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裏話  作者: 知吉
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プロローグ裏話 side:ジョワ

 鬼畜な兄貴分と閻魔な姉貴分の話です。(たぶん)

 さらっと流すつもりが本編一話より長くなった気が……どうしてこうなったし。

 プロローグ裏話 side:ジョワ



 島を出る、俺達はカーレッジからその意思を聴いた。

 今奴はラミティエと鬼ごっこをしている事だろう。体よく追い出し相談を始める。


「で、俺は一緒に行こうと思ってるが、お前達はどうする?」

「……僕は行けないかな、成人の儀まで二年あるし。親が反対すると思う」

「俺は……行きたいけど、行くやつの代わりに島を守るかな」


 アミは無理で、アンテは残る、か。


「じゃー俺も、親に了解貰って来るわ。……この隠れ家もしばらく来れなくなるなぁ」


 いつの間にか集まっていた五人で、数年前に空き家を改造し、作り上げた……居心地のよかった場所だ。

 ありふれた、騒がしい日常に想いを馳せながら呟くと。


「……次は皆で集まれるかな?そうだったらいいけど……」


 不安げな声に。


「アミ、願うのなら努力をしろ。俺はあいつと一緒に帰ってくる為に。アンテはこの場所を守り、この場所の空気を守る為に。動くつもりだ」

「ああ、だからってわけじゃないけど。何の為に行動したいか、考えて・相談して・決めて・

行動したらいい。カーレッジや俺達のように」

「……うん、解った」


 アミはまぁ、こう言ってるし、アンテも残るから大丈夫だろ。後は、


「じゃ、後任せたぞ。出て行った二人が戻るまで待っててくれよ?」

「「!?」」


 親に話す為、帰らねば。愕然とした顔の二人を置いて、俺は帰路についた。






「おーはーよー」

《ガンガンガン》


 翌日、昼頃まで惰眠を貪るつもりだったのだが、外からラミティエ[猛獣]の声がする。

 昨夜遅くまで両親と相談し、なんとか許可を取り付けたので昼まで寝て英気を養い、買い出しや知人への挨拶に行くつもりだったのだが………

 ここでアレを放置するとマズイ。以前放置した結果、俺の部屋に侵入され腹部にダイブという暴挙を受けたのだ。

 ……思い出すだけでも恐ろしい。幼い子がしてくるのであれば許容出来るが、……全身狂気[凶器]の猛獣が降ってくるのだ。一度目は冗談抜きで死にかけた。


 と、考え込んで放置するのはまずいので、窓から顔を出し―――


《ゴッ》


「っつ!!」

「あっ……ごめーん。寝てるかと思って、窓に石ころ投げて起こしてあげようとしたんだけどー」


 年上の矜持で悲鳴はあげなかったが、俺は今、痛みで部屋の中を転げ回っている……

 奴は『石ころ』と言い張ったが、部屋に転がる石ころは俺の手のひら大だ。

 生き延びて再度、皆[4人]隠れ家で笑いあう為にも、一刻も早く島を出なければ!!


 で、猛獣[妖怪]に連れられていつものメンバーを集め、檻[隠れ家]へ向かうのだが、

……横にいる二人の目が、死んでいる。


「……あの後何かあったのか?」


 小声で、前を歩くアレ[妖怪]に聞かれぬよう、術で空気を遮断した後、問いかける、が。


《ガタガタガタガタガタ……》


答えは無く、二人の震えが増す。

おそらくは昨夜、見た事の無いようなオソロシイモノ[妖怪]を見てしまったのだろう。

可哀想に……


チラリ、と前を窺うと。


 前に歩きながら、顔を左側に向け……口端を上げ[ニヤつきながら]…………細めている[微笑している]………………左目に見られていた。





「………ねー皆、何で震えてるの?」


 アレ[妖怪]に問われた訳ではない、隠れ家[餌場]に着き、先に居たカーレッジの妹、ルニーに聞かれたのだが………答えられない。

 俺達の後ろには今、アレ[閻魔]が居る。

 三人が答えられないので、閻魔[アレ]自ら答えてくれる。


「多分皆、家のお手伝いとかで疲れてるんだよ。ねー?」


 三人でなんとか頷き返す。

 可愛い風に言っているが、俺達に対する威圧感が全く減少していない。

 昨日見たカーレッジとの鬼[閻魔]ごっこや、今までの威圧感[鬼神]は、あれでも猫を被っていたのか………!!

