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卑怯という概念について

--その日の夜


俺は少女から得た情報をもとに例の部隊長がいる村に向かっていた。王子から褒美として主戦場を離れて自由に動いてよい許可を貰ったのだ。よほどハンバーガーが食べたいのか俺に死んでもらっては困るとロアにも同行するように取り計らってくれた。兄弟で戦争をしているとは思えない程良い王子だった。是非戦争に勝ってランルージ王国の王様になって欲しいものだ。そしたら専属料理人になってボルツさんとロニーさんを楽させてあげられるかもしれない。


「しかしよくその教会にお前の仇がいると分かったものだな」


「ええっと・・・風の噂で聞いて。確信はないのですが」


風の噂とはちょっと苦しいが他に適当な言い回しが思いつかない。しかし確信はある。少女の情報だと昼間に部隊長が教会に新たな()()()()を連れて行っているのを見ている。今夜はいるハズだ。


「そうか。もし居なくてもそいつにはいずれ天誅を下さないとな?女の敵だ」


「はい」


ロアはいつにも増して怒り心頭だ。仮面を被ってるので表情は分からないが口調が感情的になっている。


王子から貸して貰った魔除けの鈴のお陰で道中魔物に遭遇することもなく無事に廃墟の村に辿り着いた。


「ここか」


村は随分前に廃墟になったのか家の壁は崩れて井戸の水も枯れていた。


『あそこよ』


少女の指した方向を見ると丘の上に教会がポツンと立っている。月明りに照らされてかなり不気味だ。


物音を立てないようにゆっくりと近づく。


『先に教会の中の様子を見てきてもらってもいいか?』


『分かったわ』


少女に偵察に行って貰った。幽体だからバレる心配もない。

スゥーっと教会の壁をすり抜けて中へ入って行った。


「少し待って下さい」


丘を登る途中でロアを止めた。


「どうした?」


「物音を聞いてます。昔から耳だけは良いんです」


「・・・?何も聞こえないが?」


でしょうね。俺も聞こえません。


「シッ」


人差し指を口に当てて耳を澄ますポーズを取る。我ながら中々の演技力だと思う。

ロアは少し戸惑っている様子だったがここは無視だ。

そうこうしているうちに少女が帰って来た。


『中の様子はどんな感じだ?』


『扉を開けた中に見張りが2人。その奥の部屋にアイツと拘束されている女の子がいるわね』


『了解』


やはり犯罪行為をしているので数は少ない。部隊長の信頼のおける側近がいるってところか。


「ロアさん。扉を開けた中に見張りが2人。その奥の部屋に恐らく部隊長がいます」


「耳が良いと言ってもそこまで分かるものなのか?」


分からんと思う。


「分かります!」


ここは苦しいが耳が物凄く良い料理人で押し通すしかない。


「・・・分かった。ここまでお前を信じて来たんだ。それも信じよう」


「ありがとうございます」


見張りに気づかれないように教会の扉の前まで辿り着いた。

ロアが小声で話しかけてくる。


「敵の位置は分かるか?」


『右と左に一人ずつよ』


「左右に一人ずついます」


「よし。私が右の見張りをやる。お前は私が矢を構えたら勢いよく扉を開けろ」


そう言うとロアは肩に背負っていた弓をつがえた。


「分かりました」


ロアが弦を引いて矢を構えると俺は扉を壊す勢いで蹴飛ばした。


バァン!


中には少女が言った通り見張りが左右に一人ずついた。

シュッ!という風切り音と共に右の見張りの頭に矢が突き刺さる。


「ぐっ!」


右の見張りは頭から血を吹き出しながら倒れた。


「何だお前ら!?」


左の見張りは怒号と共にこちらに抜刀して襲い掛かってきた。


キィン!


ロアと見張りの剣戟の音が響き渡る。

見張りは手練れなのかロアとほぼ互角の戦いをしているように見える。

俺も加勢しようと抜刀した。


「ここは私に任せろ!お前は仇を取ってこい!」


「え?でも・・・」


「私は騎士だ!こんな場面で2対1という卑怯な真似はしたくない!」


・・・さっきの不意打ちは卑怯じゃないのか?てかアナタ傭兵じゃないっけ?


「了解です!」


ツッコミどころは多々あったが、ツッコんでる場合じゃないので俺は奥の部屋へと向かった。

魔除けの鈴

鈴が鳴っている限り自分より弱い魔物を寄せ付けない効果がある。

ダンジョンのドロップアイテム。レア度はかなり高い。


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