21 エピローグ
本編最終話です。
ティナリアとルイは、少し休憩したあと、また会場に戻って踊りました。
「今夜の舞踏会で、一番輝いていたのは君たちだね」
ローズマリーと一緒に近付いてきたヒューリックが、面白そうに言います。
たしかに、いつの間にかティナリアとルイの周りには人が集まって来ていました。海の中と同じように自由に踊り舞うティナリアと、それに戸惑うことなく合わせられるルイに、みんなは驚き、そして「すごい」と感動してくれているのです。
「とくに、最後の二曲のダンスはとても良かったよ。まるで二人の世界みたいだった」
最後の二曲は、ティナリアとルイが休憩から戻ったあとーーつまり、幼なじみから恋人になってから踊ったダンスです。
元々、いつも一緒で距離感も近かった二人なので、「恋人」という関係になっても普段と変わっていないと思っていました。
「うーん、嬉しいとか、幸せって気持ちが出ちゃったのかな?」
ティナリアが、少しだけ照れたように言います。
「なにか、嬉しいことがあったのですか?」
ローズマリーが首を傾げて可愛らしく尋ねます。
「えへへ、実はね、ルイと恋人になったんだ」
ティナリアはルイの腕に抱きつくと、嬉しそうな笑顔で言いました。ルイは横を向いていますが、耳が少し赤くなっていて、照れているのが分かります。
「まあ! それは、おめでとうございます!!」
「おめでとう、二人とも」
ローズマリーとヒューリックは、二人に祝福の言葉を送りました。
ローズマリーとヒューリックも、気持ちがスレ違い、ギクシャクしていたのが嘘のように、幸せそうに腕を組んでいます。
「君たちに出会わなかったら、ローズマリーに気持ちが伝えられなかったかもしれない。とても感謝しているんだ。もし良かったら、これからも仲良くさせてもらいたいな。友達になって欲しい」
ヒューリックがルイに手を差し出します。
「僕たちこそ、あなたたちに会えて良かった」
陸のお祭りを見るために海から上がってきただけなのに、いつの間にかお城の舞踏会に参加することになりました。
ローズマリーやヒューリックに出会って、二人の仲を良くしようと思ったからこそ、ティナリアからプロポーズのような告白を受けることになったと言っても良いでしょう。
いつかはルイからティナリアに伝えようと思っていた言葉は、予想よりも早く本人に伝えることになってしまいました。
でも、それは悪いことじゃなくて、良いことでした。
ルイはヒューリックの手を握り返します。
人魚と人間。
種族は違いますが、こうやって友情を育むこともできました。
人間になる薬を飲んでも声を失うことはありませんでしたが、人間の文字を覚えたからこそ、この関係を作ることが出来たのです。
ティナリアとルイは人間の文字を覚えて良かったと思いました。
ー完ー
海の世界から陸に遊びに行く➡️冒険だよね!ということで、企画に参加させて貰いました!
ティナリアのように、自分の気持ちをそのまま言葉で表現できる人もいます。
逆に、ヒューリックのように、気持ちを言葉にするのが苦手だったり、相手を前にすると素直になれなかったりする人もいるでしょう。
私も、言葉にするのは苦手なタイプです。
話をしているときには良い言葉が浮かばず、後になって「あの時、こう言えば良かったなぁ」なんて思うことは、日常的にあります。
皆さんも、自分の気持ちを、どうやったら相手に伝えることができるのか……他人と関わっていると、悩むことがたくさんあると思います。
そんな時は、伝える方法変えてみるのも良いかもしれません。言葉や文字以外にも、伝える方法はあると思います。
伝わらないから諦めるのではなく、ぜひ、自分や相手にあった方法で気持ちを伝えてみてください。
児童文学なので、小学生(高学年)~中学生が楽しく読める内容で書くように勤めましたが、大人にも読んでもらいたい、そんな想いを込めて、この物語を書きました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。あと1話番外編がありますので、お楽しみ下さい。




