<ドワーフはいまいちタイプじゃないです>
途中南への分かれ道がありましたが、逆戻りになるので無視して、東へ進みます。
道を歩いていますと、道端の丸太に、ドワーフが一人腰掛けているのに出くわしました。鉄兜に鎖帷子で武装しています。私を見ても、ニコリともいたしません。…まあ、なべてドワーフというのは無愛想なものですが。
しかし私は、ドワーフには興味はありません。勿論、性的な意味で。かといって、もし“石の郷”のドワーフなら、使命の事を話せば何か協力してくれるかもしれません。ここは話し掛けてみる事にいたしましょう。
「…あのぉう、もしかして、“石の郷”の方でしょうか~…?」
私が話し掛けると、彼はこちらを睨んで斧を掴み、跳び下がりました。
「…“石の郷”だと…! この俺を、“水越の郷”の鷲使いと知って、そんな戯言をほざくか…?」
「…ありゃ?」
「我が名はルブナート。“戦鎚”を奪う筈だった、俺の可愛い鷲も、この忌々しい森で失ってしまった。で、貴様は何者だ? 俺の敵か、味方か?」
どうやら、アモルツァイ氏が仰っていた、“石の郷”に敵対する部族のドワーフだった様ですね。何という偶然でしょうか。…勿論、悪い意味で。
別に“石の郷”の敵だからといって、私に敵対する理由はございません。私が請け負ったのは、“戦鎚”の捜索で、ドワーフ同士の争いには関わり合いはありませんから。…しかし、彼が既に“戦鎚”の頭を見付け出している可能性はあります。まあ、広い意味では彼も強盗ですから、殺ってしまっても、良いのではないでしょうか~…?
「まあ、どちらかと言えば、敵でしょうかね~…?」
剣を抜く私に、彼は猛然と斧を振り回しながら、襲い掛かってきました。
「老いたりといえども、このルブナート、貴様如きに負ける程衰えてはおらんぞ!」
「おろっと?」
最初の一合こそ足を滑らせてギリギリ斧を受けましたが、後はまあ、楽勝でございました。
「ば、馬鹿な…俺が、人間如きに…!」
「はい、ご苦労様でございました」
ルブナートさんにはここで永遠に休んでいただくとして、そのザックを拝見します。残念ながら“戦鎚”の頭は見当たらず、代わりに、透明な液体の入った瓶がありました。コルクで栓がされています。
冒険家たる者、正体の判らない飲み物は、取り敢えず飲んでみる。この業界の鉄則です。…この世界で、三十歳の誕生日を越す者が少ないのは、この野放図な決断力の所為ではないかとも思いますが、取り敢えず従ってみます。致命的な飲み物を、後生大事に持ち歩く事も、そうはない…と信じたいですね…。
「…苦!」
透明な割に、酷く苦いです。果たして飲んで良かったのやら、今更ながら悔やまれますが、良薬口に苦しの格言を信じましょう…。と、暫くすると、私の身体が光り始め、とても充実した気分になります。どうやら、魔法の健康薬だった様です。
しかし、光って効いたのをアピールするとは、なかなか自己顕示欲の強いお薬です。ともあれ、東への旅を続けましょう。
冒険記録紙
名前:カサンドラ
装備:剣、革の鎧、ザック、幸運の薬、地図、万能薬、除草剤、虫除け、聖水、光の指輪、自動縄、捕縛網、探水棒、封炎玉、真鍮のフルート、鼠の骨のネックレス、“戦鎚”の柄、戦上手の腕輪、ベラドンナ草、妖精の粉、業物の剣、ドラゴンの歯、力の回復薬
お宝:金貨12枚、銀の箱、黄金の耳飾り(金貨5枚)×二