6 王城
久しぶりの投稿です。
長い間お待たせして申し訳ありません。
結構書き貯めました。
6 王城
トム一行は謁見の間で王に拝謁をした。
謁見の間は飾り気があまりなく、かといって地味な感じでもなかった。
言うなれば静謐な佇まいの王城である。
玉座に鎮座しているのは世界屈指の強国ホーリーナイト王国国王アラスター……。
厳かな感じの御仁である。
その傍らに世継ぎである王女ローズが控えていた。
世継ぎローズは顔を赤らめながらトムを見つめている。
「お初にお目にかかります。トムです。」
貴族の礼を取り、王に拝謁するトム。それに伴ってクリスも礼を取る。
「余がホーリーナイト王国アラスターである。
良くぞ参られた。報告書では大魔王と戦い生き延びたとある。
人類の希望である勇者と聖騎士団が全滅したのに良くぞ生き延びた。
そして伝説の魔導眼に戦いの神と謳われる『戦神』を配下にした。
天晴である。クリストファーはトムをどう扱う?」
アラスターは感心した様子でトムを見た後、目線を隣のクリスに移した。
「はッ! 我が孫トムに公爵家の家督を譲り、彼を学園に入学させる事にします」
クリスの提案にトムは動揺した。
自分に貴族が務まるだろうか、と。
それに学園に通うなど面倒だ。
教養は父から教えられたが、勉強は苦手なのだ。
「それが良い。トムを公爵に任命する。トムには明日から学園に編入させることにする」
アラスターの鶴の一声でトムは公爵になった。
そして王女ローズが一歩前に踏み出し、トムの前に立つ。
「!?」
「トム様、私はローズ。ホーリーナイト神聖国王女であり学園の生徒会長をしています。
隣の御仁……戦神殿にも形だけでも入学してもらいます。歓迎しますよ」
トムと戦神はお辞儀をした。
王女の立場で学園の生徒会長をするとは。
中々、活動的な人物のようだとトムは推察した。
こうして謁見は無事に終わり、トムは学園の入学準備に追われることになる。
王女ローズside
新緑の髪色に瞳を持つローズは由緒正しき強国であるホーリーナイト神聖国の世継ぎ王女だ。
言うなれば次期国王である。
王のただ一人の子であるため、大事に育てられてきた。
そんなローズであったが、一人の少年に心を奪われてしまった。
その名はトム。
艶のある黒の髪色に真紅の輝きを放つ瞳……一目ぼれだった。
「あんなカッコいい御方が存在するなんて……」
容姿が良いだけではなく、大魔王と渡り合った実力に戦いの神である戦神を従えるカリスマ。
惹かれないはずはなかった。
ローズはトムのお嫁さんになりたかった。
幸いにもトムは王族に連なる公爵家の孫……家格的にも釣り合いが取れる。
「父上、私はトムのお嫁さんになりたいです」
そんな一人娘の独白に国王アラスターは眉一つ動かさなかった。
父であるアラスターは人の機微に敏感な人物である。
娘の様子からそうではないかと思っていたようである。
「彼ならば私も許そう。トムは私の眼から見ても傑物の類だ。
大魔王と渡り合い、そして戦神も配下にしている御仁を手に入れれば国の最高戦力になる。
これから魔王の軍勢が攻めてくるかもしれない。トムは必要な駒だ」
アラスターは玉座で頬杖を突きながら言った。
それを聞いてローズの気持ちは舞い上がる。
ローズは絶対にトムを手に入れる事を誓うのだった。