

 ......意識はある...僕は本当に生きているのか?

 我が思う、故に我があり。

 それは信じたいのだが、いざという時、人は迷うものだ。特に生物ですら怪しいこの体......

 五感は視力と聴力しか残っていない。触覚を感じる時に、謎の電子データが一気に頭の中に流れ込み、それが今の僕が感じることのできない残りの三つの感覚を代わるものだと直感でわかった。

 肉体がないから、食事の必要もなくなった、先から言った通り、まるでゲームや映画のようだ。

 幸い、理知...知的好奇心はまだ存在しているようだ。まだ生きるための動力はある。僕は人間だ、機械のように無感情のままではストレスでおかしくなりそうだ。

 そして、思考の自由もある、まだ絶望と言えるほどの状況ではないのだ。僕は僕のまま生きていればいい。

 ふぅぅ......色々考えて頭が熱くなった。

『叩き斬りーーハッキング不...』

 うん?システムからなにか言われたようだが...

『警告ーー思考領域オーバーヒート。』

 えええ!?ホントに熱くなってる!!

 意識をそちらに向ける前に、やばい状況になった。

『解析システムよりーー

 解決案:①何も考えないようにする

 ②温度を下がらせる

 ③思考領域を拡張する』

 何も考えないって......今更はどうしよもないじゃん?!

 思考領域って、どうすればいいの?!逆に考えるじゃないか!!

 じゃどうにか温度を下がるしかないか。

 森から引き返して、すぐさま沼のある所についた。一旦剣を置いといて、全部三つの腕を空に浮かんでだら、僕はそのままただの空に浮かんでいるボールとなった。

 頑丈そうな木を見つかって、三つの腕の先端を開き、五つの指を出した。その木をしっかりと掴まり、なぜなら、その下には丁度いい沼があった。

『警告ーーオーバーヒート状態がが続いていると、思考領域に深刻なダメージを負わせる恐れある。』

 あぁーーそれはきれいな緑ではないなーー

 はぁぁ......仕方がない、か。

 覚悟が決まったら、ボールである僕は本体が目の前にある沼に真っ直ぐに突き込んだ。




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