前世の記憶を持ったまま産まれた世界は乙女ゲームの世界?
部屋の中に有るのは古ぼけた椅子とベッドと椅子。扉は施錠されて開かない外の様子が見えるのは一つの窓だけ。
私が此所に軟禁されてからもう何れぐらいでしょうか。
「はぁ……お腹すきました」
私はこの館、ヘルスアン侯爵家の令嬢です。直系の一人娘です。貴族に産まれた筈なのに軟禁されて毎日お腹空かせてるって何ででしょうね。……別に家が没落貴族的に衰退してるからって訳じゃ無いです。館には使用人が何人もいてどう見ても私より良い物を食べてるのかふくよかです。いえ、ふくよかでは無いですね普通です。ただ私の身体に無駄な肉どころか必要な肉さえ無いだけです。
……ひもじい。
若い女の子ですから痩せてる方が良いですけど……だからってその内に骨と皮だけにそうな程の強制ダイエットはイヤです。最近特に貰える食べ物の量が少なくて時々入ってくる野ネズミさんが主食になってます。……一応令嬢なんですよ?ですよね?……明らかに使用人以下どころか罪人みたいな酷い軟禁生活ですが。……
五歳の頃から始まった軟禁生活ももう5年以上……もう10歳です。
そうそう五歳からマトモに教育を受けていない10歳の身の私が此処まで冷静に考えられるのか。
それは別の記憶のお陰です。私には今生きている中世みたいな世界観でなく科学文明が発達した世界での記憶が有ります。これがなければ軟禁生活に耐えられずに死んでいたかもしれませんね。
軟禁生活その原因は……
「アハハ!待ってよー!」
また今日も聞こえてきました……あー腹立ちます。
軟禁された部屋の窓から見える庭には、同い年の異母妹のフワフワした赤みがかった金髪の髪のアルネーリが今日も元気に遊んでるのが見えますね。……軟禁の元凶の楽しそうな声ってスゴく腹が立ちます。腹がたちますよ!…と…ふぅ……腹を立てると余計お腹が減るので成るべく無視です。
「まってー」
無視です……無視したいです。声が聞こえてきます。
何で態々私が軟禁された部屋の…真下の庭で遊ぶんでしょうね?偶然ですよね?偶然と言いやがればか野郎。
「なんだなんだ遅いぞ」
今の遊んでる相手は幼馴染みの……確かフェリアル?伯爵家の男でしたか?私と同い年の10才なのに毎日、毎日イチャイチャ、イチャイチャと、全く幸せそうに……お腹を空かせた事なんて無いんでしょうね?外に出されない何て事もないんでしょうね。
下で走り回ってるのは一応……妹です。監禁されてるのは姉(自分)。
何でこんなに待遇が違うんでしょうか?片方は食事さえ事欠く様な軟禁された生活、もう片方は楽しそうに自由な生活。
妹、アルネーリの母親は父の母が死んでからの再婚相手、身分は私の母だった人より低い男爵令嬢の産まれ、ですが髪は赤みがかった金、金髪に近い。金髪は王族の証しだから金髪に近いほど尊いとされ、身分や出地はどうあれ大事にされる。妹の髪色はその髪色を継承してる。
……それを抜いても……私の父の政略関係ない再婚した今の妻の娘だから大事にされるんです。因みに父は三流伯爵家の出で私の母とおもいっきり地位目当てで結婚したと言う噂です。
私の待遇みれば本当でしょう。
翻ってアルネーリの母との結婚は男爵家の出ですし地位目当てでない。髪の色が目当てとか愛し合ってたとかそんな理由でしょうね。
……政略結婚の子供の姉より愛し合ってた相手との子供の妹の方が大事にされる。
それは判りますよ。
けど私の此処までの扱いの悪さについては……正直納得はいきません。納得いくなんてアホはいないでしょう。
私の髪の色はこのヘルスアン侯爵家特有の銀髪、瞳の色は緑、顔立ちは自身の判定ですがソコソコ整ってます。産まれもヘルスアン家の正統な令嬢だったお母様から生まれ血筋も正しい……本来ならこの家、ヘルスアン家で優遇されるのは私です。
なのに現実は優遇されるどころか罪人の様な軟禁生活です。
ハッキリ言えば迫害されてます。
時々食事を持ってくる使用人が言っていた迫害され軟禁された理由…
…私が産まれたせいで母様が亡くなった。亡くなった原因が私の出産のせいで肉体が弱ったせいだから、母様を死なせたから母様を愛してた父に嫌われた。だから顔も見たくない私を軟禁した。殺されないだけマシだと思った方がいい。……だそうです。
何でしょうかね?父にそう言えとでも言われたんでしょうか?それか父が其が真実だとでも言ってるのですか?
