表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能と追放された陰陽師の俺が、古代神族の力で成り上がる  作者: アイザワ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/26

満月の夜

翌日の夕暮れ。

蒼真たちは、疾風宮に到着していた。

都の西部にある、風神を祀る小さな神社だ。境内は静かで、夕日が長い影を落としている。

「まだ誰も来てないな」

刹那が周囲を見回した。

「凛太郎って奴、本当に来るのか?」

「来るはずだ」

蒼真は鳥居の前に立った。

「あいつは、嘘をつくような奴じゃない」

蒼真の声には、複雑な感情が混じっていた。

弟。かつては仲が良かった。だが今は――

「蒼真様」

白金が蒼真の袖を引いた。

「来ます」

鳥居の向こうから、凛太郎が現れた。

彼の後ろには、二人の陰陽師が従っている。

「来たか」

凛太郎は蒼真たちに近づいた。

「こちらは、俺の部下だ」

二人の陰陽師が頭を下げた。

「よろしく頼む」

「こちらこそ」

蒼真は軽く会釈した。

凛太郎は境内を見渡した。

「では、配置を決めよう」

凛太郎は地面に簡単な見取り図を描いた。

「社殿の前に俺と部下二人。東側に蒼真たち」

「西側と北側は?」

「西は青龍神社の陰陽師が、北は朱雀院の陰陽師が守る」

凛太郎は図を指差した。

「四方を固めれば、犯人は逃げられない」

「逃げ道を塞ぐってことか」

「ああ」

凛太郎は立ち上がった。

「ただし、相手がどれほど強いか分からない。無理はするな」

凛太郎は蒼真を見た。

「特にお前。まだ若いんだ、死ぬなよ」

「……ああ」

蒼真は小さく頷いた。

弟からの言葉。それが妙に胸に刺さった。

日が沈み、夜が訪れた。

満月が、神社を青白く照らしている。

蒼真たちは、境内の東側に隠れて待機していた。

「静かですね……」

朝霧が小声で言った。

「ああ」

蒼真は神経を研ぎ澄ませていた。

風の音、木々の揺れ、虫の鳴き声。

全てに注意を払う。

「本当に来るのか?」

刹那が不安そうに呟いた。

「来る」

白金が断言した。

「妖気を感じます。近づいています」

その言葉と同時に――

境内に、突然黒い霧が立ち込めた。

「来たか……!」

蒼真は短刀を構えた。

霧の中から、複数の人影が現れた。

それは――人間ではなかった。

全身が黒い布で覆われ、顔も見えない。まるで影のような存在。

「あれは……」

「影の化け物……!」

白金が叫んだ。

「楓の町で戦ったのと、同じ種類です!」

「なん……だと……!?」

蒼真は驚愕した。

あの影が、ここにも。

「ということは、あの事件と繋がっているのか……?」

考える暇はなかった。

影たちが、一斉に社殿に向かって突進した。

「させるか!」

凛太郎が叫んだ。

「■■■(天雷召喚)!」

凛太郎の手から、雷が放たれた。

それは影の一体を貫く――はずだった。

「なに!?」

雷は影をすり抜けた。

「物理攻撃は効かない!」

蒼真が叫んだ。

「こいつらには、神聖な力か神獣の力が必要だ!」

「神獣……!?」

凛太郎は驚いた。

だが、考えている暇はない。

影たちは次々と社殿に侵入していく。

「くそっ!」

凛太郎は社殿に駆け込んだ。

「朝霧!」

「はい!」

朝霧が浄化の光を放った。

光が一体の影を照らす。

「ギィィ!」

影が苦しそうに身を捩った。

「効いてる!」

「刹那、今だ!」

「おう!」

刹那が炎の剣で影を斬りつけた。

光で弱った影は、今度は攻撃を受け入れた。

「やった!」

だが、影は五体いた。

「数が多い……!」

「銀月!」

『呼んだか、我が主よ』

銀月が姿を現した。

神獣の威圧感が、影たちを怯ませる。

「銀月、あいつらに光を!」

『心得た』

銀月の角が輝き、神聖な光が放たれた。

三体の影が、光に照らされて悲鳴を上げる。

「白金!」

「はい!」

白金が氷の槍を作り出し、影たちに投げつけた。

光で弱った影は、次々と倒されていく。

だが――

残り二体は、既に社殿の中に入っていた。

「まずい!」

蒼真は社殿に飛び込んだ。

中では、凛太郎が影と戦っていた。

だが、物理攻撃が効かず、苦戦している。

「くそ、どうすれば……!」

「凛太郎、下がれ!」