 今更の確認や後悔をしても遅いが、まだ、俺には、島外という救いがある。

 イケニエ[仲間達]には悪いと思うので、心の中で頑張って[生き残って]くれ、と願う。





 何とか平常心を取り戻し、ルニーの話を聞いたのだが、要点は二つ。


・兄が島を出る。

・昼食後、島を出る条件として父と兄の稽古が行われる。


 ということらしい。

 稽古に関しては、親父さんの最大譲歩だろうから口を挟めない、が。


「……なあルニー、兄貴が居なくなりそうで寂しいし、どうしたらいいのか解らないって気持ちは理解できるけど」

「?」


 べそを掻きそうになりながら、一応俺を見てくれるルニーの目線に合わせるようしゃがみ込み、目を見て言葉を掛ける。


「ルニーは、兄貴にどう見ていて欲しい?

 わがまま言う妹か、たまに言うことを聞いてくれる妹か。

 寝坊して毎朝起こされてる妹か、早起きしてお母さんと兄貴の朝食作ってくれる妹か。

 ドジやっていつも兄貴に泣きつく妹か、次は頑張ろうってどうすればいいか聞ける妹か。

 ……行かないでって泣きつく妹か、帰ってきたら冒険した話聞かせてよって言える妹か。

 態度じゃ見えないけど、ラミティエも不安だったり『行かないで』って言いたかったりすると思うぞ」


 本人[閻魔]を指さし、言ってやると………驚いたような顔してやがる。

 昨夜以降の様子見てりゃわかんだろ、と言ってやりたいが我慢する。

 ……俺はまだシニタクナイ。


「今のを聞いて、どうするか決められない、わからないっていうんなら」


 立ち上がりラミティエの横に立ち、閻魔の肩を叩きながら。


「頼りになる『姉貴分』に聞いてみな?」

「うん!!」


 元気に返事してくれたし、これで大丈夫だろ。

 ……ただ、………勢い言っちまったけど、姉貴分はマズかったかな?

 と、後ろから。


「……おい、あれ誰だ?あんな兄貴分っぽいジョワ、知らないんだけど」

「奇遇だな、俺も見た事な………まてよ?今朝起きた閻魔様の懲罰[石ころ]が頭にっ……て」

「「それか!!」」


 ………好き勝手言ってくれる弟分に、時限爆弾を渡してあげよう。


「おい、お前ら」

「うん?」

「どうした?」

「無関係みたいにしてるけど、ちゃんと兄貴分やれないと………」

「……何かある?」

「カーレッジが怒るとか?」


「アレの脅威が倍になるぞ」


 少し離れたところで仲良さそうに話している二人を指さす。


《ガタ………ガタガタガタガタガタガタ》


 先程以上に震えだす二人の肩を叩き。


「頑張れよ」


 とだけ告げてやる。……望みは、薄いがな。





《ゴーン、ゴーン》


「ってバカやってる間に昼じゃねーか!!」

「うし、あいつの家に乗り込むぞ」


 閻魔の突撃命令だが否やは無い。

 出立前、最後も派手に騒いで行こうじゃねーか!





「おーう、やってんなぁ」


 飛ばされ立ち上がってから、動きのなかったカーレッジがこちらを見る、が。

 見るに堪えない顔してやがったから、いつも通りの言葉でハッパかけてやったら、突っ込んで行って見事に玉砕しやがった。

 煽った分、やっちまった感が半端ではない……



「………あのー親父さん、こいつの島外に出る話ですけど、俺も一緒に行くんで許してもらえないですかね?」


 これでダメだったらヤバイ………俺の罪悪感が。


「後ろの二人も、こいつの帰る場所守るために努力するって言ってますんで」


 二人の弟分を指し言うと、二人も頷く。


「……行くなと、言う気は無かったんだが」


 その言葉に全員がホッとし、空気が弛緩する。

 緩んだ気に悪戯心が湧いたのか、アンテがラミティエに「膝枕でもしてあげたら?」なんて言ってるのが聞こえる、俺も何か悪戯を―――――


「しかし、ジョワも行くなら最後に稽古をしようか」

「!!?」


 親父さんの方を見ようとする、がそれより早く足にコツンと何かが当たる。

 これは、木……刀……

 親父さんは構えてしまっている、これは………逃げられない。

 逃げられない、が。………イケニエ[弟分]は追加できる!!

