そんな名前だったのね
-次の日
料理の準備をしていると、少女から例の部隊長の情報が入ったと報告があった。
奴はこの戦争に乗じて罪のない捕まえた民間人を使われていない教会の地下で拷問して遊んでいるらしい。もちろんこれは犯罪なので秘密裏に行われている。何処までもクソったれな野郎だがこれはチャンスだ。秘密裏に行われているという事は奴と1対1で戦える可能性が高い。その教会まで俺が辿り着ければの話だが。
『私って天才~。ね?ね?凄くない?』
少女は珍しくご機嫌だった。なんだったらウィンクまでしている。
ふわふわと浮かべて壁もすり抜けて更に誰にも見られないんだからだと思うがヘソを曲げられても仕方ないので敢えて言うまい。
『さすがです!よっ!天才!日本一!』
ここはオーバーリアクションをとっておこう。
『・・・なんかワザとらしいわね。それに日本一って何よ?』
少女はジト目でこっちを見てくる。
『あ~いや。凄い!って意味です!』
『ふ~ん?なんか癪に障るわね。ここからはあんたがなんとかしなさいよ』
そう言うと少女は不機嫌そうに何処かへ消えていった。
俺は何て言えば良かったんだ?教えてエロい人。
こんなやり取りをしているとロアが俺のところでやってきた。
「給仕係いるか?ガルス王子がお呼びだ」
「へ?」
思わず間抜けな声が出てしまう。
あれ?俺なんか悪いことしたっけ?いや。それでわざわざ俺を王子が呼びつける訳もないか。
俺は少し怯えながらロアに連れられて王子がいる本陣へ向かった。
□□□□
「ここだ」
俺のテントから10分程歩いた所で本陣の天幕に着いた。
さすが王子の天幕というだけあってデカい。
「ガルス王子。給仕係を連れてまいりました」
「入れ」
守衛を横目に中に入った。
「失礼します」
中は天幕とは思えない程装飾されていた。
ガルス王子は金髪でフランス人のようで如何にも王子様って感じだ。歳は俺より少し上かな?
奥の玉座みたいなところに座っていて傍には執事のような初老の人が立っている。
「お前が傭兵の給仕係か?」
執事に質問されて俺は跪いて答える。
「はい。グレイと申します」
「ではグレイ。ガルス王子の夕食を作ってみせよ」
そういう事か。ここは・・・
「いえいえ。私が作る料理など、とても王子の口に合う物ではございません」
「・・・お決まりのセリフはいい。王子はお前が作ったパンにスープをつけて食べる料理を所望だ。お前は傭兵団で振舞ったらしいな?」
「はい」
何処でそんな話を聞いたんだろう?
「ではそれを作ってまいれ」
「かしこまりました」
お決まりのセリフって言われてなんか腹立つけどしょうがないか。それに気に入られたら軍で動きやすくなるかもしれない。そう思って俺はある賭けに出た。