蒼真が叫んだ。

「お前!?」

蒼真は霊力を短刀に込めた。

黄金の光が刃を包む。

「はああっ!」

蒼真の斬撃が、影を両断した。

「な……」

凛太郎は呆然と蒼真を見た。

「お前、今の……」

説明している暇はなかった。

最後の一体が、祭壇に向かっている。

「させるか!」

蒼真は影に追いつき、その背中を斬った。

影が消滅する。

「はぁ……はぁ……」

蒼真は息を整えた。

祭壇を見ると、風の神器『疾風の羽根』が無事に残っていた。

「守れた……」

だが、安堵したのも束の間。

「まだだ」

低い声が響いた。

社殿の奥、暗闇の中から、一人の人影が現れた。

それは――人間だった。

黒いローブを纏い、フードで顔を隠している。

「よくやったな、陰陽師ども」

男の声だった。

「だが、無駄だ」

男が手を翳すと、空気が歪んだ。

「なに……!?」

蒼真と凛太郎は警戒した。

「■■■(虚空召喚)」

男の詠唱と共に、空間に亀裂が走った。

その亀裂から――巨大な腕が現れた。

黒く、不定形の腕。それは神器に向かって伸びてくる。

「させるか!」

蒼真と凛太郎は同時に斬りかかった。

だが、腕は二人を弾き飛ばした。

「ぐあっ!」

二人は壁に叩きつけられた。

腕は神器を掴み、亀裂の中に引き込んでいく。

「くそ……!」

蒼真は立ち上がろうとしたが、身体が動かない。

「残念だったな」

男は神器を手に入れ、満足げに笑った。

「これで、四つ揃った」

「四つ……!?」

凛太郎が叫んだ。

「まさか、お前……他の神器も!?」

「当然だ」

男はローブの中から、三つの神器を取り出した。

浄化の玉、炎の羽、水の盾。

「これで、全て揃った」

男は四つの神器を掲げた。

「さあ、始めよう。『封神の儀式』を」

「封神……!?」

蒼真は愕然とした。

封神の儀式。それは、神を封じる禁断の術。

「まさか……お前、何をするつもりだ!」

「知りたいか?」

男はフードを脱いだ。

その顔は――

「あなたは……!」

白金が驚愕の声を上げた。

男の顔は、蒼真も見覚えがあった。

「天御柱……厳峰……!?」

それは、蒼真の父だった。

「父上……なぜ……!?」

凛太郎も驚いている。

厳峰は冷たく笑った。

「驚いたか、凛太郎」

「父上、一体何を……!」

「これから、この世界を変える」

厳峰は神器を掲げた。

「神など、もはや必要ない。人間が、自らの力で生きる世界を作る」

「そのために……神を殺す」

蒼真は信じられなかった。

父が、こんなことを企んでいたとは。

「父上……」

凛太郎の声が震えている。

「なぜ、こんなことを……」

「お前には分からんだろう」

厳峰は冷たく言った。

「だが、これは必要なことだ」

厳峰は空間の亀裂に飛び込んだ。

「待て!」

蒼真は追いかけようとしたが、亀裂はすぐに閉じた。

静寂が訪れた。

「くそ……逃げられた……」

蒼真は拳を握った。

凛太郎は、呆然と立ち尽くしていた。

「父上が……なぜ……」

凛太郎の目から、涙が零れた。

蒼真は、弟の姿を見て胸が痛んだ。

自分も同じだった。三年前、追放された時と同じ。

信じていた者に裏切られる痛み。

「凛太郎……」

蒼真は弟に近づこうとした。

だが、その時――

凛太郎が蒼真を睨んだ。

「お前……」

凛太郎の瞳が、蒼真の顔を捉えた。

「お前、まさか……蒼真兄さん……?」

蒼真の心臓が止まった。

バレた。

「……ああ」

蒼真は覚悟を決めた。

「俺だ。久しぶりだな、凛太郎」

凛太郎は、驚愕と混乱の表情を浮かべた。

「なぜ……なぜここに……!?」

「話せば長くなる」

蒼真は弟を見つめた。

「でも、今は……父上を止めなきゃいけない」

凛太郎は何も言えなかった。

兄の再会。父の裏切り。

あまりに多くのことが、一度に起きすぎた。

「凛太郎」

蒼真は弟の肩を掴んだ。

「俺と一緒に来い。父上を止めよう」

凛太郎は蒼真を見た。

そこには、かつて知っていた兄の姿があった。

だが、以前よりも強く、逞しくなった兄が。

「……分かった」

凛太郎は頷いた。

「一緒に、父上を止める」

二人の兄弟は、拳を合わせた。

因縁の再会は、こうして果たされた。

そして、物語は新たな局面を迎える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