4.魔法の国へ
魔女のポケットに入れられたアサコちゃんはたずねました。
「あたしをどこまで連れて行く気」
すると魔女は空を飛びながら、こんなことを言います。
「あたしの家は魔法の国にあるんだよ。そこに入ったことのある人間には生きて出た者はいないんだ。つまり、あんたの場合、本物の魔女にならなくっちゃ、魔法の国から出ることはできないっていうわけさ」
ああ、なんということでしょう。はたして、アサコちゃんは本当に、魔女になってしまうのでしょうか。それとも一生、魔女にもなれずに、体が小さくなったまま、魔法の国から出られずに終わるのでしょうか。アサコちゃんは必死になって魔女に頼みました。
「お願い。あたし、魔女になんかなりたくないの。今日の魔法はほんのいたずら程度にやったことなのよ。魔女になりたいわけじゃないの。だから、早く、家に帰して」
「そういうわけにはいかないんだよ。さっきも言ったけど、あたしの娘が魔女の仕事をつぐ気はないなんて言い出したものだから、仕方なくあんたをさらったんだ。だけど、本当に、この世界中で、あたしの娘のほかに見どころのあるやつは、あんただけなんだよ。だってあんた、魔法が使えたらいいなって願ったんだろう?」
アサコちゃんは魔女のポケットのなかから、下に落ちないように身を乗り出しました。
「たしかにそう思ったわ。魔法が使えたらいいなって願ったわ。だけど魔女になりたいとは、一度も考えたことありません」
だいたい、とアサコちゃんは言葉を続けます。
「だいたい、いくらあなたの娘さんが仕事をついでくれないからって、人間をさらって魔女にするなんて、勝手だわ」
そう言われても魔女はおかまいなしです。
「なんとでも言いな。あたしはもう決めたんだから。その代わり、必ず、あんたのことを立派な魔女にしてみせるよ」
いつしか空は真っ暗になっていました。辺りは不気味な気配をただよわせて、森の上にさしかかった魔女とアサコちゃんを魔法の国へといざなうようです。暗い地上からはフクロウの鳴き声がちらほら聞こえてきます。それらの声にみちびかれるように、魔女は、小さくなったアサコちゃんをポケットに入れたまま、さらに森の奥深く目指して飛んでいくのでした。
アサコちゃんはふと、家にいるお父さんとお母さんのことを考えました。今ごろ、ふたりは、お坊さんと、おばあさんのようになったままのはずです。アサコちゃんは自分のこともさることながら、お父さんとお母さんのことも心配になってきたのでした。




