Wie oft und wäre gestorben, zu finden
リクエスト小説ですっ!
……私は、何処に居るのだろうな……。
限りなく今自分の肉体は無い気がする。
まぁ、当然か……、私は今ある意味では死んでいて、肉体は水に還っているのだからな……。
私の名は、ヒメ、不死鳥と人間が呼ぶものだ。
私は攻の焔の不死鳥と違い、療の水の不死鳥で、人間は焔の方が見映えが良いからと私達を淘汰した。
恐らく、もはや水の不死鳥で生きている物は私しか居ないだろう。
……この名は、ある人間に貰った。私だけの名だ。
私はふと、その人間の事を思い出した……。
――昔、昭和と呼ばれた時代の、日本が世界に負けてから3年後。
私は、ある男を見かけた。
森の中の廃屋に男は暮らしていた。
男は、結核と言う病気らしかった。
私は、何となくその男が気になり、近づいた。
水の不死鳥は人の姿に自らの肉体を変化させる事が出来る。
こうして肉体を変化させた私は男に近づいた。
初めて出会った男は私を見ると、
「お嬢さん、何処から来たのか知らないがね。俺は結核と言う病気なんだ。……伝染しちゃいけないから、近づかないでくれ……。」
と言った、その顔は穏やかで、私は、驚いた。
今まで私は沢山の人間の死を見てきたが、ここまで死期が近いのに穏やかな人間は居なかったのだ。
……私は、この男に興味が湧いた。
それから、嫌がる男に無理言って私は男と暮らした。
男は名が無い為に名乗らなかった私をヒメ、と呼んだ。
……男の名は宮部三郎と言う名で、彼が幼い頃に両親は他界していた。
そして宮部は結核となった時、生まれつき身体も弱く元から村では疎まれ、更に頼れる兄二人も兵役に行き戦死してしまった為に、宮部は森へと村人に追いやられ、死んだことにされた。
本当に孤独になった彼は森の中の廃屋でこうしてずっと暮らしていた……、そうだ。
私は、宮部に同情した、だから私は自身の羽を3本程抜き、湯飲みの中に入れた。
私の力は人を癒す事、この抜け落ちた羽はやがて水へとかわる、そしてその水を飲んだモノはどんな怪我であろうと、どんな病気であろうと、たちまち治ってしまうのであった。
――それを飲ませた宮部は、助かった。
彼が治った後、私は宮部と共に森をおりた、そして宮部は復興が始まった東京へ行き、そこで必死に働いた、それから彼は貯めた金で小さな店を開いた。
私にはよく理解は出来なかったが、宮部は本当に幸せそうだった。
やがて宮部は私に結婚を申し込んできた。
「ヒメ、こんな俺によく付き合って来てくれた……。君が良いと言うのなら、俺と結婚して欲しいんだ……。」
男の表情は真剣だった。
――私は、迷った。
何故なら、私は人間ではないし、この男と生きることは出来ても、この男と共に死ぬ事は叶わないのだ。
……私は迷ったあげく、私は宮部に自分の正体を明かし、初めて宮部に自分の真の姿を見せた。
まるで水のような薄い青、それ以外は外見は完全に普通の鳥と同じ、人語を喋る鳥だ。
……宮部は、言った。
「君は……、美しい。」
……と。
宮部は、
「俺は君が人間ではなくても、愛している、……ただ、君を残して死ぬのは、辛い。」
と言った。私も、宮部と共に生きられぬのは辛かった。
――……そう、私はいつしかこの宮部三郎と言う男を、愛してしまっていたのだ。
宮部は、言った。
「……しかし、俺は君を愛している。」
――と。
それから私達は、80年以上の人間にとっては永い月日を共にした。
……子供は出来なかったが、宮部は本当に幸せそうだった。
そして彼が寝たきりになってから五年後――。
「……ヒメ。」
宮部はか細い声で私に言った。
宮部の肉体は本当に細くなり、シワだらけの顔には殆ど面影は残って居なかった。
しかし私を見つめるその瞳は、昔のままの眼差しを私に向けていた。
「……ヒメ、君は昔と代わらず、美しいままだなぁ……。」
彼はそう言った。
私は彼の手を握りしめた、私は代わらないんだ……、昔のまま、愛する人と死ぬことも出来ない。
――ふと私は、自分が涙を流している事に気がついた。
それを見た宮部は微笑みを浮かべながら、
「……べっぴんさんが、台無しだなぁ……、ヒメ。」
と言う、私は、
「……うるさい……ッ、宮部……ッ!。」
と言うと、宮部は相変わらず微笑みを浮かべながら、言った。
「……ヒメ、ありがとう。」
……と。
そうして宮部は眠るように目を閉じて――。
――宮部は、死んだ。
享年121歳、私の不死鳥である、と言う事実は、最期まで隠してくれた。
宮部の葬儀には、沢山の人が来て、それらの人々は皆泣いていた。
……あぁ、宮部はこんなにも愛されていたのか……。
自分の本当の姿で遠巻きに葬儀を眺めていた私は、そう思った。
――それにしても、宮部に私はもう一度会いたい。
それはきっと、あいつが好きだからだ。
――私は不死鳥、確かに生き物は死ぬと転生するが、あいつが転生した生き物を見つけるのはほぼ不可能だし、見つけたとしてもあいつは私の事は覚えていないし、私よりも早く死ぬのだぞ。
そう冷静な私が言う。
でも私は会いたいのだ、例え私の事を覚えていなくても、あいつの側に居たいのだ。
あいつが例え100回転生したとしても、私は100回あいつを見つける――、その覚悟だった。
だんだんと私の肉体は形成されて行く。
私のような水の不死鳥は死ぬと一度水の中に還り、そこで大地の力を吸収し、再びこの世界に産まれるのだ。
そして次の瞬間――、私は、新たな肉体で水の中から飛び出していた。
そして私は飛んでいく。
――宮部を、見つけるために。
遠くに見える陽炎の中に、宮部の姿を見た気がした。
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