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■ 前 編

 

 

 

 

 『おおおおおお邪魔します・・・。』

 

 

はじめて訪ねたミノリの自宅。


気怠さが出ないよう、しっかりアイロンをかけたチノパンを履き、

ボタンダウンの白シャツにトリコロールラインのカーディガンを羽織った、

爽やか少年スタイルで玄関先に佇むハヤト。


その表情は強張るだけ強張り、すでにその目は潤んでいた。

 

 

『ねぇ・・・ダイジョーブ?』 ミノリがクスクス笑いながら覗き込む。

 

 

 

 『・・・・・・ダ・・・ダメかも・・・。』

 

 

蚊の鳴くようなハヤトの声は、むしろ、蚊よりも小さく心細げだった。

 

 

 

 

前日に、デパートに買い物に出ていたハヤト。

勿論、ミノリと一緒だった。


コンノ家への手土産を買いたいが、なにを持って行ったらいいのか

サッパリ分からずミノリはミノリで『そんなの要らないよ。』

と言うけれど、やはりそうはいかない。


『手土産のひとつも持参しない』などと思われたら、将来、”ご挨拶 ”の際に

影響が出るやもしれぬ。 

半ばケンカ腰で『いいから買うのっ!』 とミノリを連れ出していた。

 

 

デパ地下でふたり、手をつないでウロウロ徘徊する。

ハヤトの目は真剣そのもので、売り子から差し出される試食のお菓子を全て

味わって吟味し納得顔で頷いたり、眉間にシワを寄せ首を傾げたり。

 

 

ミノリが笑って言った。

 

 

 

 『ハヤト・・・ 暑いんじゃない? 手ぇ離そうか?』

 

 

イッパイイッパイなハヤト。 

ハンパない手汗にミノリが堪え切れずに大笑いした。

 

 

 

 

 

 

コンノ家のリビングテーブルに、ハヤト・ミノリ、

そしてミノリの母親が座る。


ミノリは母親似のようだ。 

穏やかな母の雰囲気に、少しだけ緊張がほぐれる。

前日デパートで買ったゼリーの詰合せをしずしずと差し出すと、

ミノリの母は嬉しそうに目を細めてお礼を言った。

 

 

 

 

  (ミノリも、こんな感じになるのかぁ・・・。)

 

 

 

ハヤトは、礼儀正しく膝に置く手に、少しだけ照れくさそうに目を落とした。

 

 

 

3人で和やかに会話をし、笑い声も響き、いい感じではじめての来訪は

進んでいた。

その時、玄関のドアチャイムがリビングに響き、ミノリがイスから立ち上がって

柱のドアモニターを覗くと、目を見開いて固まった。

 

 

『ん? ミノリ、誰・・・?』 母の声に、ミノリがハヤトに一瞬目をやり、

 

 

 

 

 『・・・お父さん・・・。』

 

 

 

 

  ガシャンッ!!!

 

 


その一言にハヤトがあからさまに動揺をして、飛び上がり、

テーブルの上のお茶が引っくり返って零れた。




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