<蝙蝠(こうもり)でさえ友達がいるのに私(わたくし)ときたら…>
やがて、辺りの草は短くなり、道はなだらかな登り坂になって参りました。前方から、水の流れる音が聞こえてきます。緩やかな川が、道を遮って流れています。向こう岸には、北への道が続いています。川はとても浅く、歩いても渡れそうですが、所々に踏み石も出ています。
どちらを選んでも、足場が悪い事に変わりはないんですよね…。荒野を流れる川に、何もいない訳がありません。…踏み石の方が、まだマシですかね。
何事もなく踏み石を渡り、北への道を辿ります。道は丘を越え、更に北へ続いていましたが、そろそろ日が暮れてきました。今日はこの辺りまでですね。私は道端にただ一本生えている大木の根本を今夜の塒に定め、焚き火を起こして剣を抱くと、眠りに就きました。
一時間程経った頃でしょうか。静かな羽ばたきの音で、私は目を覚ましました。剣を掴んで立ち上がると、満月の光の中、夜空に三つの影が飛んできます。どうやら大蝙蝠の様ですが、私の傍まで飛んできた時、吸血蝙蝠の証である牙が垣間見えました。
ラッキー、ちょうど大蒜団子を持っています。ザックから取り出すと、香ばしい香りが辺りに漂います。…もしかして、私のザック、大蒜の匂いが染み付いているのではないでしょうか。匂い立つ様な美女の出来上がりです。…勿論、悪い意味で。それはともかく、吸血蝙蝠は大蒜団子の御陰で降りてこられない様です。…という事は、彼等は吸血鬼が化けた姿なのでしょうか? 三匹連れ立って? こんな仲良しこよしな吸血鬼、見た事ありません。…吸血鬼の癖に、妬ましい。上空に羽ばたく蝙蝠に呪詛の念を送りつつ、私は再び眠りに就きました。翌朝、持ち物をまとめると、北への旅を再開します。
冒険記録紙
名前:カサンドラ
装備:剣、革の鎧、ザック、幸運の薬、地図、万能薬、除草剤、虫除け、聖水、光の指輪、飛び跳ね靴、自動縄、捕縛網、探水棒、封炎玉、真鍮のフルート、鼠の骨のネックレス、“戦鎚”の柄、戦上手の腕輪、ベラドンナ草、妖精の粉
お宝:金貨5枚、銀の箱