父との戦い
「行くぞ!」
蒼真が駆け出すと同時に、厳峰の配下の陰陽師たちが立ちはだかった。
「させるか!」
一人の陰陽師が炎の術を放つ。
「刹那!」
「任せろ!」
刹那が前に出て、炎を炎で相殺した。
「同じ炎使いか。面白い」
敵の陰陽師が不敵に笑った。
「お前の相手は俺だ!」
刹那と敵の陰陽師が激突した。
「朝霧!」
「はい!」
朝霧は浄化の光を放ち、敵の術を打ち消す。
「白金!」
「お任せください!」
白金は氷の刃を作り出し、敵陰陽師たちを牽制した。
「蒼真様、凛太郎様! お二人は厳峰様を!」
「ああ!」
蒼真と凛太郎は、厳峰に向かって走った。
「無駄だ」
厳峰は印を結んだ。
「■■■(天罰の雷)!」
厳峰の手から、強力な雷撃が放たれた。
「くっ!」
蒼真は横に飛んで避ける。
雷は地面を抉り、石を砕いた。
「父上の力……こんなに強かったのか……」
凛太郎が呟いた。
「ビビってる場合じゃない!」
蒼真は霊力を短刀に込めた。
「行くぞ、凛太郎!」
「ああ!」
二人は左右から厳峰に迫った。
「■■■(雷神の槍)!」
凛太郎が雷の槍を投げつける。
「■■■(神殺しの刃)!」
蒼真が黄金の斬撃を放つ。
だが――
「甘い」
厳峰は両手を翳し、二人の攻撃を同時に防いだ。
「まだまだだな、お前たちは」
厳峰は二人を弾き飛ばした。
「ぐあっ!」
蒼真と凛太郎は地面に転がった。
「父上……強すぎる……」
凛太郎が呻いた。
「くそ……」
蒼真は立ち上がった。
このままでは勝てない。
だが――
「諦めるな、凛太郎」
蒼真は弟に手を差し伸べた。
「俺たち二人なら、勝てる」
「兄さん……」
凛太郎は蒼真の手を取った。
「……ああ。やろう」
二人は再び立ち上がった。
「何度来ても同じだ」
厳峰は冷たく言った。
「お前たちでは、俺に勝てん」
「それは、どうかな」
蒼真は右手を凛太郎の肩に置いた。
「凛太郎、俺の霊力を流す。受け止めろ」
「え?」
「いいから!」
蒼真は自分の霊力を、凛太郎に流し込んだ。
黄金の光が、蒼真から凛太郎へと流れていく。
「これは……兄さんの霊力……!」
凛太郎の身体が光に包まれた。
「すごい……こんなに強い霊力……」
「今だ! お前の雷と、俺の光を合わせろ!」
「分かった!」
二人は同時に手を翳した。
「「合体術式――」」
黄金の光と、青白い雷が螺旋を描いて混ざり合う。
「「天雷神光撃!」」
二人の力が融合し、一条の巨大な光の槍となって放たれた。
「なに!?」
厳峰は驚愕した。
光の槍が厳峰を貫く。
「ぐあああああっ!」
厳峰は膝をついた。
「やった……?」
凛太郎が息を切らした。
だが――
「まだだ……」
厳峰は立ち上がった。
傷ついているが、まだ戦える。
「流石は、俺の息子たちだ」
厳峰は口元に血を滲ませながら、笑った。
「だが、まだ足りん」
厳峰は神器に向かって手を伸ばした。
「儀式を、完成させる」
「させるか!」
蒼真が駆け出した。
だが、間に合わない。
厳峰の手が、神器に触れる――
その瞬間。
「父上、止まれ!」
別の声が響いた。
祠の入口に、一人の少女が立っていた。
「雪乃……!?」
蒼真と凛太郎は驚いた。
妹の雪乃が、そこにいた。
「雪乃、なぜここに……」
厳峰も驚いている。
「父上を止めるために来ました」
雪乃は涙を流していた。
「お願いです、父上。これ以上、間違ったことをしないでください」
「雪乃……」
厳峰の表情が、わずかに揺らいだ。
「お前には、分からんのだ」
「分かります!」
雪乃は叫んだ。
「父上は、母上を失ってから、ずっと苦しんでいた」
「神喰いに殺された母上を思って、神々を憎んでいた」
「それは……」
厳峰の顔が歪んだ。
「母上は、神喰いのせいで死んだんじゃありません!」
雪乃は懐から、一通の手紙を取り出した。
「これは、母上が残した遺書です」
「遺書……?」
