<運命の出逢いです>
また四ツ辻です。南へ行くと元来た森へ逆戻りですから、西へ行くか北へ行くかになります。
北は“石の郷”へ近付く方角ですし、その前に“戦鎚”の頭の部分を探さないといけません。西に行ってみましょう。
道は、乾いた泥で造られた小屋の前で終わっていました。小屋の屋根はドーム状になっていて、窓が一つだけありました。中を覗いてみると、中央に机があり、そこに上半身裸の黒い肌も眩しい偉丈夫が、素敵な上腕二頭筋を誇示する様に隆起させています。セクシーダイナマイト。直訳すると、性的発破です。何ですか。私を誘っていますか?
いやいや、ここは警戒して、よくよく観察してから…。窓にへばり付いて中の様子を穴が開く程窺っていると、性的発破が私の熱視線に気付きました。
「うわあっ、吃驚した! そんな所で何をしてるんだい? 用があるなら入ってきなよ」
「フヒヒ、では、お言葉に甘えまして…」
改めて近くで見ると、実に素敵な筋肉です。
「よく来たな、旅の人。俺の名はフレディ。腕で飯を喰っているんだ。腕相撲で俺とちょっとした賭けをしてみたくないかね?」
「えっ、手を握っていいんですか?」
「いや、賭けをしないかと言ってるんだが」
「勿論、喜んで至近距離で筋肉を観察させて頂きます」
「…調子の狂うお嬢さんだな」
最早そんな事はどうでも良いのです。今私は、勝ち負けを超越したところにいるのですからフヒヒ。
「そちらは金貨十枚かそれに見合う品物を賭けてくれ。こっちは、この妖精の粉を賭けようじゃないか」
実は金貨十枚の持ち合わせなんてありませんが、このチャンスは逃せません。
「バッチコイですわ、フレディ様」
私達は、一つの机を挟んで、手を繋いで見つめ合いました。お互いの握る手に、力がこもっていきます。
「うっ、お嬢さん、女だてらにやるな…!」
「カサンドラと呼んで下さいな♪」
みしみしみし。
「ぬっ、これは…」
「フヒヒ、浮き出る血管…」
ぎしぎしぎし。
「ぬおおおっ!?」
「煌めく汗…フヒヒヒ」
ぎぎぎぎ、バン!
「参った! あんたの勝ちだ! だから手を離してくれ! あと、やたら匂いを嗅ぐのもやめてくれ!」
あら、私とした事が。
フレディ様は、私から逃げる様に小屋の隅の木箱に這い寄ると、綺麗な粉の入った瓶を持ってきました。
「約束通り、この妖精の粉はあんたの物だ…!」
「そんな物より、できれば一晩、泊めていただけませんかぁ…?」
「いや困る! そいつを持って、早いところ出て行ってくれ!」
…摘み出されてしまいました。タイプだったのに…。私は咽び泣きながら分かれ道まで戻りました。…この恨めしさは、誰にぶつければいいのでしょうか~…?
装備追加:妖精の粉
冒険記録紙
名前:カサンドラ
装備:剣、革の鎧、ザック、幸運の薬、地図、万能薬、除草剤、虫除け、聖水、光の指輪、飛び跳ね靴、自動縄、捕縛網、探水棒、大蒜団子、封炎玉、真鍮のフルート、鼠の骨のネックレス、“戦鎚”の柄、戦上手の腕輪、ベラドンナ草、妖精の粉
お宝:金貨5枚、銀の箱