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無能と追放された陰陽師の俺が、古代神族の力で成り上がる  作者: アイザワ


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森の主

七日目の夜。

蒼真は祠の前で、焚き火を見つめていた。

霊力の制御ができるようになり、ようやく一息つける。だが、白金の表情には何か不安が残っていた。

「なあ、白金」

「はい?」

「お前、さっきから何か気になってるだろう」

白金は少し驚いた顔をした。

「……分かりますか」

「一緒にいれば、なんとなくな」

蒼真は焚き火に枝を投げ入れた。

「何が気になってるんだ?」

白金は少し迷ってから、口を開いた。

「実は……この森に、異変が起きています」

「異変?」

「ええ。あなたが来てから、森の妖気が乱れているんです」

白金は森の奥を見つめた。

「まるで、何かが目覚めたかのように」

「俺のせいか?」

「いいえ。あなたのせいではありません」

白金は首を振った。

「むしろ、あなたの力に反応して、森の奥に封じられていた何かが……」

その時だった。

ドォォォン……

地面が揺れた。

「地震か?」

「いいえ、これは……」

白金の顔色が変わる。

「来ます! 蒼真様、警戒を!」

蒼真は立ち上がり、短刀を抜いた。

森の奥から、巨大な影が近づいてくる。

木々がなぎ倒され、地面が割れる。それほどまでに、巨大な何かが。

「グオオオオオォォォ!」

咆哮が森を震わせた。

そして現れたのは――

「熊の……妖怪?」

五メートルはあろうかという、巨大な黒熊だった。だが普通の熊ではない。全身から禍々しい妖気が噴き出し、目は血のように赤く光っている。

「羅刹熊……!」

白金が叫んだ。

「この森の主です!」

「森の主……!」

「かつては穏やかな守護者でしたが、何かに侵されている……!」

羅刹熊が蒼真を睨んだ。

「グルルル……人間……!」

低い、地を這うような声。

「貴様……神殺しの……匂いがする……!」

「喋った!?」

蒼真は驚いた。妖怪が人の言葉を話すのは稀だ。それだけ強力な存在だということ。

「許さぬ……神殺しは……滅ぼさねば……!」

羅刹熊が突進してきた。

「蒼真様!」

白金が蒼真の前に躍り出る。

「■■■(氷結の障壁)!」

白金の周囲に、氷の壁が出現した。

ドガァン!

羅刹熊の一撃が氷の壁を砕く。だがその間に、蒼真は横に回り込んでいた。

「はぁっ!」

蒼真の短刀が、羅刹熊の脚を切りつける。

だが――

「硬い……!」

まるで岩を斬っているようだ。刃が弾かれる。

「蒼真様、霊力を武器に込めてください!」

白金の声が飛ぶ。

「霊力を……?」

蒼真は短刀を構え直し、集中する。

七日間の訓練で学んだこと。霊力を身体に巡らせる感覚を思い出す。

今度は、それを武器に。

「流れろ……!」

蒼真の短刀が、黄金色に輝き始めた。

「それです! もう一度!」

蒼真は再び羅刹熊に斬りかかる。

今度は違った。霊力を纏った刃が、羅刹熊の皮膚を切り裂いた。

「グオォッ!」

羅刹熊が悲鳴を上げる。

だが、傷は浅い。そして羅刹熊の怒りは、さらに増していた。

「小賢しい……人間め……!」

羅刹熊の口から、黒い炎が噴き出した。

「まずい!」

蒼真は咄嗟に飛び退く。黒炎が地面を焼き、木々を燃やす。

「妖炎……! あれに触れたら、霊力ごと焼かれます!」

白金が警告する。

「どうすればいい!?」

「私と一緒に戦ってください!」

白金が蒼真の元へ駆け寄る。

「あなたの力と、私の力を合わせるんです!」

「合わせる? どうやって?」

「私に触れて、力を流してください!」

蒼真は白金の手を握った。

瞬間、二人の身体が光に包まれる。

「これは……!」

蒼真の霊力と、白金の霊力が混ざり合う。黄金と銀が螺旋を描き、一つになっていく。

「感じますか、蒼真様!」

「ああ……!」

圧倒的な力が、身体の中に満ちていく。

「これが、契約者同士の共鳴……!」

白金の九本の尾が大きく広がる。

「いきますよ、蒼真様!」

「ああ!」

二人は同時に、羅刹熊に向けて手を翳した。

「「神光閃!」」

黄金と銀の光が、一条の閃光となって放たれた。

ドォォォン!

