<アラジンドジン、ハゲチャビン~♪>
また、南への分かれ道がありましたが無視して、東へ歩き続けます。
今度は、南北の丁字路に突き当たりました。どうやら、森の東端迄来てしまった様ですね。う~ん、結局“戦鎚”の頭は見付かりませんでしたか…。ここから“石の郷”までの短い道中になければ、引き返すしかありませんね…。取り敢えず、北へ向かいます。
前方から、何か巨大な足音と、小枝の折れる音が聞こえてきました。何か、大きなものが近付いて来ている様です。
普段なら無用な争いは避けたいところですが、今は少しでも“戦鎚”の手掛かりが欲しいところ。何が来るのか、待ち受けてみます。すると、やって来たのは、身の丈五メートルはありそうな、森の巨人でした。茶色の麻作りの服を着て、革のブーツで下生えを踏み潰しながら、走って来ます。…これは、叢に隠れていても、気付かれずに踏み潰されていたかもしれませんね…。巨人は私を見ると、目を見開いて棍棒を振り上げました。
「お急ぎなら、無視してくださっても結構ですのに…」
しかし、図体ばかりでのろまな上に、余程急いでいたのか気も漫ろで、はっきり言って相手になりませんでした。一応死体を検めてみると、緑色の灯心をした、真鍮のランタンが出てきました。しかし、中に油は入っていません。もしかして、魔法のランタンかもしれませんね。
ランタンを擦って魔神を呼び出し、願い事を叶えてもらう。実にロマンティックが止まらない選択肢です。出て来るのが魔神ではなく、魔人の可能性もありますが…。下手に普通に火を点けても、油が無い以上焦げ付くだけの可能性もありますしね。ランタンをごしごし擦っていると、灯心から緑色の煙がもくもくと立ち上り、椅子に腰掛けた、禿頭の太った男性の姿に変わりました。男性の口がゆっくりと開き、太い声で語り始めました。
「さあ、お前は何が欲しいのかね」
…ビンゴの様でございます。勿論、私の願いは一つ。
「むくつけき、素敵な上腕二頭筋をお持ちの、マッチョな殿方が欲しゅうございます」
「…その様な願いは、叶える事はできない」
「…ちっ」
全く、気を持たせておいて、使えない魔神です。
「…今、舌打ちしたか?」
「いいえ、微動だにしておりません。…ではしょうがないですから、“戦鎚”の頭の部分が必要なんですが…」
「私には、物の形をした利益や富を与える事はできない。私にできるのは、お前の持っている力を引き出す事だけだ」
…だったら、最初からそう言っていただきたいものです。以前に喰らった毒ガスによる呼吸困難を治してもらうのも手ですが、業物の剣と戦上手の腕輪があれば、大抵の怪物に後れを取る事はないでしょう。
「…では、私の、冴えない運勢をどうにかしていただけませんかねえ…」
「よろしい、それなら叶えられる」
魔神はすぐに姿を消し、点いていたランタンの灯も消えました。表立って変化は感じませんが、魔神が願いを叶えてくれたなら、大きな意味では私の男運も向いてくるかもしれませんね…。
幸運の薬を節約できたので、良しとしましょう。ランタンを投げ捨て、北へと向かいます。
冒険記録紙
名前:カサンドラ
装備:剣、革の鎧、ザック、幸運の薬、地図、万能薬、除草剤、虫除け、聖水、光の指輪、自動縄、捕縛網、探水棒、封炎玉、真鍮のフルート、鼠の骨のネックレス、“戦鎚”の柄、戦上手の腕輪、ベラドンナ草、妖精の粉、業物の剣、ドラゴンの歯、力の回復薬
お宝:金貨12枚、銀の箱、黄金の耳飾り(金貨5枚)×二