レシピ本
--次の日
「給仕係。朝だぞ。起きろ」
ロアの声が聞こえる。
「・・・う~ん」
「魚を取って来たぞ。朝食を作ってくれ」
「はぁい・・・え!?」
寝惚け眼を開くと目の前に大量のキノコと山菜が積み上げられていた。
そしてサメみたいな大きな魚。2mぐらいありそうだ。
「・・・ロアさん。こんなに食べるんですか?」
「昨日はほとんど何も食べてないからな。それにこれは3人分だ」
それにしても多い気がするけど・・・というかこんなにデカイ魚何処にいたんだ?
「分かりました。でも調理道具とか鍋とか何もないですよ?」
「そこをなんとかするのがお前の仕事だろう?」
なんというムチャ振り。
「では私は火の準備をしてくる。下ごしらえは頼んだぞ」
「了解です」
うーん・・・魚の腹の中に山菜とかキノコとか突っ込んで焼くしかないか。
「あの・・・」
「ん?」
声の方を振り向くと昨日助けた女の子がいた。昨日は暗がりで顔がよく見えなかったが日本人みたいな顔をしていて可愛いらしい。黒髪のセミロングで歳は15.6歳といったところか。恐らく人族だ。
「き、昨日は助けてくれてありがとうございました」
少女はペコリと頭を下げる。すっかり元気になったようだが少し怯えているように見える。
「あぁ。いや。まぁ・・・どういたしまして」
ロアの着替えを貰ったのか服は新しくなっていた。
しかしこの角度は・・・眼福眼福。
『ちょっと!なに照れてんのよ!鼻の下伸ばして気持ち悪い』
『そりゃこんなロリ巨にゅ・・・じゃなくて可愛い子と喋るのは緊張するだろ!』
『はぁ~!?私と喋る時は全然緊張してないじゃない!こんな超絶美少女なのに!』
緊張しないのはそういう感じだからだろ。てか何で怒ってるんだ?
『ハイハイ。ごめんさいね』
『ふんっ!』
リリはプイっとすると何処かへ行ってしまった。なんて扱いが難しい奴なんだ。
「あの・・・どうかしましたか?」
「あ!いや。ごめんごめん。たまに偏頭痛がしてね」
「そうなんですか。あの・・・シャルルって言います」
「シャルルね。俺はグレイだ。よろしく」
「よ、よろしくお願いします」
俺のハイパー爽やかスマイルで少し緊張が解けたようだ。
「それにしてもこんなデカイ魚何処で捕まえたんだろう?」
「今朝早くグレイ様がお休みになっている時に近くの湖で捕まえてました」
捕まえた?こんなデカイ魚を?すげぇなおい!
「じゃあそこへ案内してもらっていい?井戸が枯れてるから水が欲しいんだよね」
「あの・・・水なら汲んでおきました」
「お~!気が利くねぇ」
シャルルの後ろに置いてある桶には水がたっぷり入っていた。これなら食材を洗えそうだ。
そう言えばリリの家にあったレシピ本にすり潰すと調味料の代わりになる雑草があるって書いてあったな。
え~と!お!あった。あった。これに俺の血を一滴入れてすり潰す。
どれどれ・・・え!?これ醤油の味するんですけど!マジかよ!何処にでもある雑草なのに。フェルーには醤油なんてものはなかった。あってせいぜいケチャップもどきぐらいだ。
「何やらいい匂いがするな」
匂いにつられて火を起こしていたロアがやってきた。
「ロアさんこの雑草知ってますか?」
「ん?何処にでも生えてるこれか?」
「はい。これです」
「知ってるいるというかよく見るただの草だな。これをべるのか?」
ふむ。やはり知らないか。
「はい。調味料として使えるんです」
「そうなのか?まぁお前が言うんなら美味しいんだろうな」
あのレシピ本はやはり変わっているものらしい。勝手に醤油草と名付けよう。