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おじさまは希望を見出しました。

読み返せていないので誤字ありそうです。


友人にロリとショタの違いは?と聞かれました。

はは、愚問ですね。





 んん?



 予想外にもほどがあるところで私の名前が…名前どころではなく髪の毛が出てきたが。

一体これはどういうことなのか。


「すごいでしょぉ?あの鉄壁の護衛たちをくぐり抜けぇ…ることもできずぅ。結局彼のぉ屋敷付近に張りこむことぉ数年!ってぇ触れ込みでねぇ。本人のにぃ間違いはないらしーんですけどぉ。とにかくぅ!この髪の毛二本さえあればぁジューブンなんですよぉ、ね?」


 とても気持ちの悪い話だが、理解できてしまった。


 私は生前から自分の身体から出る垢や排泄物にまで気を配って、なるべく形の残らないようにしてもらっていた。

それはもちろん、私の身体の一部さえあれば私を呪うことができるからだ。

いや、それだけではない。

髪は頭に近く、それでいて魔力を良く溜める。

特化した魔法師ならば記憶が読み取れるというのだ。

私には門外漢なので信じがたかったが、魔法に精通する息子が注意するよう教えてくれた。

私の開発した魔術陣の流出を防ぐためにも、髪の毛の一本さえ他人に渡すことはならなかったのである。


その上、彼が教えてくれた“とある噂”についても引きずられるようにともに思い出した。


『邪神教の一派が死霊召喚の研究をしている。』、という噂だ。


 邪神教といえば大陸でも差別、排斥されている宗教である。

私はあまり興味がなかったので良く知らないが、なんでも人間は底辺の生き物である、という考えを持つらしい。

人間に魔物を殺し、家畜を管理する権利があるのか、と説いている。

分からなくもないがその結果、人類滅亡を目標に掲げる一派があるのだとか。


…その噂の一派である。


 そして、死霊召喚。

なんて気持ちの悪い話なのか。

死者を生き返らせるなんて。

…と思いながら、背筋をなぞられているかのような、不気味な不安を感じていた。


 現在、私たちの下にある魔術陣が死霊召喚を行うもので、実は既にどこかで死霊召喚が行われて、何かの手違いで私が自我を持ったままここに召喚されてしまったのではないか、と。


いや、しかしこの状況を見てもそんな何度も行えるような簡単な儀式ではないだろう。

私は、まだ関係ないはずだ。

それに、この魔術陣が死霊召喚のものだとは確定していない。

ジャスルが邪神教のものだともはっきりしていないではないか。


「この間この同じ魔術陣を使った仲間がぁ、髪の毛一本で失敗したらしいんですよねぇ。だからぁ、二本。これで足りるはずなんですよぉ、計算上―。」


まじか。


 思わずスラングが飛び出しそうなくらいには驚いた。

もう、色々と言い訳できないのではないか?


「彼がぁ生きてるときには難しかったですけどねぇ?あの忌々しい愛し子たちがいたせいでぇ。けれどぉ、死んでしまった今ぁ、冥界を漂う彼を手中に収めるのはもはや簡単なことなのですよぉ!…なんせイケニエの魂で扉を開け、彼の遺物で彼を引き寄せ、そしてイケニエの肉体で彼を構成する。あぁ、簡単だ。」


 彼の声は段々と小さくなり、暗さを含んでいった。

冷や汗が背中を濡らして気持ちが悪い。


「冥土の土産、ですよぉ?


私たちは彼の知識を利用して、この世界を浄化するのです。人も、魔物も、動物も。すべての生物が平等に生き、平等に死に、殺される世界を作るのです。…ふふ。彼の頭を思うがままぁ使用することができればー、簡単なことでしょうからねぇ、この地を均すことなどぉ。」