愛する妻を殺した子供がどうしても憎い。…これで本当なら軟禁にも私は腹を立てても納得はしますよ。
……こんな美談は有りません。
まず前提条件が可笑しい。それは父が母様を愛してた。私の父は……母様を愛して無かったでしょう?
…父のグラードスが母様が元気な頃に散々愛してるとか、白々しい事を言ってるのは覚えてますよ?ですが愛して無かった!事の一つ目の証明!
母様が死んだ後直ぐに一月もしない内にヒルデルカと言う男爵家令嬢と再婚!そして更にです。そのヒルデルカ令嬢が連れてきたアルネーリを、父グラードスの実子としてこのヘルスアン家にアルネーリを入れたんです!……実子だとしたら年齢的にどう考えても浮気をしてたんです!
いえ浮気より質が悪いですね。
この軟禁部屋の下ですが、使用人達の噂話をするスポットに成ってるんです。それで使用人がコソコソ話してる内容です。元々父はこのヒルデルカ男爵令嬢を愛していたそうです。
だけど父、グラードスは家の方針で泣く泣くヒルデルカ令嬢を諦め、代わりにこの家の身分目当てに母様を口説いて結婚したそうです。ええ、愛でなく地位だけの為にです。
……再婚の早さとアルネーリの存在を考えるに此方が真実でしょう。
迫害の理由は……やはり愛してない相手との間に産まれた銀髪の娘だからでしょう。それとこの家の跡取りは伝統的に銀髪が選ばれる……当然ですがアルネーリ親子、婿養子の父は銀髪ではない。そんな中で唯一銀髪の私……端的に言えば私が邪魔なんでしょうね。
ふざけてますよね?
この家の地位目当てに母様と結婚した父、いえあの男、グラードス。
あの男は侯爵家という地位さえ手に入れたら、愛してた男爵令嬢と結婚して本来なら正統な血筋の私を軟禁する。愛してた相手と結婚、其処までは良いですよ?……ええ、其処までは……母様が亡くなる前に最後に言った事は今でも覚えてます。
『…貴女…グラードスどうか、家と……エルネーアの事を……頼みます。……どうか……守って……』
これが母様が息も絶え絶えに最後に頼んだ事です。その言葉にあの男は何と言ったと思います?
『判った必ずエルネーアを幸せにしよう。……お前の事を誰よりも愛してた』
嘘をつくな!!
誰よりも愛してる?なら何で母様との結婚中にアルネーリが産まれてるんです!何で母様が死んで直ぐに再婚をしてるんです!
私を幸せにする?母様が息も絶え絶えに最後に頼んだ私の事は軟禁!!貴族としての教育は一欠片もしない!アルネーリには貴族として将来必要な交流を持たせて私には一切なし!会話どころか一目見ようともしない!私には母様を殺した責任が有ると嘘をつく!
何が誰よりも愛してる!私を幸せにするですか!愛は嘘!約束も嘘!母様を何処まで馬鹿にしてるんですかあの男は!!あの屑は!
憎いと思うのは普通ですよね?
