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人魚姫ティナリア  作者: 佐倉穂波


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19/22

19 舞踏会

 すぐにお城のお医者さんが呼ばれ、ローズマリーは診察を受けることになりました。

「ルイの詩で(いや)したから、きっと大丈夫だよね」

 こそっとティナリアがルイに言います。

 ローズマリーの体は、人魚の力で癒したので、元の健康な状態になっているはずです。

 すぐに診察は終わりました。

 お医者さんから、舞踏会に参加しても大丈夫だと返事をもらえて、ローズマリーはとても(うれ)しそうに笑っていました。 


 舞踏会が始まる時間まで、あと少しだったので、ローズマリーは大忙しで着替えたり、髪を結ったりして貰っていました。

 薄桃色のドレスに身を包んだローズマリーは、まるでお花の妖精のように可愛らしい姿でした。

 ローズマリーはヒューリックにエスコートされて舞踏会の会場に入ります。

 ずっと昔から楽しみにしていた、ヒューリックのエスコートです。見ている者も幸せになれるような、そんな笑顔を浮かべています。

 それは、ヒューリックの表情もでした。ローズマリーのことを(いと)おしそうに見つめています。

「これからは、ちゃんとローズに自分の気持ちを伝えられるように努力するよ」

 そうヒューリックは、ローズマリーに約束しました。

 一度自分の気持ちを伝えることが出来たことで、素直な態度や言葉を伝えられるようになったのです。

「わたしもですわ。いかにヒューリックさまの事が好きか伝えていきます」

 ローズもヒューリックに約束します。

 きっとこれからは、気持ちがスレ違うことなく、二人仲良く過ごせることでしょう。


 ティナリアとルイも、せっかくなので予定通り舞踏会に参加することにしました。

 ティナリアは体の形に沿った水色と白のドレスで、膝から下はふわっと広がっています。人間の世界ではマーメイドドレスと呼ばれているらしく、人魚のティナリアにとても似合っています。

 ルイもヒューリックから借りた舞踏会用の衣装を着ています。

 ルイは、コンテストに優勝したティナリアの付き添いのような感じでの参加なので、そんなに着飾らなくて良いと思っていました。なんなら、会場のすみっこでひっそりと過ごしたいと思っていました。

 なので、ヒューリックが自分の衣装を用意すると申し出たときに、断ろうとしました。しかし、ティナリアに「私のエスコートしてくれないの?」と言われ、断る言葉を飲み込むことになりました。

 確かに、ティナリアをエスコートするのはルイしか居ないでしょう。

 エスコートの方法は本でしか見たことがありませんが、ヒューリックや他の参加者の様子を見ながら、ルイはティナリアをエスコートして会場に入りました。

 お祭りに来ただけなのに、お城の舞踏会に参加することになるなんて、海から出たときは想像にもしていませんでした。


 舞踏会の会場は、お祭りの会場以上のキラキラに包まれた場所でした。

 色々見て回りたそうなティナリアがフラフラとどこかに行かないように、ルイは手を握ります。すると、ティナリアは嬉しそうに笑ってルイの手をキュッと握り返しました。

 王様っぽい人のあいさつが終わると、音楽が流れ始めます。

 音楽に合わせて踊る人たちもいれば、談笑する人たちもいます。

 向こうの方で、ヒューリックとローズマリーが幸せそうに見つめ合いながら踊っているのが見えました。

「ねえ、せっかくだから私たちも踊ろうよ」

 ティナリアがルイの手をクイッと引っ張ります。ちょうど、ゆったりとした音楽から、テンポの速い陽気な音楽に変わりました。

「いいよ」

 ティナリアは踊ることが好きなので、きっと踊ることになるだろうなと予想はしていたルイです。断る理由もありませんでした。

 といっても、ダンスを習ったことは二人ともありません。ティナリアは音楽に合わせて気の向くままに自由に踊り、それにルイが合わせます。

 ドレスに付いている宝石が、ティナリアの動きに合わせて光を反射し、キラキラと輝きます。まるで海の白い泡のようです。

 ルイはふと「人魚姫の物語」の人魚姫が海の泡になって消えたことを思い出しました。しかし、ティナリアは物語の人魚姫のように消える性格じゃないよねと思います。

 声が出ないなら、人間の文字を覚えればいいのだと、解決する方法を考える女の子なわけですから。


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