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青年は語ります。

 



 なにから話すべきか。


そうだな、お前らが疑問に思っているところからだな。


 まず、この島はハナミ島。本島から島一つ挟んだところにある中規模の島だ。

もともとトレントの生息地として有名だったが、別に彼らは空気や地面の中の魔力だけで充分らしく、人間に害はない。

むしろ魔力濃度が低くなるおかげで強い魔物が生まれることも少ない。

暮らしやすい島だった。


 ん…あぁ、ここは俺の生まれ育った島であり、あの村は俺のいた村だ。


 俺の両親は商人で、島と本島を行き来して物の輸出入を生業としていた。

俺が大陸語を話せるのもこのおかげだな。

跡取りとして帝国に留学させてもらった。

これからは大陸との交易が重要になってくる、と。

15歳から3年、帝国で過ごした。


 実は、帝国に留学していたのには商売の勉強と大陸語以外に、もう一つ理由があった。

俺の妹の原因不明の病だ。

医療技術、治癒魔法の発達した帝国なら、本島の医師が匙を投げた妹の病気だって治せるのではないかと、その伝手を探すためでもあったんだ。

 妹は幼い頃から常に寝たきりで、体調がいいときなんてなかった。

十を過ぎたころに足先から壊死していった。

魔力無しなのではないかとも疑われたが、何度検査しても魔力はあった。十分なほどに。


 妹が12歳、俺が18歳の時、俺は3年間の留学を経てこの島に帰ってきた。

一年前の話だ。

 島に上陸してすぐ、違和感があった。

魔力が少ない島ではあったが、ここまで少なかっただろうか、と。

少なかったのだ、寒気がするほど。


 それでも港の人間は特に気にした様子もなかったから、俺も気にしないことにした。

言っただろ、トレントの生息地だって。

奴らはたまに異常に魔力を吸うときがある。

よくあることではないけど、ないことではないからな。


 あぁ、この村を超えるとすぐに港、海だよ。

その港以外の沿岸は崖になっていると聞いたが、多分盗賊たちはそこからどうにか船を出しているんだろうぜ。

あんな洞窟作ってんだ。


 村へ入ると、すぐにみんなが歓迎してくれた。

小さな村だったからな、全員家族みたいなものだ。

父親が迎えてくれて、それから3年のうちに村の中で変わったところを教えてもらってから家に入った。

あそこの家のジジイがくたばったとか、ヤギが子供を産んだとか。

…いや、こんな詳しい話はいらねぇよな。

思わず話したくなっちまっただけだ。


 そんなこんなで、妹の病気は治ってなかったし、治す方法も見つかってなかった。

仕方ねぇから商人としての勉強をしながら、他の島を回ったりした。


その頃から噂は聞いていたんだ。

隣島に、どんな病も治す魔法師がいると。

その魔法師は大陸から渡ってきたらしく言葉は不自由だが、大した金もとらずに病を診てくれるという。


 俺が帰って半年ほどして、両親がその魔法師をうちの村に招待しよう、と言い出した。

俺としては帝国で十分に魔法を見てきたからこそ、魔法での治癒にそんなに力はないと思っていた。

休むことなく戦えるように、死ぬまで戦えるようにと発達した帝国の医療魔法でさえ、妹は治せないと言われたのだ。

そんな胡散臭い魔法師なぞ、信用ならん。

だが、両親は藁にもすがる思いだったのだろう。


 つい、2か月ほど前だ。

その魔法師がうちの村に来たのは。

やつは魔法師というより、呪術師と言った方が正しいのではないかと思うようなカッコをした男だった。

ローブは黒地に灰の糸で分かりづらいが細かい刺繍をされた、高そうなやつで、中は同じく黒地に原色みたいな派手な色で刺繍された、ダボダボした服。

見たことのない、どこか遠くの民族衣装みたいだった。

更に印象的だったのは奴の杖だな。

服に合わせているのか、杖に合わせたのか。

真っ黒で、光を反射しない、ぬめっとした黒い杖だった。

奴の背丈ほどあって、先にまた黒い魔石が埋め込まれていた。

ん?顔?顔は詐欺師だ。

そんなんで分かるかと思うかも知れねぇが、一目でそいつだ、って分かると思うぞ。

目は細長い狐目で、口は薄っぺらくて…なんつうか広い感じ。

やっぱり顔も胡散臭い。


やつの名はジャスル。偽名かもしれないがな。


 早速、やつは俺の妹を診た。

なんてことはない、他の医者と変わった診方ではなかった。

だが、やつは言った。


「ふむふむふふん、なるほどですねぇ。これは難しい病でしょう!