だから何時か復讐してやりたいそう思いましたが……思ってしまいましたが……前世の記憶が直情的に行動するのに待ったを掛けます。
前世の記憶、その、前世の記憶の有る乙女の愛は天元突破という可笑しなタイトルのゲームの記憶なのですが…判る範囲で言えばこの世界はその……乙女の愛は天元突破と情報が酷似してるんです
タイトルの可笑しさは無視してください。
タイトルで判りますが乙女ゲームです。
ゲームの舞台はハントン国、規模としては弱小だけど平和な国。そしてアルネーリは……所謂ヒロインです。ヒロインが貴族が通うステリーアと言う学園にいって恋愛をするのがゲームの大まかな内容です。
そして私…こと…エルネーアは所謂悪役です。
ゲームの悪役のエルネーアは…異母妹のアルネーリの事を怨んでいて色々嫌がらせをします。理由は父親が母を裏切って浮気して産まれたアルリーネが許せなかったんです。しかもエルネーアの母は物語の終盤にはアルリーネの存在を知って父親の裏切りを知り自殺するんです。
……此処から物語によって恨みの理由が追加されます。
婚約者に手を出されたエルネーアは恋愛感情と言うより母を裏切った証のアルリーネが、母を命を断つほどに傷付けた行為と同じような事をしてるのが許せなかったんです。
殺意を持ちそうな程に憎んで可笑しくないエルネーアのする嫌がらせですが…顔のグラフィックは悪人ですが…貴族令嬢なゲームのエルネーアは根本的に優しいと言うかアホで純粋です。最終的にバレるんですが嫌がらせの内容が……虫を投げたり足を引っ掛けたり悪口、正直……小学生のワルガキレベルです。
ゲーム的に当たり前ですが悪役には罰が有ります。
エルネーアの罰は…攻略キャラによって違って…基本は家からの追放、場合によっては死罪です。
……ええ、最悪の場合は……死です。子供のイタズラレベルの嫌がらせでです。嫌がらせで死罪なんてあり得ません。
身分差でって事は有りません。
寧ろヒロインのアルネーリがゲーム設定では侯爵家の令嬢で無く男爵令嬢なんですから。例え金に近い髪でも最下級に近い男爵令嬢をイジメたぐらいで死罪どころか追放すらあり得ません。
証拠と言いますか私とは別の悪役が居たんですが詳しくはハショリますが、やったことは殺人未遂……それでも罰は謹慎です。因みに身分は一つ下の伯爵家でした。
なら何で私だけ嫌がらせ程度で追放に更にある攻略キャラだと死罪の罪に…実はゲームだと…乙女ゲームに有るまじき冤罪をプラスされるんです。
追加される罪はディープにもヘルスアン家が仕切る軍事情報を他国に流した国家反逆罪です。
……完全な間違いです。
単にエルネーアはキツい性格に見えて心根は優しくて、孤立していた他国の留学生の娘と仲良く成っただけなんです。
最悪な事に追放後のエンディングのエピローグに誤解だったと判明します。けど疑われた私の自業自得だと終わる胸糞悪い終わりです。
因みに死罪の場合は…更に…有る攻略キャラがしてた死罪に値する罪を此方に擦り付けて来るんです。
……しかも擦り付ける理由がアルネーリに対する愛情とかでなく……私を完全に叩き潰して家をアルネーリが乗っ取る為。それと復讐……私へのでなく父、あの男へのです!
現在のゲームとの相違点はアルネーリが現時点で侯爵家の令嬢に成ってる事です。本当ならアルネーリは学園に男爵令嬢として登場した筈なんです。
二つ目はあの男が私に対して愛情を一欠片も持ってない事です。
ゲームだと隠し子のアルネーリとどちらも愛してた思います。
……アルネーリに嫌がらせをしたと聞いたら見捨てるぐらいの愛情ですが…
三つ目は……母様はまだ生きてた筈なんです。
現状判ってるだけでも私の状況は……ゲームより明らかに悪いです。悪いというより最悪です。
…………アルネーリが独り言を言ってたんです。口の動きから読み取れたのは……レオエンを攻略するのにアイツを学園に行かせなきゃ。
……寒気がしました。どうやらアルネーリにも前世の記憶があったようです。状況が違うのはゲームと現実の違いだと思ってましたが……ゲーム知識を持ったアルネーリが何かした可能性も高いです。
……そうなると母様の死は……自然死でない可能性が大いに有ります。アルネーリが侯爵家に引き取られない理由は母様です。だから排除しようと……思い返せば母様は有る時期を境に一気に体調を崩しました。……毒を飲まされた。