蒼真は驚いた。
雪乃は手紙を読み上げた。
「『愛する夫へ。私がこの世を去る時、あなたは私を神喰いのせいだと思うでしょう』」
「『でも、それは違います』」
「『私は、蒼真を守るために、自らの命を使ったのです』」
「なに……」
厳峰の顔色が変わった。
「『蒼真の中には、神殺しの力が眠っています』」
「『その力は、あまりに強大で、制御を誤れば蒼真自身を殺してしまう』」
「『だから私は、封印の術を使いました』」
「『私の命と引き換えに、蒼真の力を封じました』」
雪乃の声が震えた。
「『どうか、蒼真を憎まないでください』」
「『彼は何も悪くありません』」
「『そして、どうか神を憎まないでください』」
「『全ては、私の選択です』」
雪乃は手紙を握りしめた。
「母上は、父上が神を憎むことを、一番恐れていました」
「だから……だからお願いです、父上」
雪乃は厳峰に向かって土下座した。
「儀式を、止めてください」
静寂が流れた。
厳峰は動かなかった。
ただ、手紙を見つめていた。
「母上……」
厳峰の目から、涙が零れた。
「お前は……そんなことを……」
厳峰は膝をついた。
「俺は……俺は何を……」
厳峰の身体が震えた。
「許してくれ……許してくれ……」
厳峰は泣き崩れた。
蒼真は、父のそんな姿を初めて見た。
「父上……」
蒼真は父に近づいた。
「俺も、知りませんでした」
「母上が、俺のために……」
蒼真も涙を流した。
「でも、父上を恨んでいません」
「父上も、苦しんでいたんですね」
「蒼真……」
厳峰は息子を見た。
「すまない……本当にすまない……」
厳峰は蒼真を抱きしめた。
「お前を追放したのは……お前を守るためだった」
「神殺しの力が覚醒すれば、様々な者に狙われる」
「だから、遠ざけようと……」
「でも、それは間違っていた……」
厳峰は謝罪した。
「許してくれ……蒼真……」
蒼真は父を抱きしめ返した。
「はい……父上……」
凛太郎と雪乃も、二人に駆け寄った。
家族四人は、涙を流しながら抱き合った。
長い誤解が、ようやく解けた瞬間だった。
その時。
「感動的だな」
冷たい声が響いた。
「だが、儀式は続行する」
厳峰の配下の一人が、神器に手を伸ばした。
「貴様……!」
厳峰が叫んだ。
「俺は儀式を止めると言ったはずだ!」
「ええ、あなたはね」
男は不気味に笑った。
「でも、我々の計画は変わらない」
男の身体が変化し始めた。
黒い霧が噴き出し、人間の姿が崩れていく。
「まさか……神喰い……!?」
白金が叫んだ。
「そうだ。我々は、神喰いに支配された者たち」
男は完全に化け物の姿になった。
「この世界を、神喰いの世界にするために」
「我々は動いていた」
「厳峰など、ただの駒に過ぎん」
化け物は神器を掴んだ。
「さあ、儀式を完成させる」
「させるか!」
蒼真が駆け出した。
だが、化け物は神器の力を使い、バリアを張った。
「無駄だ!」
バリアが蒼真を弾き飛ばす。
「くそ……!」
「蒼真!」
白金、朝霧、刹那、凛太郎、雪乃が駆け寄った。
「みんな……」
「諦めるな、蒼真様」
白金が言った。
「私たち全員の力を合わせれば……」
「そうだ!」
刹那が拳を握った。
「俺たち、仲間だろ!」
「一緒に戦いましょう」
朝霧が微笑んだ。
「兄さん」
凛太郎が蒼真の肩を叩いた。
「俺も、力を貸す」
「兄様」
雪乃も頷いた。
「私にも、できることがあるはずです」
蒼真は仲間たちを見た。
そして――
厳峰も、立ち上がった。
「俺も、戦わせてくれ」
「父上……」
「俺の愚かさが招いた事態だ」
厳峰は蒼真の隣に立った。
「責任を取らせてくれ」
蒼真は父を見て、頷いた。
「はい」
全員が、化け物に向かって構えた。
「行くぞ、みんな!」
「おう!」
「はい!」
「ええ!」
仲間たちの声が重なった。
最後の戦いが、今、始まる。