魔力に異常があるのですよぉ、その上魔力の排泄穴にもぉ。

こりゃぁ医者も匙をなげます、えぇえぇそうでしょう。

ですがぁ、私には治せるのですよ!」


 初めて、妹を診て原因らしきことを言った人間だった。

そのときまで誰も、何が原因か、具体的なことは言ってくれなかったから。

何も言わずに「助かりません」とだけ言われてきた俺たちにとって、やつの「治せる」という言葉はただ一つの希望だった。

俺も思わず信用してしまいかけたほどに。


 やつは包帯で妹の両手首と両足首に、石ころほどの魔石を縛り付けた。

これが、唯一効く治療法だと。

あとは奴が煎じた薬を飲めばすぐに良くなると。


 実際、1週間ほどで妹の紙みたいだった顔色は良くなって、足の壊死さえ小さくなっていった。

その間もやつはうちの村に居座り、村人の些細な怪我や病気を治していった。


 気づいたときには、もう手遅れだった。


 妹も、両親も、やつを信用しきって、それはもうあがめるようだった。

村人もそうだ。

奴が言うことが正しい。

間違えなんてなにもない。

…もしかしたら洗脳かなにかしてたのかもな。

ただ、俺だけはその胡散臭さから奴を信じられずに、避けるようにして過ごした。


 それから約ひと月、まぁ、今から一週間前だ。


 とうとう奴は王様のようにこの村で威張りかえり、村長よりも強い発言権を得た。

いや、そうではないのか。

村人みんなが、奴の奴隷のようだった。

自ら従っているのだから奴隷とは言い難いのかもしれないが。

まさしく洗脳だ。

 俺は最初からおかしいと思って避けていたから、そのまま。


 奴の存在は、この村の様子からして危ない。

妹を助けてくれた恩人ではあるものの、しかし、気味悪くて仕方なかった。

だから、一度島を出て本島から役人を派遣してもらおうと思った。

この村の、村人たちははたして正常なのか、診てもらおうと思ったのだ。


 だが、港から交易船で出てすぐ、意識を失った。

3日前の話だ。


そして目覚めたらあの牢屋にいた。

遅かったのか、やつをこの島に入れた時点でこれは決まっていたのか。

分からないが、やっぱり、俺が感じた気味悪さは間違いじゃぁなかった。


なぁ、俺は、どうしたらいい?

俺はもう村人を家族とは思えない。

けど、顔や癖は俺の知っている奴らなんだ。

どうしたらいい。

魔物のように感じている。あの、狂信者のような家族たちを。

何が正しいのか、もう、分かりやしない。




―――― 


ガルの話は度々跳んでいたが、とにかく、彼が知っていることはこれがすべてのようだ。

話すにつれて、彼は混乱のままに頭を抱えた。

そしてそれをそのままキョウに訳すのに疲れた私も、思わず頬杖をついてしまった。


 つまりは、大陸から来たジャスルという魔法師が、村で信頼を得て、いや、信仰を受け、村人の様子がおかしくなってしまったということか。

なにより、彼が魔石を両手首、両足首に縛り付けたというのが気になる。

両手首、両足首というのは魔力の排泄穴のある、魔力操作において重要な箇所だ。

もしガルの妹の病が魔力排出に問題があるのだとしたら、そこに目を付けるのは間違いではないだろう。

だが、魔石に、魔術以外の使い道があるという論文も、説も聞いたことがない。

むしろ、そんな場所に魔石を触れさせては、余計魔力を乱してもおかしくはないはずだ。


 ならば、ジャスルという魔法師がしたことはいったい何だったのだろうか。



「キョウ、魔法で魔石を使うことはあるかい?」


「いや、それはないと思うけどなぁ。王都の魔法軍人も魔石をそのまま使っているとこなんて見たことないし。魔術具以外の使い方なんて知らないなぁ。」


 キョウも魔法師として気になることがあるのか、指先で顎を摘み考え込んでいる。


「なぁ、助けられるんだよなぁ?俺の…家族…村にいるやつはみんな家族なんだよ…なぁ…!」


 追い詰められたガルは、私の肩を掴んで揺すってきた。

おい、だから君みたいな筋肉の塊みたいな男に力を入れられると――それほど痛くないな。

痛覚さえない、というより痛いのは分かるが悶えるほどには感じない、ってところか。

全く、ほんとに。私は何なのか。

痛覚は人間の生存本能として必要なものだろうに。


件の魔法師にでも聞いたら分かるのかね。

いや、ダメだろう。

なにせ――


「ガル、心して聞き給え。


村人――君の家族は既に、人ではなくなっている。

多分、ではあるが、魔物の類になってしまっているようだ。」



 



主人公がショタではなくロリだったらアクセスとかもう少し伸びたのだろうか、と最近思いました。

主人公には性別を変えてもらうべきか…

いや、これからたくさんロリも登場するのですが。

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