表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能と追放された陰陽師の俺が、古代神族の力で成り上がる  作者: アイザワ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/26

鬼門の森

三日後。

蒼真は「鬼門の森」と呼ばれる、深い森の入口に立っていた。

荷物は一つの袋だけ。中には着替えと、わずかな食料、そして母の形見の守り袋。

「ここから先は、誰も来ない……」

鬼門の森は、都から北東に位置する禁足地だ。

強力な妖怪が住み着き、迷い込んだ者は二度と戻らぬという。陰陽師でさえ、むやみに近づかない場所。

だからこそ、蒼真には相応しい。

「どうせ生きていても、誰の役にも立たない。ならここで、静かに……」

その時だった。

「――助けて!」

森の奥から、か細い声が聞こえた。

少女の声だ。

「……くそっ!」

蒼真は迷わず、森に駆け込んだ。

無能だ、役立たずだと言われ続けた。それでも、目の前で人が死ぬのを見過ごすことはできない。

森の中は昼なお暗い。木々が鬱蒼と茂り、太陽の光を遮っている。地面には濃い妖気が漂い、まるで毒を吸っているような息苦しさがあった。

「どこだ……!」

蒼真は声のする方へ走る。

枝が顔を叩き、根が足を取る。だが構わず前進すると――

小さな祠の前で、一人の少女が巨大な妖怪に襲われていた。

「うわぁぁぁ!」

少女は十歳ほどだろうか。白い着物を着た、黒髪の少女だ。

そして彼女を襲っているのは――

「猪羅か……!」

三メートルはある巨大な猪の妖怪。その牙は鋭く、蹄は岩をも砕く。中級の妖怪として知られる、危険な存在だ。

「おい、そこから離れろ!」

蒼真は腰の短刀を抜き、猪羅に向かって走った。

自分に霊力はない。だが、剣術だけは誰にも負けないつもりだった。式神が使えない分、せめて自分の身は自分で守れるようにと、朝から晩まで鍛錬を続けてきた。

「はぁっ!」

蒼真の短刀が、猪羅の横腹を切り裂く。

「グルルル……!」

だが浅い。妖怪の皮膚は硬く、普通の刃ではほとんど傷つかない。霊力を込めた武器でなければ、妖怪には通用しないのだ。

「ちっ……!」

猪羅が振り向き、蒼真に突進してくる。

「うおっ!」

蒼真は横に飛び、何とか避ける。だが猪羅はすぐに向きを変え、再び突進してきた。

「しつこいな……!」

だが、少女を守るには、自分が囮になるしかない。

「おい、今のうちに逃げろ!」

蒼真は少女に叫んだ。

だが少女は動かない。恐怖で固まっているのか、それとも怪我をしているのか。

「くそっ……!」

猪羅の突進を避けながら、蒼真は必死に考える。

どうする? どうすればいい?

霊力はない。強力な武器もない。だが、このままでは少女が――

「間に合わない……!」

猪羅が少女に向かって突進した。

蒼真は迷わず、少女の前に飛び込んだ。

「やめろぉっ!」

猪羅の蹄が、蒼真の背中に迫る。

死ぬ。

そう思った瞬間――

「■■■■■(目覚めよ、我が力)」

蒼真の口から、聞いたことのない言葉が零れた。

それは自分の意思ではなかった。まるで、身体の奥底から這い出してきたような、古い、古い言葉。

右手の甲の痣が、激しく発光した。

黄金の光が爆発し、猪羅の巨体を吹き飛ばす。

「グギャァァァ!」

猪羅は十メートルも吹き飛び、木に激突して動かなくなった。

「な、何が……」

蒼真は呆然と、自分の右手を見つめた。

痣から、黄金色の霊力が溢れ出ている。まるで太陽のような、圧倒的な力。

「これが……俺の……?」

「やっと」

背後から、声がした。

「やっと、目覚めてくれたのね」

蒼真が振り返ると、少女が立ち上がっていた。

だがその姿は――変わっていた。

白銀の髪、琥珀色の瞳、そして背中から伸びる、九本の白い狐の尾。

「え……」

「初めまして、我が主」

少女――いや、狐の妖怪は、優雅に一礼した。

「私は稲荷明神様の眷属、白金と申します」

「眷属……? 稲荷明神の……?」

蒼真の頭が追いつかない。

「あなたこそが、私が長い間待ち続けた御方」

白金は蒼真に近づき、その右手を取った。

「『神殺し』の力を継ぐ者――」

痣が、再び光る。

「我が真の主となるべき御方」

白金の瞳が、まっすぐ蒼真を見つめた。

「さあ、契約を。私を、あなたの式神に」

「待て、待て! 何を言って……」

「分からないのも無理はありません」

白金は微笑んだ。

「でも、もう大丈夫。あなたは一人じゃない」

「私が、全てを教えて差し上げます」

蒼真の人生が、この瞬間から大きく動き出す。

追放された無能は、実は世界最強の力を秘めていた。

そして今、最初の契約が結ばれようとしている。

物語は、ここから始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