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人魚姫ティナリア  作者: 佐倉穂波


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10/22

10 お花のコンテスト

「楽になってきたから、そろそろ大通り広場に行ってみようか」

 ベンチで冷たいジュースを飲んで、体調が良くなってきたルイは、立ち上がるとティナリアに手を差し出しました。

 一瞬(いっしゅん)キョトンとした表情を見せたティナリアが、(うれ)しそうにルイの手を取り立ち上がります。

「うん! 行こう」

 そしてルイを引っ張るように、大広場に向かって歩き始めました。

 ルイの体調が良くなったのなら、いつも通りのティナリアに(もど)ります。さっきまでは、いつもより大人しくしていたので、きっと気持ちも()()んでしまったに違いありません。

 少しモヤモヤとしていた気持ちも、ルイが手を(つな)いでくれたので、気にしないことにしました。


 さっきまでルイに気を使って大人しかったのか、少し元気のなかったティナリアが急に元気になったので、ルイは苦笑(くしょう)しながらも、安心していました。

 やっぱりティナリアは元気なのが一番似合っています。


 大通りは、かなり(にぎ)やかな雰囲気(ふんいき)でした。

 本の中でしか見たことのない大道芸をする人たちが居ます。そして、それを囲む大勢の人間たち。

 色々なお店も、たくさんあります。

 お祭りの(かざ)りも、先程(さきほど)いたところよりも派手になっていました。

 ティナリアとルイは、興味の向くままにお店を(のぞ)いてみたり、人々に混じって大道芸を見てみたりと、お祭りを楽しみます。

「見るものがたくさんあって、楽しいねー」

 ティナリアは笑顔(えがお)でルイに話しかけます。

「そうだね。さっきのお店は後でもう一度行ってみたいかな」

 ルイもお祭りを満喫(まんきつ)しているようです。

「さっきのお店って、本を売っているお店?」

「よく分かったね」

 “さっきのお店”だけで通じたことに、軽くルイは(おどろ)いた顔をしました。

「だって、すっごく真剣(しんけん)に見てたから」

 人間の歴史がかかれた本や、食べ物や植物が書かれた本を、ルイがジッと見つめていたことにティナリアは気がついていました。結局なにも買わずに店を出ましたが、きっとその本が()しかったんだなと思ったのです。

「もうすぐお祭りのメインイベントがあるみたいだから、その後にもう一回行ってみよう」

 お祭りの紙をみると、もうすぐこの大広場で[花のコンテスト]というイベントが始まるようです。

 先程よりも人が集まって来ています。

 油断すると人混(ひとご)みに()(なが)されて行きそうで、ティナリアは繋いでいたルイの手をギュッと(にぎ)りました。

 お店の(かべ)にこれから始まるコンテストの内容が書かれて紙が()ってあったので、ルイは読んでみます。

「へぇ、コンテストの審査(しんさ)員は王子さまだって」

「え? そうなの?」

 ティナリアが少しつま先立ちになり、貼り(がみ)を見ると、確かにそう書いてありました。[花のコンテスト]と聞いただけでは、お花のキレイさを(きそ)うコンテストなのかなと思っていましたが、どうやら競うのは花ではなくて女の子みたいです。要するに[美少女コンテスト]というわけです。


「ここに居る女の子も可愛いぞ」

「本当だ。参加してみれば良いよ」

 ティナリアの近くにいた人が、突然(とつぜん)そんなことをいい始めました。周りの人たちも乗り気で、ティナリアにコンテストの参加を(すす)めてきます。

 ガヤガヤとしているところに、コンテストの運営をしているという人がやって来て「飛び入りも大歓迎(だいかんげい)だけど、どうする?」と聞いてきました。

 ティナリアは突然人間に囲まれて困惑(こんわく)していましたが、コンテストに出るのは少し興味があります。ルイの方を見ると「気になるなら、出てみたら?」と言ってくれます。少し(あきら)め気味の顔だったのは、きっとティナリアから「出てみたい」というオーラを感じたからでしょう。


 というわけで、ティナリアも飛び入りで[花のコンテスト]に参加することが決まりました。

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