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1 プロローグ

 “海の国に住む人魚姫は、ある日海で溺れる人間の王子さまを助けました。

 その王子さまに恋をした人魚姫は、王子さまに会いたいと、海の魔女に人間になれる薬を作ってもらいました。

 薬で人間の姿になった人魚姫。

 けれど、両足と引き換えに、可愛(かわい)らしい声を失ってしまいました。

 人魚姫は王子さまに会いに行きますが、王子さまを助けたのが人魚姫だということに気がついてもらえません。

 それどころか、ほかのお姫さまが命の恩人だと思い違いをしたまま、王子さまはそのお姫様と結婚するというではありませんか。

 人魚姫は、人間になる薬をもらったときに魔女から言われたことを思い出します。

『王子と思いを通じ合わせることができず、王子が(ほか)の女と結婚をしたら、お前は海の泡となって消えるだろう』

 このままでは、人魚姫は泡になって消えてしまいます。

 心配した人魚姫のお(ねえ)さんたちが、人魚に戻る方法を教えてくれましたが、人魚姫にはできませんでした。

 その方法というのは、王子さまの命を奪うことだったのです。

 恋した相手の命を奪うことなんて、人魚姫には無理でした。

 幸せそうに微笑(ほほえ)む王子さまの命を奪うくらいなら、自分が海の泡となって消えることを選んだのです。

 そして、人魚姫は悲しみの涙を流しなら、海の泡となって消えました”



 これは『人魚姫の物語』。

 海の国の幼い人魚たちに聞かせるむかし話のひとつ。

 人間の王子さまとの悲しい恋の話を通して、興味本意で地上に行かないように諭すために、物心つく頃には誰もが聞かされる物語です。

 この話を聞いた幼い人魚たちは、「人魚姫、かわいそう」「陸って怖い場所だわ」「命の恩人を間違えるなんて」と、人間や地上に対して警戒心を持つようになるのです。


 そんな中、一人(ひとり)の少女ティナリアは少し違う感想を抱いたようでした。

「うーん……声がでなかったから、自分が王子さまの命の恩人だったって伝えられなかったんだよね。人間の文字を覚えてたら、伝えることが出来たのに」

 ティナリアは、しゃべることが出来ないなら、書けば良いのだということに気がつきます。

 だけど、人間の文字を書ける人魚なんているのでしょうか?

 人間と(かか)わることがないので、周りの人魚で書ける者は居なさそうです。

「あっ、そうだわ、海の底に住む魔女なら人間の文字もきっと知っているわよね」

 海の底に住む魔女はとても賢いから、人間の文字も知っているに違いありません。

「ルイ、一緒に魔女のところで、人間の文字を教えてもらおうよ!」

 ティナリアは、隣で物語を大人(おとな)しく聞いていた幼なじみの少年ルイの腕を引っ張ると、有無を言わせずに海の底へと向かって泳ぎ始めました。

「え!? なんで??」

 ティナリアの発想力と行動力についていけないルイは、目を白黒させながら叫びますが、そのまま海の底へと引っ張られていきました。

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