45 ライオネルの野望sideライオネル
45 ライオネルの野望sideライオネル
ウォーター連邦水魔城――。
玉座の間は煌びやかな豪華な装飾で彩られた広間であった。
使節団代表ライオネルは玉座で佇むフクダ一世に首を垂れた。
これはライオネルにとって見せかけの服従の証である。
ライオネルはフクダ一世を見て世紀の英雄だと認識した。
一切の隙は見当たらなく、油断なく深緑の瞳を動かしている。
だから首を垂れたが、ライオネルは誰にも屈しないし、誰にも傅いたりしない。
フクダ一世を見て、彼女の欠陥がすぐに分かった。
最強の召喚術師だと噂されるが、本人自体の戦闘力は皆無だと見抜いたのである。
百戦錬磨のライオネルにはそれが見て取れる。
フクダ一世を見て、どうみても戦闘の素人だと容易に看破出来る。
――フクダ一世の寝首をかく。その前段階として、偽りの降伏。
そう。
ライオネルは使節団五千人……実は生え抜きの武人なのである。
ローズはフクダ一世の持つ不老不死の首飾りを必ずひったくれと言う命令であったが、下らないと不死の肉体を持つライオネルは一蹴した。
ライオネルはフクダ一世を亡き者にしてウォーター連邦を制圧する。
自分を冷遇している凋落したホーリーナイト神聖国を見限ったのである。
――ホーリーナイト神聖国での辛酸の歴史は必ずや清算してやる。
でも、すぐには亡き者にはしない。
彼女が馬脚を現したときに亡き者にするのが、ライオネルの矜持である。
それまでは傅くふりをする。
だが、フクダ一世は中々、馬脚を現さない御仁だ。
しかし、馬脚を現すときは絶対にやってくると見抜いている。
「お前が、ホーリーナイト神聖国第一王子ライオネルか。
私の眼は誤魔化せぬぞ! 使節団は全員騎士族の武人であろう!?」
フクダ一世は激高した振りをしているのが見て取れた。
相当、賢き御人のようだとライオネルは顎に手をやり、推測した。
「その通りでございます。
陛下、このライオネル一同、全面降伏いたします。
全ては貴女様の意のままに……」
ライオネルは含み笑いをして臣下の礼を取った。
逆にフクダ一世は思わぬ幸福に訝しむが、すぐにはしたない笑みを浮かべた。
卑しい所もあるのだな、とライオネルは観察した。
「……そうか。これは思わぬ収穫であった。
五千人の指揮官級の兵力とハイエルフの血を継ぐライオネルを戦力として手に入れたのだ。
これで我が国は究極の強国になる」
ライオネルとフクダ一世は共に大笑いして、その場を大いに沸かせた。
周りを見やるとイケメン家臣達もこれでホーリーナイト神聖国を潰せると顔に出していた。
「ところで、ライオネル。お前の親であるフリーダが我が箱庭で猛威を振るっている。
だから、フリーダと瓜二つのお前を見て、不思議な気分になるのだ。
釈然としない。何時、フリーダが私の寝首をかいてくるのが、少々不安だ。
だから、お前を私の配下に加えることを許す。喜ぶが良い」
フクダ一世は一層強者感を出して、笑みを絶やさない。
それを見たライオネルは余程、フリーダを恐れているのだな、と心の中で嘲笑した。
親、フリーダがこのウォーター連邦で猛威を振るっているのは把握済み。
それに第六天魔将水神スイを手駒にしているのも既に知っている。
「成程、フリーダは僕が引き受けよう。
最強の武人戦神を模擬戦で圧倒した僕ならば、フリーダなど、塵芥も同然」
「そこまでの自信、私は喜ばしい。安堵する。
これで脅威は去ったも同然……今日は宴を催そう」
「若輩の私の為に宴、有難く存じます」
ライオネルは再度一礼して使節団を引き連れて玉座の間を去った。
――フクダ一世……相当な自信家だな。
それに中々可愛い女の子ではないか。
彼女が一切の馬脚を現さなければ……僕は。
心の中で嘲笑の笑みを絶やさずにいた。
フクダ一世は頭がおかしい程に可愛いとライオネルの眼から見ても見受けられた。
ライオネルは絶対にこの豊かなウォーター連邦を手に入れ、覇権を握ってやると誓うのだった。