…………アルネーリが其ぐらいの事をする性格だと言うのは、……レオエンを攻略すると言った時点で確実です。
レオエンは……地位目当てに私をゲームのエルネーアを死罪にする最悪の攻略キャラです。
そして学園に私を連れだす。つまり普通に恋愛するのでなくゲームの様に攻略です。そうなるとレオエンが攻略されるという事は必然的に私も死ぬという事です。
ゲームとは状況が全く違いますが……私は殺害計画を立てられてるんです。…人の命を何とも思っていない。やはりアルネーリが母様を殺すように仕向けた。実行犯はあの男……ゲームとは変わった状況はこれで一応は説明がつきます。
なら……わたしの……為に対策を練らなければいけません。
あの呟きを聞いてから3年、私の軟禁は遂に解かれ学園に行かされる事になりました。……この三年間アレの計画の為にでしょう。
マナーに教養等、侯爵令嬢に必要なモノは散々叩き込まれ、食事はみすぼらしい姿に成らない様にと平均的な量に成りました。
私は反論もせず意思の無い人形の様に努めて勤勉に教育を受けました。
……不気味に思われ悪口も言われますが今後の為です。
三年後には……見掛けだけは真っ当な侯爵令嬢ですよ。
私は表向きは大人しく学園に通いました。他人との接触は極力しません。長年の軟禁で対話能力が落ちたと言う理由も有りますが……陥れられると判ってますから。
他人との接触は成るべくしません。勿論他国の留学生とも接触は有りません。基本的に図書館等の公衆の目が有る場所に居ます。
なのに学園入学の一年後。
学園の集会をする衆目の広場に呼び出され
「エルネーア令嬢!お前がした他国の!しかも敵国として扱われている国と不義密通をしたことは判っている!そう!国家反逆に値する罪を犯した事は判っている!!侯爵令嬢だとしても許される罪でない!何か言い訳はあるか!」
いきなりこれです。
断罪するのは案の定レオエン子爵令息。
身分社会でしかも貴族が集まる公衆の面前で侯爵令嬢に子爵令息が罪を突きつける。
ゲームでもおなじでしたが現実だと呆気に取られますね。
こんな強気な事が出来るのは後ろ楯のお陰ですか?公爵家令息、伯爵家令息、宰相を勤める侯爵家令息、そしてしまいには第三王子。…ゲームでの攻略キャラの面子じゃ無いですか。アルネーリはゲームと違って身分があれなのにちゃんと攻略出来たんですね。
しかもハーレムルート。
本人は……結構後ろに居ますね。
ゲームでもそうですけど公衆の面前で複数の男が一人の女の子を責めるって良くできますよね?けど断罪が二年早いですね。
まぁ……それより公に国家反逆の罪とハッキリと言いましたね。
「……いえ、言い訳も何も国家反逆の罪とは何の事ですか?敵国に不義密通?私が何をしたと?」
「白をきる気か!」
「白も何も……」
「良いだろう。この場で言わないでおこうと情けを掛けたが白をきる気ならこの場で言ってやる!」
勝手に盛り上がってますね。で罪は仮想敵国として扱ってる国の人間と密会し国の情報を売り渡した?売り渡した情報は家が関わってる軍事関係……まさか留学生との接触を絶っていたのにゲームと同じとは……
「……覚えが有りませんけど…… 」
本当に知らないので言うと後ろのメンバーから批難ごうごう。証拠でも有るんですかと聞くと知らない生徒達が出てきて
「私みました!10日前の昼、エルネーアさんが町の校外で密会してるのを!」
「ああオレも見たぞ、最初は逢い引きだと思っていたが、まさか国の情報を売り渡してるなんて」
等々証人は五人以上…10日前の昼か、8日前の朝、証言は私が学園に居ない時間帯ですね。……本当だとしたら学園内だけで目撃者が此だけ居るってどれだけ運が悪いでしょうね?……町の外なのに
「まだ言い訳は有るか?」
「言い訳ですか?……では私の国家反逆の罪、それと先程の証言は真実だと言えますか?嘘か間違いだと大変な事になりますが?」
「は、なんだ一言の反論も出来んのか?しかも反論が出来ないから脅しか!薄汚い奴め!脅しで貴様の国家反逆罪は免れんぞ!」
証人もハーレムメンバーは異口同音で嘘でないといいました。
それにしても罵声が酷いですね。……あ、アルネーリが隠れた場所で嘲笑してますね。上手くいったとでも思ってる?けど少し怪訝な顔をしてますね。……今まで人形みたいにしていた私が此だけ話せると思ってもみなかったんでしょうか?
