秘策
--夕飯時
「失礼致します」
守衛を横目に俺は王子の天幕に料理を持って来た。
さすが王子。中のテーブルはやたら大きくテーブルクロスまで敷いてある。
「お待たせいたしました」
王子の前に料理を運ぶ。
「む?これはなんだ?」
執事が問いかけてきた。
「これはハンバーガーでございます」
「はんばぁがぁ?こんな物を頼んだ覚えはないぞ?王子はパンをスープにつけて食べる料理を所望したハズだが?」
「よい。じい。この者も何か考えがあっての事だろう」
さすが王子。分かってる。
「では頂くとしよう」
あれ?毒見かなんかするのかと思ったけどしないんだな。まぁさすがにあっちから呼んでおいて俺がスパイだとは思わないか・・・死なないよな?
「・・・なんだこれは!?こんな物は今まで食べた事がない!」
ヨシ!思わず心でガッツポーズ。
王子は食べる手を止めない。普通は手で食べるのだが、ナイフとフォークで綺麗に食べている。さすが王子。(二回目)あれよあれよとあっという間に完食した。
「なんという美味。もうないのか?」
「申し訳ありません。その料理は希少なソースが入っておりまして作るのに時間が掛かるのです」
「そうか・・・また食したいものだな」
「ありがとうございます」
実はこのハンバーガーもどきには行軍中にこっそり作っておいた自家製マヨネーズが入っている。やはりこの世界では発明されていない調味料だ。ここぞという時に使おうと思っていたので店では出した事がない。アレスに食べさせようと作っておいた物だったが、まさかこんな形で役に立つとは思わなかった。
「グレイと言ったな?戦争が終わったら私の専属料理人にならないか?」
む?まさかそこまでマヨネーズを気に入るとは。
「折角のお申し出ですが、私には成さねばならない事があるのです」
「傭兵如きが王子の誘いを断るとは!」
爺さん怒ってる・・・無理もないか。
「よい。じい。ではこの料理の作り方を教えてくれないか?」
そう来たか。
「これは我が家代々伝わってきた秘伝の料理なので、王子と言えど教える訳にはいきません」
「この!痴れ者が!」
今にも血管が切れそうな爺さん。大丈夫か?
「じい!やめろと言っている!」
「・・・申し訳ございません」
「ではグレイ。またこの料理を作ってもらいたいのだが頼めるか?もちろん褒美は出すぞ?」
「是非作らせて頂きます。それで・・・褒美は前借りしてもよろしいでしょうか?」
「ハハッ!面白い男だ。気に入ったぞ。なんだ?申してみよ」
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「そんな事で良いのか?」