<穴に落ちた~>
日差しが中天に差し掛かる頃、丘の頂点に辿り着きました。眼下には、“闇の森”の森が輪の様に広がっています。丘の先は、谷底へ続いている様です。辺りは、静けさに支配されています。
「うふふ…寂しい♪」
無理をして微笑んで、丘の向こう側へ降っていきます。やがて分かれ道に差し掛かりました。
西へ行ってみましょう。道は丘の尾根に沿って続き、やがて南北の分かれ道に出ました。北へと向かいます。
丘に挟まれた、狭い道を辿ります。待ち伏せにお誂え向きの地形ですね…。剣を抜き、左右に警戒していた私を嘲笑う様に、足下の枯れ葉が抜け、落とし穴に落ちてしまいました。
更に悪い事に、落とし穴の底に設えられていた、尖った杭の上に落ちてしまいました。杭が脚の肉を抉り、激痛が走ります。
熊用の罠の様ですね…。
「痛いよう、痛いよう…」
取り敢えず、すぐさま敵も味方も現れる様子もないので、さめざめと脚を押さえて泣き伏します。
「…」
こんな時には、自棄食いするしかありません。脚の応急手当を済ませると、寝転がったままザックから食糧を取り出し、貪り喰います。
「醜い豚になって、死んでやる…」
それはそれとして、ここから脱出しなければ始まりません。
「そういえば、こんな物もありましたね…」
ザックから茶色い飛び跳ね靴を取り出すと、履き心地を試します。…うん、なかなか良好です。
「そぉい」
一応掛け声を上げて、私は一跳びに穴の外に飛び出しました。
「やれやれ、酷い目に遭いましたね…」
まあ、いつもの事ですが。…そろそろ、魔法の幸運の薬を飲んでおいた方が良い気もしますが、このまま“戦鎚”の頭を見付けられずに森を抜けると、酷い最期を迎えそうな気がしますので、もう少し我慢する事にします。
冒険記録紙
名前:カサンドラ
装備:剣、革の鎧、ザック、幸運の薬、地図、万能薬、除草剤、虫除け、聖水、光の指輪、自動縄、捕縛網、探水棒、封炎玉、真鍮のフルート、鼠の骨のネックレス、“戦鎚”の柄、戦上手の腕輪、ベラドンナ草、妖精の粉
お宝:金貨5枚、銀の箱