「何を笑ってる!」
「いえ、証言があった時間帯なんですが……確実にアリバイが有るんですよ?」
「なに……ふん、確かなアリバイだろうな!下手な証人だと証拠だと認められんぞ!……何を笑っている!」
笑ってると証人達がザワザワしてますね。
「いえ、アリバイを話しても信用されないかも知れませんから王立憲兵隊に捜査を頼みましょう」
今日一番のざわめきです。
「な、なに!?学園での事に王立憲兵隊を入れる気か!」
王立憲兵隊、憲兵隊の上位組織で貴族どころか王族さえ捜査の対象となるこの国最大の犯罪取締役。
本来はあまり学園での問題は大きくしたくないのか学園の捜査は権力でどうこうしやすい憲兵隊です。
「いえ国家反逆罪でしょう?憲兵隊でなく王立憲兵隊の仕事では有りませんか?……私を国家反逆罪だと言ってる人の中に王族の方もいらっしゃいますしね?」
学園を取り締まるのは基本的に憲兵。けど国家反逆罪なら別としても可笑しくないですよね?もし断るなら国家反逆の罪を王族が軽いと言ってる様なモノです。
「な!」
王子が慌ててますね。ええ普通の憲兵隊なら王族の強権で曖昧な証拠でもいけますが、王立憲兵隊だとそう言うのは一切通じませんものね? ……アルネーリが睨んでますね。予定と違うですか?
「国家反逆罪と言う大罪の証言に嘘偽りをのべたら場合は貴族でもそれ相応の罪に成りますが宜しいですか?場合によっては死罪でしたか?」
死罪と聞いて証人全員がガタガタと震えてますね。
「貴様!また脅しか!!」
「いえ、捜査が始まった後から間違いや嘘だと言っても通じないと親切に言っただけですよ?……私としては正直そのまま言わないでくれた方が良いですよ」
陥れられようとした相手の罪が軽くなるなんて嫌ですからと暗に伝えます。
「では何方か王立憲兵隊を……」
「ま、待ってくれ!そ、その」
証人の一人が慌てて止めました。
「なんですか?先程の証言をそのまま王立憲兵隊に言って貰って結構ですよ?今更間違いだとでも」
「ま、間違いという訳では無いが」
「ならそのまま言えば宜しいでしょう?真実なら問題ないですよ。」
「ま、まって!さっきのはお、オレの意思で言ったんじゃないんだ!」
「意思でない?……脅されて証言したとでも?」
「そ、そうなんだ!脅されてたんだ!」
証人の一人が公衆の面前で脅されてたとハッキリと言いましたね。これは脅してた相手を完全に潰さないと酷い目にあいますよ?
「はぁ、脅されたのなら酌量の余地は有ると思いますが…何方から?」
「それは、あの」
チラチラと向かう後ろ楯の面子(主に王子)、更に後ろのアルネーリを見てます。
「……脅迫したのは……」
私はそう口に出してから後ろにいたアルネーリを見ます。周りの視線はアルネーリに集まりましたね。注目を集めたアルネーリは狼狽してます。
「え、違います!私は脅してなんていません!」
「本当に?なら何でそんな所に」
「こ……此処に居たのは……姉さんが……し、心配で」
涙声で真実味の有る……演技ですね。姉なんて初めて呼ばれました。そちらが演技で来るなら此方も演技です。
なるべく辛そうな顔で……
「なら、何で……私が責められてた時に笑ってたんですか?」
アルネーリ一瞬イラッとした顔が表に出ましたね。
「違います!笑ってなんていません!え、エルネーア姉さん今まで一緒に暮らしていた私が信じられないの!」
……え?一緒に暮らしていた?素で驚いた顔をしてしまいました。
「確かに家は同じですが、私は五歳の頃に貴女が来てからの八年間一つの部屋に軟禁されてたので、顔を合わせた事は無かった筈ですが?話した事も……今回が初めてですよね?」
窓に細工がされてて一方的になら見ることは出来ましたが。おっと、周りがザワザワしてますね。結構有名な話しだと思ってたんですが?……あ、軟禁を口外するの止めされてたの忘れてました。ふふ、唖然としてるのが居ますね。人形て言われた事しかしない演技をしてた甲斐が有りましたね。
「すこし待て!軟禁とは、いや!顔も合わせた事がないとはどういう事なのだ?エルネーア嬢、君がアルネーリを嫌って嫌がらせをしてたのではないのか!」
「……?アルネーリが来てから軟禁されたので軟禁の元凶と思い嫌ってはいましたが……部屋からも出されないのにどう嫌がらせをしろと?軟禁部屋から出られたのは一年前の学園に行く前にようやくですが?それにマトモに話したのもこれが初めてですよ?」
成るべく感情を込めずに淡々と言うとザワザワと信じてる感じの人が多く見えますね。
「いや待て!そ、そもそも軟禁じたい本当なのか」
レオエンが嘘だと思ってる見たいですね。
「私の肌が不気味なぐらいに白いと言ってる人が居ましたが、それは軟禁されて外に出られなかったからですよ?」
覚えが有りますよねレオエン、陰口で白くて不気味とか言いましたよね?
