HAPPY BIRTHDAY (ブログ掲載作品)
今日はあなたの誕生日。
普段は忘れているあなたのこと、この日だけは思い出す。
付き合い始めた日も、さよならした日も、覚えてない。
最初のデートはどこだったかな。
私の誕生日に何をプレゼントしてくれたかな。
覚えてないことばかりなのに。
会わなくなって15年も経っているのに。
あなたの誕生日プレゼントをドキドキしながら選んでた自分は、今でも思い出せる。
男の子は何を喜ぶんだろう。
シンプルなものがいいのかな。
タオルなら使ってくれるかな。
ラッピングはあまり派手じゃない方がいいのかな。
どうやって渡そうかな。
みんなの前じゃ嫌がるかな。
あの頃は、毎日が輝いていた。
楽しかった。
全てがキラキラして見えた。
私はメダルゲームをしながら、ぼんやりと思い出に浸る。
行ったり来たりする台の上で、銀色のメダルが揺れている。
落ちそうで落ちない。
ボーっとしながら、リーチの時だけ画面を見つめる。
画面の中で火山が噴火し、恐竜が暴れだした。
間もなく同じ恐竜が3つ並び、何やらルーレットが回り始めた。
よくわからずに見ていると、ビンゴが表示され、すべてのマスが7になった。
どうやら当たったらしい。
祝福の言葉が光り、メダルが大量に出てくる。
ジャラジャラと激しい音が響く。
音を聞きつけ、2人の子供が駆け寄ってくる。
「母ちゃんすごい!」
「いっぱいだ~ずるーい」
喜ぶ兄と妹に、メダルを半分ずつ分ける。
「母ちゃんはもう終わり?」
「うん。もう、終わり」
私は席を立ち、奥のベンチに座る。
自販機であたたかいミルクティーを買い、携帯をチェックする。
夫からのメール
「床屋終わった。そっち行くから、昼飯食べよう」
私は了解の返信をして、うーんと背伸びをした。
「母ちゃん、もう無くなっちゃったよ」
「もっとやりたかった!」
「もう、おしまい」
私は子供たちから空のカップを受け取って、メダル貸し機の前にひっくり返した。
「お腹すいたね」
私は両手をそれぞれ子供たちと繋ぎ、フードコートへと歩き出した。
今日はデザートにケーキを食べちゃおうかな。
お誕生日おめでとう。
きっともう二度と、会うことはないけど。
きっと来年も私は思い出すだろう。




