面談
下校時間が過ぎ、校内に響き渡るのは運動部の掛け声や楽しそうな笑い声。それを一人教室の窓から眺めている少女がいた。少女の名は天草ちづる(あまくさちづる)中学2年生。くだらない。彼女はそう思った。部活動の掛け声も楽しそうな笑い声もなにもかも。本当ならばさっさとこんなところを去りたいちづるだが今日はそれができなかった。それは面談があるからだ。先生と生徒が1対1で話し合うごく普通の面談。普通の生徒なら「めんどくせー」ですませるところだが彼女は違った。彼女には重大な『秘密』があった。それは誰にも知られてはいけない絶対の『秘密』。自分の中で、自分一人で抱え込み立ち向かわなければならない運命なのだ。それを今日の面談でバレてしまったら。そう思うと彼女は不安に襲われる。人と2人きりだからというわけではない。現に去年の面談は自分の秘密がばれずにすんだのだ。彼女は人と接するときは素の自分ではなく違う自分を演じている。なので自分の『秘密』がばれることは絶対にないのだ。けれど今回の担任加賀優斗だけは別なのだ。どれだけ自分が違う自分を完璧に演じ『秘密』に感ずかれないようにしても彼だけは気付いてる。そんなような気がしてちづるはならないのだ。あいつは何か持っている。ちづるの感がそう告げていた。今回の面談。それで私の運命がどうなるかが変る。絶対に、『秘密』を知られてはならない・・・・・。
「おー。天草ー。待たせてゴメンな。まったか?」
「いえ、ぜんぜん。大丈夫ですよ。」
そう考えていると担任の加賀優斗が教室に入ってきた。少し警戒しながらもちづるはいつもの演技を続ける。
「そうか、なら面談始めるか」
こうして面談が始まった。勉強はどうだ?などごくありきたりなやり取りをしこれで面談は終わり。『秘密』は隠し通せた。そう思った瞬間。
「お前、なんかクラスに馴染めてないっていうかあんま楽しそうじゃない感じがするんだけどどうなんだ?」
そう加賀優斗は質問を投げかけていた。その質問は彼女の心に突き刺さった。そして演技することを忘れてこうつぶやいた。
「・・・・・・・・・友好関係なんてそんなくだらないもの私には必要ない。」
「え?」
「だから、友好関係なんてそんなくだらないもの私には必要ない。一人でもやっていけるって言ってるのよ。・・・・・・いや、実際には一人でやっていかなきゃいけない、かな。」
「おまえ・・・。それどういう・・・。」
優斗が戸惑いを見せる。彼女は自分はもう『秘密』を隠しと通せない。そう思った。だから自分の隠していた感情をすべて出した。
「別に深い意味はないわ。その言葉通りよ。私は友達なんていらない。くだらない馴れ合いなんていらない。もしそんなことしたら・・・・・私の友達になった子が“組織”に狙われちゃう。」
「組織?」
「そうよ、私を常に監視し狙っている“組織”。私が友達なんて作ったらその子も狙われるにきまってるわ。誰にも頼らず一人孤独に闘って生きる、それが私の運命なの。」
「そんな・・・・。お前、それ本気で言ってんのか?」
「“組織”のこと?確かに普通の人間であるあなたからしたら想像もつかないかもしれないけれどこれはれっきとした事実よ。」
「違う。」
「え?」
「俺が言ってんのは『友達なんていらない。一人でやっていける。』って言う考えを本気かどうかって聞いてるんだよ。」
「・・・・。あたりまえじゃない。どうしてそんなことを聞くの?」
「そんなことじゃねぇよ!!」
「・・・・・・え?」
「おまえはこのクラスの仲間だろ!!おまえに何があったかなんて分からないけど、俺はお前の力になりたい!!だから一人で生きていけるなんて、友達いなくても大丈夫なんて悲しいこと言うな!」
優斗は叫んだ。力いっぱい。ちづるの心に届くように。
「な・・・・・。あなた本気でそんなこと言ってるの!?自分が何言ってるかわかってる!?私、狙われてるんだよ?」
「狙われてる?そんなの知ったことかよ!!俺はお前の先生だろ!」
「そんな理由で・・・・そんな理由で私の力になりたいって言うの!?」
彼女は驚いた。そして戸惑った。けれど、彼女の心はまだ彼に開こうとしていない。彼女はグッと唇をかみしめる。そして冷たく優斗に対しこう言い放った。
「そんな半端な気持ちで力になりたいだなんて言われても迷惑なだけよ。目障りだわ。」
「―――――!!」
先生を私のせいで危険に巻き込むなんてそんなことできない。私一人が犠牲になればいいことなんだから・・・・。
「もう帰っていいですか?こんなくだらないことに付きあってても時間の無駄なので。」
そういって席を立とうした瞬間
「待って!!」
「・・・・・・・なんですか?」
「お前、なんかすっごい悲しそうな顔してるぞ。そんな生徒をほっとくなんて俺はできない。」
「なっ・・・。」
「さっきも言ったけど俺はお前の力になりたい。先生だからとかじゃない。一人の人間、加賀優斗としてだ。もう一度う言う。お前の力になりたい。」
「・・・・・・っ。」
その言葉に彼女の中に言葉にできないような感覚がした。そしてそれと同時に彼女は泣いていた。彼の言葉が彼女の固く閉ざされた心開かせたのだ。
「先生・・・・。私・・私、つらかった・・・。誰にも言えなくて・・・。」
「・・・・・つらかったんだな。」
「・・・・うん・・・。」
そして彼女は彼に自分のどんな存在であるか。“組織”の実態など、すべてを話した。こうして彼女に『仲間』ができた。仲間なんていらないと思っていたけど、たまにはこういうのも悪くないかもしれない。”組織”に対する作戦を一生懸命に練っている優斗を見ながらそう思うのであった。
まず最初にこんなテンションだけで書いた小説を読んでいただいてありがとうございました。
とりあえずこの小説を書いた経緯を書いておきます。
私が学校で面談をした際、先生に「おまえクラスに馴染めてないけど大丈夫?」っとまるで私がぼっちのようなことを言ってきた。→これ厨二っぽいセリフで返したらどうなるんだろう?→執筆!!
です。なんてくだらない理由。
本当にこんなくだらない小説を読んでくれた方ありがとうございます。誤字脱字ありましたら教えていただければ幸いです。