 のほほんと観戦モードでこちらを見ている二人を見て親父さんに向け、一言。


「こいつらも一緒に訓練したいって言ってました」

「「ブッ……ふざけんな!!!」」


 さぁ、可愛い弟分よ、一緒に地獄[訓練]に行こうじゃないか。


「このっ……ゲス野郎!兄貴として見て欲しいならそれらしい態度取りやがれ!」

「同感です!そう見て欲しいなら、今までの謝罪と今からの態度の変更を要求します!!

 具体的に言うと今の発言を取り消して――


《ドスッ》


 ナニカ言っているスケープゴート[弟分]の足元に、鈍い音を立てて木刀が刺さる。

 飛んできた方向を見ている弟分達は逃げられないとようやく悟ったのか、アンテが震える手で木刀を取り、何とか正眼に構える。

 次いでアミの足元にも、よし。これで三対一だ、これで何とか希望が………


 あれ?今の木刀、砲弾みたいな速度で刺さったけど、親父さんどこから投げ――――



 唐突だが、カーレッジの家について、話しておこう。

 大豪邸、とまではいかないが、部屋の間取りは広いのでゆったりと生活でき、空き部屋もあるので季節ものの道具や服で使用しないものはそこに押し込んでいる、と。

 ……問題はここからなだ、親父さんは子供ができる前から、出来たら訓練をさせると意気込んでいたらしく、庭を広々と作ったらしい。縦・横30m程に。


 おそらく玄関の中に木刀が置いてあったんだろう。親父さんは玄関を出た所で投擲後の姿勢をしている。対してアンテ・アミの二人は通りから入ってすぐ、庭の入り口付近に居る。


 そう、オワカリイタダケルダロウカ?

 30m先から自身をめがけて冗談みたいな速度で飛んでくる木刀の恐怖を。

 ………よく木刀受け取ったなあの二人。俺だったら絶対裸足で逃げ出してんぞ。

 ヤバイ、三人で一斉にかかっても勝てる気がしない!イケニエ[仲間]を増やせば……!


「―――」


 カーレッジの方から声が!捨て駒[仲間]が起きたか!

 一筋の光明を見つけ、そちらを確認し―――視界の端を人のようなモノが飛んで行った。


「……え?」


 飛んだのはアンテ、滑稽な姿勢で庭の垣根に頭から突き刺さっているが、笑えない。

 だが、それ以上に驚愕したのは、俺が思考し、カーレッジに目線を向けた僅かな時間でこの庭を横断した事だ。このおっさん[バケモノ]どうやって倒すんだ?


 ってこれ以上戦力が減るのはまずい、イケニエ2号[アミ]は――――

 庭の入り口に視線を向ける前に、ゾクリ、と悪寒が走る。

 勘に任せて全力で振り払うと、


《ガッ》


 偶然にも一撃目は防げた、次は―――


「ほう、防いだか。次はもう少し早くいくぞ」


 理解できたのはその声まで、次の瞬間俺は空を飛んでいた。




 今回の教訓、次があるなら見苦しい真似は止そう。


 ルビ振り[]ばかりで読みにくい!とかは勘弁願います。

 普段の変換が悪いかもですが、きょうき→狂気とか出て爆笑しながら描いちゃったので自重できませんでした。

 こんな話が好きな人がネタを下さり、ジャストフィットしたらひゃっはーしながら続き描くつもりです。

 まあ本編が進めば増えていくと思いますが。

 テンションに任せてやっちまったので、誤字・脱字等、あれば連絡していただければ幸いです。

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