4 全てを失った少年と最強の手練れ
4 全てを失った少年と最強の手練れ
トムは幼馴染の少女ライラと聖騎士団が全滅しても何故か一人生きていた。
村は跡形もなく消滅したが、命だけは助かった。
「ライラ―ッ!」
ライラの亡骸を抱いてトムは泣いた。
勇者として覚醒した少女でも大魔王の分身には勝てなかった。
だけど、トムは氷神第一形態を圧倒していたのも事実。
それなりには強くはなった。
だが、氷神第二形態に及ばず。
トムは立ち上がり、亡骸を放し、大賢者アーロンの小屋へと走った。
大賢者アーロンの小屋の跡地にて一人の長身痩躯の男が立っていた。
「お前は誰だ?」
話しかけると男はトムの前に跪いた。
佇まいやオーラから底知れない強さを垣間見せる。
男はゆっくりと口を開いた。
「僕は戦神と申します。大賢者アーロンによって召還された者です。
トム様……貴方様にお仕えいたします。
僕はアレクよりも強く必ず貴方様の役に立てると自負しております」
戦神は乾いた笑みで言った。
長身痩躯の優男……軽薄な印象を受けるが大丈夫だろうか。
「お願いだ! 共にライラ……勇者ライラの仇を……大魔王コールドを倒す為に協力してくれ!」
トムは素直に頭を下げた。
目の前の戦神はアレクよりも強いかもしれないと、トムは期待の面持ちで見つめていた。
「無論です。大魔王を討伐する旅に同行させていただきます。
永遠の忠誠を誓います。まずは貴方様の身なりを新調しましょう」
戦神が手を振ると、トムは氷神と戦った後のボロボロの服から、身なりの良い服を用意してもらった。
改めて戦神と向き直る。
この御仁は相当な修羅場を潜ってきている。
舐められないようにトムは魔眼を開眼する。
その輝きは永遠の真紅の輝きを放つものであった。
「その眼は魔眼……やはり仕えるに値するお方だ。
きっと氷神と戦ったことで上位の魔眼を開眼したようですな。
僕はその昔、魔王と戦ったことがあるのです」
戦神は乾いた笑みで述べる。
トムは魔眼を開眼できたことに喜びを見出す。
だが、幼馴染のライラが戻ってくることはない。
その戒めとして常に油断しないように……トムは常に魔眼を開眼した状態でいることにした。
「良い心がけですな。では、まずは何処に行きたいですか?
僕は瞬間移動が使えるのです。目的の場所があれば仰ってください」
「ホーリーナイト神聖国に行きたいです。
聖騎士団が全滅し、勇者ライラも命を落としたことを報告しなくては……。
後、ホーリーナイト神聖国は母の出身国だと聞きました」
聖騎士団とライラが大魔王の手にかかった事を報告しなくてはならない。
それが共に戦った自分の義務であろう。
「分かりました。それでは……」
その瞬間、二人は忽然と姿を消した。
視界が変わるとトムと戦神はホーリーナイト神聖国の門の前に立っていた。
今回はここまで。
最初から最強格の大魔王が現れて敢え無く全滅したところで、最強の手練れである戦神さん登場!