全員の力
「さあ、来い」
化け物は不敵に笑った。
「お前たち全員を、喰らってやる」
「やれるものなら、やってみろ!」
刹那が最初に突撃した。
「炎龍、行け!」
刹那の式神・炎龍が、化け物に火炎を吐き出す。
だが、化け物は神器のバリアで防いだ。
「無駄だと言ったろう」
化け物が腕を振るうと、黒い波動が放たれた。
「くっ!」
刹那は吹き飛ばされる。
「刹那!」
朝霧が光の壁を作り、刹那を受け止めた。
「ありがとう、朝霧!」
「お礼は後で!」
朝霧は浄化の光を放った。
光が化け物を照らす。
「ギィ……!」
化け物がひるむ。
「今です!」
白金が氷の鎖を作り出し、化け物を縛った。
「凛太郎!」
「ああ!」
凛太郎が雷の槍を投げつける。
ドガァン!
雷が化け物に命中した。
「ぐおっ!」
化け物が膝をつく。
「よし、今のうちにバリアを!」
蒼真が神器に向かって走った。
だが――
「甘いわ!」
化け物が突然立ち上がり、蒼真に向かって黒い触手を伸ばした。
「まずい!」
蒼真は避けきれない。
触手が蒼真の身体に絡みつく。
「ぐあっ!」
「蒼真!」
厳峰が駆けつけた。
「離せ!」
厳峰は雷撃で触手を切断した。
「父上……!」
「大丈夫か、蒼真」
「はい……」
蒼真は立ち上がった。
「ありがとうございます」
「礼はいい」
厳峰は化け物を睨んだ。
「あの化け物を倒すには、バリアを破らなければならない」
「でも、どうやって……」
その時、雪乃が前に出た。
「私に、考えがあります」
「雪乃?」
「母上の形見を、兄様から預かっていました」
雪乃は封神の勾玉を取り出した。
「これは、封印の力を持つ神器です」
「もしかしたら、あのバリアを封じられるかもしれません」
「でも、危険だ」
蒼真が止めようとした。
「大丈夫です」
雪乃は微笑んだ。
「私は、母上の娘です」
「母上のように、大切な人を守りたい」
雪乃は勾玉を掲げた。
「■■■(封神の祈り)!」
勾玉が光り始めた。
そして、化け物のバリアに向かって光の線が伸びていく。
「なに……!?」
化け物が驚いた。
「バリアが……消えていく……!?」
「今です! みんな!」
雪乃が叫んだ。
「全員で、一気に!」
「おう!」
刹那が炎を纏った剣を構えた。
「いくぞ!」
朝霧が浄化の光を放つ。
「みんなを、照らします!」
白金が氷の刃を作り出した。
「私も!」
凛太郎が雷を纏った。
「父上、俺と一緒に!」
「ああ!」
厳峰も雷を練り上げた。
「銀月!」
『呼んだか、我が主よ』
銀月が姿を現した。
「みんなの力を、一つにまとめてくれ!」
『心得た』
銀月の角が輝き、全員の力を集束させ始めた。
炎、光、氷、雷、神気――
全てが一つの光となって、銀月の角に集まっていく。
「すごい……」
蒼真は驚いた。
これほどの力、感じたことがない。
「いくぞ、みんな!」
『放て!』
銀月の角から、七色の光が放たれた。
それは全員の力が融合した、究極の一撃。
「ギャアアアアアァァァァ!」
化け物は光に飲まれた。
バリアも、身体も、全てが光に溶けていく。
「馬鹿な……この俺が……!」
化け物の悲鳴が響き――
そして、消滅した。
静寂が訪れた。
「やった……のか……?」
刹那が呟いた。
「ええ」
白金が頷いた。
「妖気も、神喰いの気配も消えました」
「よかった……」
朝霧は座り込んだ。
「もう、動けません……」
「お疲れ様」
蒼真は朝霧の頭を撫でた。
「よく頑張ったな」
「蒼真様こそ……」
全員が疲れ果てて、地面に座り込んだ。
だが、その顔には満足感があった。
「やったな、兄さん」
凛太郎が笑った。
「ああ」
蒼真も笑い返した。
「みんなのおかげだ」
厳峰は神器を見つめた。
「これは……どうする?」
「元の神社に、返しましょう」
白金が言った。
「神器は、本来あるべき場所に戻すべきです」
「そうだな」
厳峰は頷いた。
「俺が、責任を持って返す」
「父上……」
「そして」
厳峰は蒼真たちを見た。
「俺は、陰陽師協会に自首する」
「父上!」
凛太郎が驚いた。
「でも……」
「当然のことだ」
厳峰は穏やかに微笑んだ。
「俺は、多くの罪を犯した」
「その責任は、取らなければならない」
「父上……」
蒼真は複雑な表情をした。
ようやく家族が和解できたのに、また離れなければならないのか。
「心配するな、蒼真」
厳峰は蒼真の肩を叩いた。
「俺は逃げない。きちんと罪を償う」
「そして、いつか――」
厳峰は家族を見た。
「もう一度、胸を張って家族の前に立てるようになる」
「はい……」
蒼真は頷いた。
「待っています」
「俺も」
凛太郎も言った。
「私も!」
雪乃も涙を流しながら頷いた。
「では、行くか」
厳峰は立ち上がった。
「青龍神社に戻ろう」
翌朝。
青龍神社では、蓮が事情を聞いていた。
「なるほど……そういうことでしたか」
蓮は深くため息をついた。
「厳峰様が、神喰いに操られていたとは……」
「申し訳ありません」
厳峰は深く頭を下げた。
「私の愚かさが、この事態を招きました」
「いえ」
蓮は首を振った。
「あなたも、被害者です」
「神喰いの力は恐ろしい。心の隙につけ込み、人を操る」
蓮は厳峰を見た。
「でも、あなたは自らの意志で、正しい道に戻った」
「それは、称賛に値します」
「蓮様……」
「ただし」
蓮は表情を正した。
「罪は罪です。協会への報告と、処分は避けられません」
「承知しています」
厳峰は頷いた。
「全てを受け入れます」
蒼真たちは、その様子を見守っていた。
「父上……」
凛太郎が呟いた。
「大丈夫だよ、凛太郎」
蒼真が弟の肩を叩いた。
「父上は、強い人だ」
「きっと、乗り越えられる」
「……ああ」
凛太郎は頷いた。
やがて、厳峰は陰陽師協会の使者と共に、都を去った。
蒼真たち家族は、父の背中を見送った。
「また会えるかな……」
雪乃が呟いた。
「会える」
蒼真は断言した。
「必ず、また会える」
三人は、父が見えなくなるまで手を振り続けた。
そして――
新たな旅が、始まろうとしていた。




