添えて~でございます
--出発の日
早朝から約300名の傭兵と戦場へ向かった。
目的地まで歩いて3日掛かるらしい。俺に支給されたのは前の給仕係が使用していた大鍋と調理器具だ。
これを背負って行かなければならない。筋トレしていなければ担ぐ事さえ困難だったろう。
「よーし。今日の行軍はここまでだ!野営の準備をしろ!」
団長の声でやっと行軍が終わる。
もう日が暮れそうだというのに休憩なしでこれはキツイ。立ち止まる時と言えば道中魔物に遭遇した時だけだ。そしてこれからが俺の仕事だと思うと気が重いがロニーの為に頑張らねば。
「グレイ。さっきの魔物だ。これも使え」
俺が火の準備をしているとベンは大きなダチョウ?のような魔物を持ってきた。
「・・・これ食べれるんですか?」
「毒はないから大丈夫だ」
「了解です」
この世界では魔物は普通に食べる。というか動物と魔物の違いは沸くか生まれるかの違いらしい。
どういう原理で魔物が沸くかは定かではないが、それぞれの魔物が沸くエリアは決まっているらしい。ダンジョンや魔素の濃い所ではより強い魔物が沸くようだ。
さてと・・・さっき貰った魔物と調味料と・・・てか材料少なくね?
「すいません。ベンさん材料ってこれだけですか?」
「あー。あとは適当にその辺の野草とかキノコでいいぞ。グレイは確かそういうの詳しかったよな?」
「まぁそうですけど300人分はさすがにないと思うんですが・・・」
「ガハハ。お前1人で300人分作るつもりだったのか?」
「あっ」
「ハハ。300人分もいらねぇよ。お前が作るのは幹部の料理だけだから20人分もあれば問題ねぇ。他の奴らは干しパンだからな」
なるほど。てか普通そうだよな?ちゃんとした料理なんて行軍中は食べないよな?たぶん。
「ウチの副団長様はグルメだから給仕係がいるんだとよ。ラッキーだったな?」
「ハ、ハハ・・・」
めちゃプレッシャーじゃないですか!大丈夫かな。
プレッシャーを感じながら俺は火を焚き野草を集めてスープを作った。
□□□□
「出来た!・・・うん。良い感じだ」
我ながらこんな材料でよく作ったと思う。
俺の声が聞こえたのかベンがやってきた。幹部のテントに案内してくれるようだ。
テントに入ると屈強な男達が一斉にこちらを見てきた。落ち着け俺。冷静に冷静に・・・
「お待たせしました。<鳥団子と香草のスパイシースープ。干しパンを添えて~>でございます」
干しパンを添えて~の辺りは使い方が間違っているような気がするが、この世界じゃ誰も分からんだろうからまぁいいか。
「おお~!これは美味そうだな」
「名前も洒落てるじゃねぇか」
「うめぇ!いいぞ!小僧!」
フフ。団長にも褒められた。反応は上々だな・・・え~と。副団長は何処かな?
いた!・・・仮面したまんまじゃん。よく見たら口の部分だけ仮面空いてるし。
どうなってんの?その仮面。
「副団長の顔は誰も見たことねぇんだ。残念だったな」
落胆しているところをベンに感づかれた。いや。別にイケメンなんて興味ないけど反応を見たかったんだよな。副団長のおかげで雇われてるんだし・・・てかベンもスープ食べてるって事は幹部だったのか。
チラッと副団長の様子を見てみるが黙々と食べている。口に合っているかどうか分からん。
でも食べてる事は及第点って事かな?