表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能と追放された陰陽師の俺が、古代神族の力で成り上がる  作者: アイザワ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/26

契約の儀式

「契約……だと?」

蒼真は困惑したまま、白金を見つめていた。

白銀の髪が月光を受けて輝き、九本の尾が優雅に揺れている。その美しさは、この世のものとは思えなかった。

「はい。あなたと私の、式神契約です」

白金は穏やかな笑みを浮かべている。

「待て。俺には霊力がない。測定不能だったんだ。式神なんて、契約できるはずが……」

「測定不能?」

白金は首を傾げた。

「ああ、なるほど。測定器では測れなかったのですね」

「どういう意味だ?」

「あなたの霊力は、この世の基準を超えているのです」

白金は蒼真の右手を取り、痣をそっと撫でた。

「これは『神印』。古代神族の力を継承する者に現れる、証です」

「古代神族……?」

聞いたことのない言葉だった。

「今は昔、この世がまだ混沌に包まれていた頃」

白金は静かに語り始めた。

「神々は互いに争い、世界は炎と闇に包まれていました。その時、一人の人間が現れたのです」

「人間……?」

「はい。彼は神々をも殺せる力を持っていました。その力で、暴虐な神々を討ち、世界に秩序をもたらした」

白金の瞳が、遠い過去を見つめるように細められる。

「彼こそが、初代『神殺し』。そしてあなたは、その血を継ぐ者」

「待て。それじゃあ、俺の一族は……」

「天御柱家は、確かに名門の陰陽師の家系です」

白金は頷いた。

「でも、あなたの母上は違った。彼女は古代神族の末裔だったのです」

「母が……?」

蒼真の脳裏に、母の優しい笑顔が浮かぶ。

病弱で、いつも床に伏せっていた母。だが、その瞳だけは不思議なほど力強かった。

「母上の形見を、見せていただけますか?」

「あ、ああ」

蒼真は懐から、藍色の守り袋を取り出した。

白金がそれを受け取り、中から勾玉を取り出す。青白く光る、美しい勾玉だ。

「やはり……これは『封神の勾玉』」

「封神?」

「あなたの力を封じていたものです」

白金は勾玉を蒼真に返した。

「神殺しの力は、あまりに強大すぎる。制御を誤れば、神だけでなく、自分自身や周囲の全てを破壊してしまう」

「それで、母上が……」

「はい。あなたを守るため、母上はこの勾玉に自らの命を捧げ、あなたの力を封印したのです」

蒼真の手が震えた。

母は病死ではなかった。自分を守るために、命を削っていたのだ。

「母上……」

「でも、封印はもう解けかけています」

白金は蒼真の右手を見つめた。

「さっき、あなたは無意識に神殺しの力を使った。それは、封印が限界に達している証拠」

「じゃあ、どうすればいい?」

「契約です」

白金は真剣な表情で言った。

「私と契約を結べば、あなたの力を制御する手助けができます。暴走を防ぎ、正しく力を使えるように」

「お前は……なぜ俺を助けようとする?」

蒼真は率直に聞いた。

「会ったばかりなのに、なぜそこまでしてくれる?」

「……私には、使命があるのです」

白金は視線を逸らした。

「稲荷明神様から授かった、使命が」

「使命?」

「いずれ、お話しします」

白金は再び蒼真を見つめた。

「今は、信じてください。私はあなたの敵ではありません」

蒼真は白金の瞳を見つめ返した。

そこには嘘がなかった。少なくとも、そう感じた。

「……分かった」

蒼真は頷いた。

「どうすればいい?」

「まず、あなたの名を」

「蒼真だ。天御柱……いや」

蒼真は首を振った。

「もう天御柱ではない。ただの、蒼真だ」

「蒼真様」

白金は微笑んだ。

「では、契約の儀式を始めます」

白金は蒼真の右手を取り、自分の額に当てた。

「我、白金は此処に誓う」

白金の声が、森に響く。

「蒼真様を我が主と仰ぎ、その剣となり、その盾となることを」

「命ある限り、主の傍らに在り続けることを」

白金の身体が光り始めた。柔らかな、銀色の光。

「さあ、蒼真様。あなたも誓いの言葉を」

「誓いの言葉……?」

「心のままに。あなたが私に求めることを、言葉にしてください」

蒼真は目を閉じた。

自分が白金に求めるもの。

それは――

「俺は、もう二度と」

蒼真は目を開き、白金を見つめた。

「大切な者を失いたくない」

「だから、お前の力を貸してくれ。俺に、守る力を」

「俺と共に戦ってくれ、白金」

白金の瞳に、涙が浮かんだ。

「はい……!」

光が爆発した。

蒼真と白金を包み込む、眩い光。

それは次第に収束し、やがて蒼真の右手の痣へと吸い込まれていった。

痣の模様が変化する。そこに、小さな狐の紋章が刻まれた。

「契約、成立しました」

白金は深く頭を下げた。

「これより私は、蒼真様の式神です」

蒼真は自分の右手を見つめた。

身体の中に、温かな力が満ちていく。それは今まで感じたことのない、確かな力。

「これが……契約の力……」

「はい。これであなたは、私を呼び出せます」

白金の姿が薄れていく。

「普段は霊体として、あなたの中に」

「おい、どこに……!」

「大丈夫です。呼べば、いつでも現れます」

白金の姿が完全に消えた。

だが蒼真には感じられた。白金の気配が、自分の中にあることを。

「呼べば……って、どうやって?」

試しに、心の中で呼びかけてみる。

『白金』

瞬間、蒼真の前に白金が現れた。

「はい、何でしょう?」

「お、おお……」

「慣れれば簡単ですよ」

白金は楽しそうに笑った。

「さあ、蒼真様。これから長い旅路です」

「旅路?」

「はい」

白金は森の奥を指差した。

「まずは、あなたの力を制御できるようになること。そして、この世界の真実を知ること」

「真実……?」

「神喰いの正体。あなたの一族の秘密。そして――」

白金の表情が、一瞬だけ暗くなった。

「やがて訪れる、世界の危機」

「世界の危機だと?」

「今は詳しく話せません。でも、いずれあなたは知ることになります」

白金は蒼真の手を取った。

「だから、強くなってください。本当の意味で」

蒼真は白金を見つめ、そして頷いた。

「分かった。やってみよう」

「では、まずは休みましょう。今日はもう遅いですし」

白金は祠を指差した。

「あそこで一晩過ごせます。明日から、訓練を始めましょう」

「訓練?」

「はい。とても厳しいですよ」

白金は悪戯っぽく微笑んだ。

「覚悟してくださいね、蒼真様」

こうして、蒼真の新たな生活が始まった。

追放された無能は、最強の式神を得た。

だが、それは同時に、過酷な運命の始まりでもあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