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くさいセリフが言ってみたかった

ロアと見張りが戦っている間に俺は奥の部屋向かった。

奥の扉の前で立ち止まり少女に話しかける。


『部隊長は?』


『こっちには気づいてないみたいね。この鉄扉のせいかしら?』


鉄扉は恐らく中の音を漏らさないように新しく取り付けられたものだろう。

鍵はかかってないようなので扉をゆっくり開いた。


ピシッピシッ!


何かが空気を切る音が聞こえる。


「ネネよ!何故分かってくれない?こんなに愛しているというのに!」


声の方向を見るとマントを着た男が張り付けにされている女性を鞭で叩いている。女性の服は所々が破られ、露出した肌は真っ赤になっていて痛々しい。悲鳴を上げないのは激痛のせいか気を失っているのかもしれない。こっそり近づいて後ろから剣を突き刺せば倒せるかもしれないが、ここは少女が考えた作戦通りに。


「やめろ!」


「あ~?誰だお前?」


こちらに振り向いたマントの男は豚のような醜悪な顔で目がイっている。

見張りの部下の事など気にもしていない。


「その人を離せ!」


「なんだぁ?お前はこいつの恋人か?」


「そうだ!そしてその子はネネじゃない!」


「グフ。グフフフフ。良いねぇ。そういうの嫌いじゃないぜ。言ってみればお前はお姫様を助けに来た騎士様ってところだ。俺を倒したら返してやるぜぇ」


そう言うと部隊長は近くの小瓶を拾って女性に水を乱暴にかけた。


「起きろ!このまがい物!」


「ゲホッ!ゲホッ!」


女性は意識を取り戻したようだ。


「ほら。お前の騎士様が助けに来てくれたぜぇ」


部隊長は女性の顔を掴んでこちらに向けてくる。

女性は目が虚ろで意識が朦朧としているのか何も喋らない。


「この野郎!」


俺はアレスに借りた剣を抜刀し部隊長に斬り掛かった。


キィン!キィン!


剣戟の音が響き渡る。

なぜ素人同然の俺が部隊長とまともに戦えているのか?

ミスリルソードのお陰も多少あるがそれとは別に理由がある。


「ほら?どうした?そんなんじゃ俺は倒せないぜぇ?」


「黙れ!外道め!」


こいつは1対1の戦いにおいて相手が自分より弱いと思ったら必ず手を抜いて相手に優勢だと思わせる。


キィン!キィン!


「剣だけは良い物を持っているな?」


「・・・・・」


俺は防御を考えず剣を振っている。何故ならこいつは今の段階で攻撃してこないからだ。

確信があるわけじゃない。ないが部隊長の行動はここまで少女の言った通りになっている。


キィン!キィン!


「思ったよりやるな?最初は手を抜いていたのか?」


俺の攻撃を軽く受け流している癖によく言うもんだ。


「そこだ!」


俺は()()()隙を見せた部隊長の剣を力任せに弾いた。


ガキィン!


「クッ!しまった!」


部隊長の剣が宙を舞うと同時に尻もちを着いた。

俺はすかさず距離を詰める。


「ま、待ってくれ!この娘は返す!だから命だけは!命だけは助けてくれ!」


こいつの三文芝居には思わず笑いが出そうになる。しかしここは我慢だ。


「お前はそうやって言った人を助けた事があるのか?」


俺は剣を振りかぶる素振りをオーバーリアクション気味にやってみせた。


「・・・ある訳ねぇだろ!!」


その言葉と同時に部隊長の右の袖から何かが発射された。


ドスッ!


肉を抉る音が聞こえる。


「な、なぜ避けれる?お、お前如きが!」


肩から血を吹き出しながら部隊長は叫ぶ。


「お前に言う義理はない!」


「クソがぁぁ!」


部隊長の左手が動くと同時に俺は首を刎ねた。


「自分の下品な趣味を呪うんだな!」


俺は血振りをピッとしてカッコつけながら剣を鞘に納める。

うん。今の俺カッコイイじゃん!


『上手くいったわね!』


『お嬢様のお陰です』


俺は執事の様に少女に礼をした。


『やれば出来るじゃん!ちょっとカッコつけ過ぎで、顔はイマイチだけど』


『・・・・』


それを言っちゃおしまいだ。

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