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9 ティナリアの思い

 ティナリアは小さい(ころ)からずっとルイと一緒に過ごしてきました。

 はじめて声をかけた時は、「海の底の魔女の孫」だと遠巻きにされて一人で過ごしているルイが気になったからでした。

 でも、ルイは他の人魚たちに遠巻きにされていることは別に苦痛になっていなかったみたいです。ルイは大人(おとな)しい性格の男の子でした。そして優しいので、ティナリアが話しかければ相づちを打ってくれるし、「一緒に来て」と言えば(いや)そうにしながらも付き合ってくれます。

 いつの間にか、ルイと一緒に過ごすのが当たり前になっていました。

 周りの人魚たちもティナリアとルイはセットだと考える人が多く、一人で居ると「あれ、ルイ君は?」と聞かれるほどでした。

 なので、今回人間のお祭りに行くのも当然ルイを(さそ)いました。

 嫌そうにしながらも、ルイもお祭りを楽しみにしてくれているのは分かったので、二人で存分に楽しむ予定で、陸にやって来ました。


 そこで溺れてケガをしたローズマリーと出会い、ルイが人魚の力で助けました。

 そのとき、ティナリアはふと「なんだか『人魚姫の物語』に似てるな」と思ったのです。

『人魚姫の物語』とは男女の配役が逆になっていますが、ルイがローズマリーに一目惚(ひとめぼ)れしてしまったのでは? と思ってしまいました。

 ルイが助けたローズマリーはとても可愛らしい女の子でした。女のティナリアからみても可愛いと思うのです。男の子が見たらもっと可愛く見えるに(ちが)いありません。

(もし、ルイがローズマリーさんを好きになってしまってたら……)

 ティナリアは、何だかもやもやとした気持ちになってしまいました。

『人魚姫の物語』の人魚姫は声が出なかったので、自分が王子さまを助けたことも、自分の気持ちも伝えることができませんでした。でも、ルイは声が出ます。もし出なくても、一緒に人間の文字を覚えたので、書いて伝えることも出来ます。

 いつも一緒だと思っていたルイの(となり)に居るのが、自分ではない他の女の子になるかもしれない。そう思うと、どうしてか分かりませんが気分が(しず)んできてしまいました。

 だから、ついそのまま「ローズマリーさんに恋してしまった」のか聞いてしまったのです。

 それに対するルイの反応は、何でそんな事聞くんだろう? と不思議そうな表情で、ローズマリーに恋をしたような感じはありませんでした。

 そのルイの反応を見て、ティナリアは自分がルイの隣に居ても良いのだと安心したのです。


 “いつも一緒が当たり前”

 ティナリアの中で、ローズマリーとの出会いは、その考えを少し考えさせられる出来事でした。

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