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「もし」シリーズ

記憶を残したまま転生しますか?

作者: 笛伊豆

輪廻があるとしたら人間は全員転生しているわけです。

もしそうだったら天界ではどうなっているのか?

 青信号で横断歩道を渡っていたらトラックが突っ込んできた。

 そして今、俺は薄ぼんやりした空間で羽の生えたイケメンと対峙している。

 転生って本当にあったんだ。


「貴方には選んで頂きます。記憶を持ったまま転生するか、それとも真っ新な魂として次の人生に臨むか」

「選べるんですか?」

「もちろんです。ご本人が納得して転生しないと秩序が乱れるので」


 イケメンは天使だそうだ。

 こういう時は神様とか女神が出てくるのかと思っていたけど違うらしい。


「それはそうでしょう。日本だけでも1億人以上いるんですよ。平均寿命が80年として年に125万人、一日平均3500人くらい死んでるんです。いちいち神様が立ち会えるはずがない」

「だから天使が」

「人海……いや天使海戦術で仕事しています」


 よく判らないけど俺は死んだらしい。

 でも転生させてくれるんなら生き返りも出来るのでは。


「無理です。どっちみち貴方の身体はグチャグチャです」

「ですよね。転生って赤ん坊からですか」

「はい。転移とかはあり得ません」


 ラノベは嘘だったらしい。


「転生先は選べるんですか」

「選べません。ついでに貴族家がいいとかも無理です。どんな家に生まれるかは運ですね」

「ならチートは」

「そんなものはありません。ゲームじゃないんですよ。別に勇者になれとか世界を救えとかではないので」


 それはそうか。

 でも記憶を持ったまま転生出来るとしたら、それ自体がチートなのでは。

 ならば一択しかない。

 大抵の人は同じ意見では。


「それでは記憶を保持したまま転生ということですね」

 天使はいそいそと書類を取りだした。

「ではここにサインを」


 待てよ?

 どう考えても記憶があった方が有利だ。

 だったらなぜ聞く?


「ひょっとして罠とかあります?」


 イケメンは書類を手にしたまま後ろめたそうな様子を見せた。

 何かある。


「教えて下さい」

「……実はですね。記憶を持ったまま転生した人って大抵は自殺したり気が狂ったりしてまして」

「え? 何で?」


 イケメン天使は不承不承続けた。


「ええと、天使は嘘がつけないのでぶっちゃけますが、生まれた段階で前の人生の記憶があったら露骨に地獄ですよ。

 ろくに身動き出来ず、目もよく見えず、言葉も判らないまま最低でも半年くらい過ごすんです。しかもあちこち痛むし乳幼児特有の病気を一通り経験します。

 何とか動けるようになってからもそれが数年続きます。

 これまでの知識を持ったままで。

 拷問です」


 そうか。

 確かに。


「でも最初の半年とか1年とか我慢すれば」

「普通の異世界の平均寿命は20歳です」


 イケメン天使は諦めたように言った。


「貴方が生きていた日本は異世界の中でも例外的に恵まれた世界です。大半の世界はまだ地球でいう中世とか古代レベルの文明しかありません。

 残りの半分は洞窟に棲む原始人です。

 そういう世界って医療技術が未発達で、乳幼児死亡率か8割くらいです」

「……それって」

「はい。生まれてもかなりの確率で幼児の内に死にます」


 そういう話は聞いていた。

 古代どころか日本でも江戸時代あたりまで無事成人する人って少ないと。


「それに怪我で身体を欠損したり傷跡が残ったりは当然あります。病気になっても病院なんかありませんし」

「何で? 昔から医者はいたでしょう」


 するとイケメン天使はチッチッと指を鳴らした。


「そんなのを使えるのは高貴な方々だけですよ。庶民は民間療法がせいぜいです。

 下手に奴隷とかだったら」

「……え? でも」

「そうですね。どういう家に生まれるかはランダムですから、例えば王家は十万分の一くらいですか。貴族家なら数千分の一。宝くじみたいなものですね」


 それはそうか。

 転生というとすぐに侯爵家の子息とか思うけど、実際にはほとんどいないはずだ。


「貴族家に生まれても油断は出来ません。乳幼児死亡率は庶民よりはマシですが低くはない。しかも政争がつきまといます。赤子の頃は無力ですから何かのきっかけでキュッ、と」


 お家騒動という奴か。


「でも可能性はありますよね」

「可能性はね。何万分の一か知りませんけど、運良く勝ち抜いて成人したとします。

 でも一生、飼い殺しです」

「でも知識チートで」

「王家や貴族って役割が決められていて、おかしな事を言い出したら即首チョンパですよ。

 ひたすらお付きの人に従って生活も結婚も全部お膳立てされて一生を終えます」


 何てこった。

 そんな状態で日本の記憶があったら地獄なんてもんじゃない。

 しかも脱出しようがない。

 あまりの話に呆然としているとイケメン天使がとどめを刺すように言った。


「もちろん、常に可能性はあります。

 ひょっとしたら王家に生まれるかもしれません。

 病気にもならず暗殺もされず王位を継げて知識チートで英雄になって、美女や美少女のハーレム作って最高の人生を送れるかもしれない。

 さて、もう一度聞きます。

 記憶を残したまま転生しますか?」

考えてみたら私らは大抵前世の記憶ありませんし、知識チートで何かやったというような人もほとんどいないんですから、みんな全部忘れてやり直しを選択したということですね。

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