閃光が羅刹熊を貫く。

「グオオオオォォォ!」

羅刹熊の巨体が、後ろに吹き飛んだ。

地面に倒れ込み、動かなくなる。

「やった……のか?」

蒼真が息を整える。

白金が羅刹熊に近づき、その身体を調べた。

「……生きています。でも、意識はありません」

「殺さなくてよかったのか?」

「ええ」

白金は悲しそうな顔をした。

「この熊は、本来は優しい守護者でした。何かに侵されて、狂わされていただけ」

白金が羅刹熊の額に手を当てる。

柔らかな光が、羅刹熊を包んだ。

すると、羅刹熊の身体から、黒い霧のようなものが抜けていった。

「これは……」

「神喰いの欠片です」

白金は厳しい表情で言った。

「まだ小さなものですが、これが妖怪に取り憑くと、狂気に陥れてしまうんです」

「神喰いが……ここにも」

蒼真は拳を握った。

三年前、仲間を死なせた存在。それがこんな森の中にまで。

「蒼真様」

白金が羅刹熊の欠片を浄化し終えると、蒼真の元に戻ってきた。

「あなたは、これから何度も神喰いと戦うことになります」

「……分かってる」

「辛い戦いです。時には、大切な者を失うかもしれません」

白金は真剣な眼差しで蒼真を見つめた。

「それでも、戦えますか?」

蒼真は少し考えてから、答えた。

「俺は……弱い人間だ」

「三年前も、仲間を守れなかった」

「今だって、お前がいなければ何もできなかった」

蒼真は白金の目を見つめた。

「でも、だからこそ、戦いたい」

「もう二度と、あんな思いはしたくない」

「だから、強くなる。お前の力を借りて、この力を使いこなせるようになる」

白金の瞳に、涙が浮かんだ。

「……はい」

「では、共に参りましょう。どこまでも」

その時、倒れていた羅刹熊が目を覚ました。

「う……ここは……」

その声は、先ほどとは違い、穏やかだった。

「目が覚めましたか」

白金が羅刹熊に近づく。

「白金様……? 私は一体……」

「神喰いに侵されていたのです。でも、もう大丈夫」

羅刹熊は起き上がり、自分の身体を確かめた。

そして、蒼真に深く頭を下げた。

「人間よ。私を救ってくれて、感謝する」

「いや、俺は……」

「神殺しの力を持つ者よ」

羅刹熊は真剣な顔で言った。

「お主の道は、険しいものになるだろう。だが、この森は忘れぬ。お主の恩を」

「もしまた、この森を訪れることがあれば、我らはお主の味方だ」

そう言うと、羅刹熊は森の奥へと消えていった。

「行ったな……」

「はい」

白金は微笑んだ。

「蒼真様。今日の戦い、よくできました」

「お前のおかげだ」

「いいえ。あなたの成長です」

白金は蒼真の手を取った。

「七日前のあなたなら、あの熊には太刀打ちできませんでした」

「でも今は違う。確実に、強くなっています」

「そうか……」

蒼真は自分の手を見つめた。

確かに、力を感じる。まだまだ未熟だが、それでも。

「なあ、白金」

「はい?」

「そろそろ、この森を出ようか」

白金は驚いた顔をした。

「もう、行くのですか?」

「ああ。ここにいても、これ以上は成長できない気がする」

蒼真は空を見上げた。

「外に出て、色んな経験をして、もっと強くなりたい」

「そして――」

蒼真は拳を握った。

「神喰いを倒すために、戦いたい」

白金は嬉しそうに笑った。

「分かりました。では、明日出発しましょう」

「ああ」

二人は祠に戻り、最後の夜を過ごした。

そして翌朝――

蒼真と白金は、鬼門の森を後にした。

追放された無能は、最初の試練を乗り越えた。

これから、本当の旅が始まる。

成り上がりの物語が、今、動き出す。

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