37 神トムの懸念sideトム
37 神トムの懸念sideトム
使徒である勇者イアンが無様にやられた。
全てが真っ白の天界の玉座に佇むトムはあからさまに不快感を露にした。
周りの天使たちが機嫌の悪いトムを見てざわめきを覚えていた。
――勇者イアン、使えない奴だった。せっかく魔導眼を与えたというのに。
トムは苦虫を噛み続けて、勇者イアンに対する愚痴を吐いた。
今度は誰を洗脳するか……トムは顎に手をやって思案した。
「そうだ。良い事を思いついた。大魔王コールドを洗脳しよう。
奴を洗脳すれば、魔王軍も手に入る。
コールドの分体である氷神に魔導眼を与えて、更に強化して洗脳しよう。
僕に洗脳された個体は潜在能力を引き出されて大幅なパワーアップを得る事が出来る。
氷神を使徒にする。そして、もっと使徒を増やす。生意気な娘をちょっと脅かしてやりたいしね。大賢者アーロン……あいつも強い。洗脳する。
そうか! あいつもいた! そう、戦神!」
トムは考えて、ようやく最適解を導き出した。
氷神、大賢者アーロン、戦神を洗脳してパワーアップさせて使徒にするとしようと考えを浮かべた。
一気に三人も使い魔が増えるのだ。
これで神皇女……生意気な娘にちょっと鉄槌を下す手駒にはうってつけだった。
トムは両目を紅き瞳に変化させて早速、氷神、アーロン、戦神を空間移動させて、目の前に召還した。
トムの究極魔導眼の能力、空間魔法を使ったのだ。
氷の微笑を浮かべる氷神、全てを悟ったかのような老人アーロン、そして闇のオーラを漂わせる戦神……それぞれ使徒に選ばれた嬉しさを醸し出す雰囲気で佇む。
「「「神トム様に忠誠を捧げます」」」
三人はトムの前に恭しく首を垂れて、洗脳を受けてパワーアップを果たした。
玉座にふんぞり返るトムはその三人を見て感無量だった。
――勝てる。生意気な娘に一泡吹かせてみよう。
何が神皇女だ……第六天魔将だ。
生意気すぎるとトムは思うのだった。
ミアもあんなに溺愛したのにあの体たらく。
ルイスもいつの間に聖なるドラゴンに変身できるとはいえ、フリーダに勝てない奴に興味はない。
どうしてくれようかとトムはなおも思案する。
悪戯に使徒を増やし続けるのもつまらない。
有能な使徒だけいれば問題ないのだ。
今やホーリーナイト神聖国も没落寸前。
あんなに自分が王となってあれだけの繁栄を極めた国だったのに自分がいなくなった途端、没落するとはお笑い草だ。
――ローズの奴……ルイスとフリーダ様の子を育てているのか。
フリーダ様もあんな最弱の大陸にいるとか。
水神スイとフリーダ様がパーティを組むとはこれはこれで面白い。
だが、フリーダ様を洗脳するのはやめとこう。御しがたいからな。
トムは当然のごとくローズも気に入らない。
あれだけ栄華を極めたホーリーナイト神聖国が崩壊寸前の極みにいる。
国の舵取りをするのに向かないと思ったが、想定の範囲内であった。
「ホーリーナイト神聖国は要らない。
最弱の大陸で健気に頑張っているフリーダ様を優遇する。
贅沢三昧しているローズの奴は終わりだ。
ちょっと調子に乗っている娘に怖い思いをしてもらおうか。
天使たちを神皇国に派遣するとしよう。
青い衝撃? 下らない児戯のような技だ」
神皇国……国民全員が神クラスの国として広く認知されている。
青い衝撃を全員が使えるのは目を見張るが、トムにとっては児戯にも等しい。
「青い衝撃」
その場にいる白装束の天使の集団の一人に試しにトムは青い衝撃を放ってみた。
「ぐぎゃあ!」
天使が全身の骨を砕かれてその場に崩れて悶え苦しむ。
「確かに中々使える技だな。だが、すぐ飽きる技だ。要らない」
自分が青い衝撃を使うことはもうないだろう。
トムは瞬時に天使の身体を修復させて、なおも思案を果てしなく続けるのであった。




