霊女
セリフ多いです。
「大丈夫ですか!?」
抱きかかえて呼びかけるが反応はない。しかしまるで生きているように肌は白く、唇は淡いピンク色をしていて美しい。念の為に豊かな心臓に耳を押し当ててみる。決してやましい気持ちはない。断じてない!
・・・動いてない。乱れた髪をかき分けると首から出血している。恐らくこれが致命傷だ。
あまり時間は経っていないようだがもう死んでいるようだ。
村のアンデッドを見た時は感傷的にならなかったが、こんな幼気な少女が死んでいるのを目の当たりにすると流石の俺も胸が痛い。
ふと手を見てみると灰色に変色し始めていた。アンデット化が進んでいるのだろう。
「せめて浄化してあげないと」
不憫に思った俺はロアから預かった聖なる杭を取り出すと綺麗な肩に優しく突き刺した。
すると少女は溢れる白い光と共にゆっくり消えていった。
俺は思わず手を合わせてお辞儀をする。
「アーメン」
これで合ってるのかどうか分からんが一応言ってみる。
もうこの家に用はないのでロアの所へ戻ろうとしたその時。
『ねぇ』
ん?今何か聞こえたような・・・気のせいか。
『ちょっと!聞こえてるんでしょ!』
え?ヤバい。今のはハッキリ聞こえた。というかこれは・・・こいつ!脳に直接?
恐る恐る後ろを振り向いた・・・
「ギャアアアアアアアアアア!」
『キャアアアア!』
さっき天に召されたはずの少女がいた。あちらもビックリしたようで叫んでいる。
『もう!急に叫ばないでよ!ビックリするじゃない!』
「いや。ビックリしたのはこっちなんですけど!というかあなたは先ほど天に召された女の子では?」
『そうよ。あんたが変な杭を刺して体は消えたわ』
「え?じゃあ何であなたがここに?」
『それは霊体だからよ。まだ成仏出来ないの』
「・・・ふむ。え?霊体?」
『そうよ。そう言ってるじゃない』
・・・は?そう言えば少し透けてる?
「じゃあ俺は何で霊体のあなたが視えるんですか?」
『あんたが開けた黒い本。あれは魔導書なの』
「・・・え?」
魔導書は開けた本人が特殊能力を与えられるという代物だ。
1冊売れば一生遊んで暮らせるって聞いた事あるな。俺はそんな物を使ってしまったのか・・・
ん?てか俺って適正があった。という事になるよな?
『あの魔導書は霊が視える本って事は知ってたけどまさかあんたが開けるとは思ってなかったわ』
少女はやれやれと言った仕草をしてみせた。
てかこの子どっかで見たことあるような・・・?俺を知っているような感じで話してるけど。
「・・・失礼ですが何処かでお会いした事ありましたっけ?」
『は?覚えてないの?こんな超絶美少女の事!信じられないわ』
超絶美少女って自分で言ったぞ・・・あ!思い出した!天使の姉の悪魔ちゃんだ!髪が伸びてたから分からなかった。てかこんな口調だったっけな。
「もしかして俺を助けてくれた妹さんのお姉さんですか?」
『そうよ!はぁ~~。・・・そんな事よりちゃんと責任は取ってもらうからね!』
「え?何の責任ですか?」
『不法侵入、窃盗、強制わいせつ罪』
この世界ってこんなにちゃんとした法律あったのか?
「最初の2つは確かにそうですが、最後の強制わいせつ罪は不可抗力というか・・・」
『何言ってんのよ!脈を調べるなら胸じゃなくて手首でも良かったでしょ!』
うぅ。確かに・・・反論出来ない。
『あんたみたいな奴が私に触れられただけでも有難く思いなさい!』
めっちゃ偉そうなんですけど。アンデット化を防いであげたのに・・・
「はいはい。じゃあどうすればよろしいのでしょうか?お嬢様?」
『そうね。まずは私の仇を取って貰うわ』
「仇?」
・・・無理じゃね?