表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/22

7 お祭り

 少年に案内され、ティナリアとルイはお祭り会場に向かいます。

 砂浜(すなはま)から木々の()(しげ)った林を()けて、しばらく歩いていくと、家やお店が見えてきました。

 海の中からも人間の家やお店は見える場所もありましたが、こんなに間近で見るのはティナリアもルイも初めてです。 

 拾った紙に(えが)かれていたみたいに、色とりどりな(かざ)りや、花が至るところに飾られています。

 すれ(ちが)う人の数も少しずつ多くなってきました。

「キレイだねぇ」

 キョロキョロと色々なものを目で追いながらティナリアは楽しそうに目をキラキラさせています。

「この道を()()ぐ行ったら、お祭りのメイン会場ですよ」

 少年は大通りの近くまで案内すると、二人に頭を下げて、来た道を帰っていきました。


 ティナリアは、ルイの手を引っ張って「早く早く」と()かします。

(あわ)てなくても、まだ時間はあるよ」

 ルイは苦笑(くしょう)しながら、ティナリアに引っ張られながら歩いています。

「もしかして、体が(つら)いの?」

 いつもよりも元気がないルイに、ティナリアは心配そうな表情になりました。ルイは体調が悪くても全く表情に出ません。ルイの両親すら気がつかないことが多いのですが、ティナリアには昔から分かってしまうようでした。

「少しだけだよ。大丈夫」

 ルイはローズマリーを助けるために人魚の力を使いました。普段(ふだん)なら何ともないのですが、人間の姿で使ったことで普段よりも体力を消耗(しょうもう)してしまったみたいです。

「ティナリアが変に走り回らないで、僕の近くに居てくれれば、問題ないよ」

 興味の向くままに走り回るティナリアを追いかけるのは、流石(さすが)(つか)れそうなので勘弁(かんべん)して()しいと暗に告げます。

「わかった。出来(でき)るだけルイの側から(はな)れないわ。出来るだけ」

「出来るだけ」を二回も言うティナリアに、ルイは小さく笑ってしまいました。それに、絶対離れないとは言わないのが、ティナリアの正直なところでしょう。

「まあ、もう少ししたら体力も(もど)るから、そしたら普段通りで良いよ」

 結局、ルイは幼馴染(おさななじ)みのティナリアに(あま)いのです。「普段通りで良い」ということは「ティナリアの行動に()(まわ)されても良い」と言うことですから。

 それに、せっかくお祭りに来たのですから、楽しみたいのはルイも同じでした。

 ティナリアに付き合う感じで、仕方なしに陸に来たように見えますが、本当に嫌だったら絶対断っていたと思います。

(ティナリアが来たいって言わなければ陸に来ることはなかっただろうけど、僕も少しは興味があったんだよね)

 ティナリアと一緒に人間の文字を習い、人間の世界を知るうちに、ルイもティナリア(ほど)ではありませんが、興味を持っていたのです。

 だから、もう少し体力が戻ったら、いつものようにティナリアに振り回されながら、人間のお祭りを楽しむ予定のルイでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