 あぁ、王手。

私には逃げ場がない。

なにが生きることを一番に、だ。

“私”自体が人の命の犠牲の上に成り立っているとは、私の生にかかる責任はいかほどの物か。

いや、自殺しようとは思えないのだけれどもね。

しかし、したくなるほどには今辛く感じている。

きっと彼の仲間の魔術は半分、成功していたのだろう。

そして半分失敗し、私は今ここにいる。

なんということだろうね。

私の推測のすべてが真実かはまだ分からないけれど…。


ジャスルに関わることさえなければ私は何も知らずにのうのうと生きていたのだろうか。

…それも無理か。

早々に知ることができたということを喜ぼう。


 あぁ、頭が混乱してうまく働かない。



「さー、日が明けてしまうとこの魔術はうまく発動しないそうですからぁ、やりますよぉ?ダイジョーブダイジョーブです、痛くないらしいですからぁ。」


 ジャスルは地面で這いまわる蔦をつま先でトンと叩き、「出番ですよぉ。」と彼女を呼んだ。

彼女はあの屋敷の中にいたのだろうか、と考えている間に陣の真横のある一点から一斉に蔦が生えてきた。

その視界を埋め尽くすのでは、という蔦の中心に彼女はいた。

地面から直立したまま浮き上がってくる少女。

ガルに似た濃い肌と目、髪。

10歳前後に見える彼女は薄汚れたワンピースを着て、真顔でジャスルに歩み寄る。


「ジャスル、さん…。」


「なんて顔ぉーしてるのですかぁ?これから我々の悲願への第一歩が成されるという、非常に喜ばしいことが起きるのですよぉ?」


 聞き分けの悪い子を見遣るように、ジャスルは彼女の顔を覗き込んだ。

私には真顔にしか見えなかったが、彼には彼女の本当に感じている気持ちが読めるのだろう。

きっと、彼が彼女の“飼い主”だからね。


 現実的に、今私ができることは何もない。

どうやっても。


しかし。


 私以なら、どうにかこの状況を逆転できる可能性がある――






――来た。




「「⁉」」



 ふわっ、と空気中に広がった粉末が広場全体を支配し、その粉に触れた蔦は苦しむようにのたうち回った後、動かなくなった。

それは本体である彼女にも影響のあるものだったらしく、気づいたら彼女は地面にうずくまっていた。


 私たちの身体に巻き付いていた蔦も弱まり、私のような子供の弱い力でも十分に外すことができた。

そのままキョウの、兄妹の、ガルのといった順番に外していく。

 キョウはきっとすぐに回復するだろう。


「くっそぉ、なんだよコレぇっ!」


 かなり焦ったようだったジャスルはそれでも冷静に状況を分析したのか、風魔法でその場の空気を吹き飛ばした。

それでも蔦と彼女は力が入らないようで、ピクリとしてはまた動かなくなる。


 思わず、安堵に息が漏れた。

自分で感じていた以上に緊張していたらしい。

いや、まだだ。


 すぐ側で地面に打ち倒れている蔦の塊に手を伸ばし、その魔力を吸える限りの最大速度で吸った。


 …そこそこまずい。

彼女の人としての魔力が残っていたのか和らいではいるが、基本は魔物の魔力だ。

雨水を飲んだらこんな味なんじゃないか、というくらいの濁り。

が、だからといって諦めるわけにはいかない。

空気中の魔力ほどのまずさではないしね。


 何かを察知したらしいジャスルは、小さな住宅の陰に向かって火の塊を撃った。

衝撃で住宅には穴が開き、火がついてしまった。

そして、その影から飛び出て私たちの傍に駆け寄ってくる人影がある。


「メメリ…戻ってこないかと思った。」


「んー?私もほんとは戻るつもりなんてなかったんだけどね?」



 ペロ、とお茶目に舌を出して見せたのは、気づいたらいなくなっていたメメリだった。


――いや、いなくなったことには気が付いていた。

が、彼女は最初から何か隠している風なところがあり、しかしそれが敵意のあるものではなかったために放置していたのだ。

何か考えがあるのだろう、と。

いなくなった時も彼女は考えの至らなかった平民の少年少女達とは違い、村の異常性を感知して村から遠ざかったのだ、と。

…私たちに何も告げず、だが。


 私は唯一の可能性として彼女に期待していた。

唯一、一人で考え、動くことのできる人物だったから。

あぁ、まぁ、私たちの頭が足りなかったのかな、と思わなくもないが。

やっぱりあの盗賊たちを殲滅してから村を目指すべきだったのかな、はは。


「君ぃ、村に気づいてすぐに逃げた子ですかぁ。ジルの追手も避けるしぃ、まぁいいかと逃がしてしまったのが仇になりましたねぇ。」


 ジャスルが今までになく歪んだ、悔しそうな顔でメメリを睨んだ。

そうか、やはり気づいてはいたのか。

しかし“ジル”の追手とは。


「ははは、あの蔦、動き早いし力強いし、かなり厄介だったよ。盗賊の屋城で『殺トレント剤』を見つけた時は思わずガッツポーズしたね!」


『殺トレント剤』とは…そんなものが存在したのか。

しかも盗賊の屋城で?


 なるほど、多分、奴らとジャスルは持ちつ持たれつの関係だったのだろう。

盗賊たちが外から生贄――肉体や魂ではなく魔力のための――を仕入れ、ジャスルがその代償に金銭や安全な拠点を提供する。

邪神教は大陸全土に教徒がおり違法な活動をしている人が多いというから、資金は潤沢だろうしね。


 だが、彼らも善人じゃない。

この関係の希薄さ、薄情さを理解していたのだろう。

ジャスルの手札がこの蔦――つまりトレントに偏っていると知っての『殺トレント剤』だ。


「は、はははぁ。この子がぁただのトレントじゃぁないことくらいわかってるでしょぅ?まったくぅ、無駄な足掻きもやめてほしいねぇ。…あの盗賊ら、どーしてくれよう。」


 ジャスルの顔は引きつっているが、少し余裕を取り戻したようだ。

彼の足元で蔦がゆっくりと持ち上がる。






落としどころが見当たらなかったので微妙ですみません。


ついてるついてないなんて服を剥かなくては分からないようなことは紳士の信念に反します。

彼らの後ろに彼らの将来性を見出し、儚んだ上で幼い彼らを愛でるのです。

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