「な、軟禁されてた証拠は其れだけか」
「はぁ、軟禁されて無ければ社交の場で何方か見たことが有りますよね?誰か五歳いこうに私をみた人は居ますか?」
周りの人は見たことが無いと囁き有ってます。
「…いや…見たことは無いが、それは……エルネーア嬢が我が儘をきかせてと……フェリアル、ソナタはよくヘルスアン家に行ってたのだろう、エルネーア嬢を見たことはあるか」
「それが……ヘルスアン家でもエルネーア、嬢の事を一目も見たことが無いです……偶然と思ってましたが」
証言してくれたのはハーレムメンバーの王子さまに良く家に来ていたフェリアル。
へぇ、世間に出られない理由を私の我が儘だと言ってたのですか。王子さまが言うならそれがこの学園での一般的な認識ですか。世間の情報を知らなすぎるのはダメですね。
「そうなんですか?」
成るべく他意を感じさせないように不思議そうに首を傾げます。
「あ、ああ……」
「う、嘘をつかないで!」
ああ、アルネーリが姉を庇うとか建前を捨てましたね。
「嘘?どの部分が?」
「ど、どの部分……ぜ、全部よ!悪者に成らない為に嘘ついてるんでしょ!」
全部って
「そうですか信じて貰えないなら仕方無いですね。国家反逆罪の調査で調べて貰えると思いますから王立憲兵隊に客観的に見てもらいましょう。……色々調べ尽くしてくれるでしょうね」
「ちょ!ちょっと待ちなさいよ!」
「そうだ待て!」
慌ててる人は黒だと周りに知らせてますよ。
……レオエンとアルネーリ。
ハーレムの面子はこの二人と青褪めた証人の反応を見て不安そうにしてますね。どうやら冤罪だとは知らなかった様ですね。
「……はぁ、この分だとあの話は本当でしたか」ボソッ
「エルネーア嬢、あの話とはどういう事だ?」
ギリギリ聞こえる様な声でポツリと呟くと王子が反応しました。
「いえ、……私の父、いえあの男、グラードスがヘルスアン家に養子に来る前は騎士だったそうなのですが、騎士だったグラードスがレオエン殿の祖父を見捨てて命を失い名誉も傷付いたと、それで娘の私に復讐すると…」
「な、なぜそれを!!」
レオエン何でこんな素直に白状するんでしょう。周りに聞いてる人が大量なんですよ?
「軟禁されてた部屋の下でアルネーリが独り言で話してたんですよ……まさか本当だとは思いもしませんでしたが」
ええ、元から知ってましたがアルネーリが聞こえる範囲で呟いてたのは本当です。アルネーリが驚いてますね。レオエンが唖然としてますね。周りは国家反逆罪と聞いたとき以上に混乱してますね。
「…はぁ、正直意味が判りませんでしたよ。父に愛されてるのはアルネーリなのに何で軟禁される程に愛されてない私に何かして復讐になると思ったのか」
「あ、愛されてない?」
「……愛?…あの男グラードスは地位目当てで結婚しただけで母様自体愛して無かったのですよ?だから母様が死んで直ぐに再婚をしたんですよ?だから愛してない娘の私は母が居なくなってこれ幸いと軟禁したのですよ?学園に行けると決まる前は食事さえ事欠く状況でしたよ?………私を愛してると思いますか?…それに…いえ、失礼しました」
…勢いで言いすぎました…流石に公衆で言うことじゃ無いですね。ネズミを食べてたとか口走らないで良かったです。
少し覚悟してましたが周りの視線が辛いです。
「………………………エルネーア嬢は愛されてない?え?」
……何でしょうね。このレオエンの反応は?
まるで騙されたピエロみたいな感じは……
……彼処で顔を真っ赤にしてるアルネーリが原因ですよね。