23 エルフ国sideミア
23 エルフ国sideミア
ミアはエルフ国の国門に到達した。
国門は五十メートルにも及び過去に人族の軍勢百万を相手取った。
八百年前の人族との対立の際、エルフ国の王女フリーダが指揮を執り人族を完膚なきまでに叩き伏せた。
背があまり高くないミアは国門が、不落の門だということを認識せざるを得なかった。
ミアはそのフリーダに会いに来たのだ。
剣王ダリアの姉であるフリーダは卓越した御仁だ。
フリーダと言う人物を見極めに来たのだ。
機会があれば剣を交えてみたい。
「そこの娘! 何者か!? よく見たら人間ではないか。
小娘には悪いが、人間は通すわけにはいかない。何故ならば、特別に教えてやろう。
我らが、王女フリーダ様は今度こそ、愚かな人間どもに鉄槌を下されるのだ」
国門の上で駐屯する兵士が、口を滑らした。
成程、エルフ共はまた人族と争いをする気かとミアは看破した。
そんな事、ミアには関係なかった。
自分は世界の人間全員を相手取っていても蹂躙できる力がある。
フリーダ様は何というお考えなのかは興味があるが、もしや弟、ルイスがやらかしたのかと勘ぐった。
「私は魔導剣神ミア! 国門を通してもらいたい。フリーダ様に用がある」
「何!?」
「是非、お通りください。剣王ダリア様のご友人だとは……」
やはり、エルフ共は力のある者を尊ぶという概念があるらしい。
ミアは世界一の実力者なのだ。
大魔王コールドと互角の実力があると自負している。
「お前がミアか……前線に出向いて正解だった。
私がエルフ国第一王女フリーダ様だ。
お前の噂はダリアからの文で聞いている。
その年で剣神に至るとは神童の類か」
長身でマントを羽織ったこれまで見た誰よりも優れた容貌の少女……いや、女性が国門の上から見下ろしていた。
ミアは胸が高らかになった。
あり得ないほどカッコいい女性だった。
――あれがフリーダ様!? あれで千年以上生きているのか。
弟のルイスはフリーダ様に何かしたのかとミアは思考を巡らす。
それでもフリーダには畏敬の念を抱かずには居られなかった。
だが、今のミアは究極魔導眼の力がある。
フリーダにも勝てる筈……と浅ましい考えが宿る。
「私と戦うというのか? まあ、それも一興よな。
お前の力は大魔王コールドに限りなく近いほどに強い。
だが、私には遠く及ばない。
私はハイエルフの王女という身分に生まれ、最強の力を探求してきた。
最強とは何か、それのみを追求し、鍛錬を積んでいる。
そして悟った。私は超越者であり、人族から世界を我がエルフ族に返してもらう。
お前はまだ小娘だから、分からないが、この世の真理を全て私は十全に理解している」
フリーダは高らかに声を発し、ミアを明らかに嘲笑……いや、少し愚弄している。
まるで自分が神とでも言いたいのかと、ミアは拳を握り締める。
「フリーダ様! お言葉ですが、貴女様は神にでもなった気ですか?」
「何を言う? ハイエルフはかつては神であった。
最初から教えてやろう。世界はハイエルフの楽園だった。
人間など存在しなかった。地上はハイエルフ達の物。魔界は大魔王コールド達、魔族の物。
大魔王コールドと私は旧知の仲だ。では何故、人間が何処から来たか。
それは異界から招かれたのだ。大量に召還された。当時の人間は高い能力を有していた。
我がハイエルフは人間を援助した。そうして人間たちは繫栄したのだ。
だが、もう人間は見飽きた。だから挙兵する。我がハイエルフ軍150の軍勢で地上を平らげる。
数が少ない? そんなものエルフは一人一人A級の力を持つ。旗色が悪いのは人族だ」
フリーダは苛烈なハイエルフであった。
要約するとこうである。『人族の駆除』
フリーダの意志から感じるのは人族は増えすぎた。
逆に悠久の時を生きるエルフは数を減らした。
「フリーダ様!? 弟は……ルイスはどうなったのですか?」
恐らくルイスのせいだ。
弟が不興を買ったのだろう。
「その通り、お前の読み通り、私の不興を買った。あの小僧、私と対等だと思ったようだ。
試してみるか? 今の状態の私になら、勝てるかもしれない。
私はルイスの子を産んだ。ハイエルフ唯一の弱点。賢いお前ならば分かるであろう」
良く見ればフリーダの顔色が悪かった。
それにしても見知らぬところで自分の甥か姪が誕生していたとは……。
「弟に会わせて下さい」
「他ならぬお前の頼みだ。会わしてやろう。聖戦がまもなく始まる。
世界の秩序を守るのが、神たるハイエルフの役目だ。
種族間の均衡が崩れればそれを阻止する役目が回ってきた。
人族は些か数が増えすぎただけの事だ。
少し、減らしてもらう。聖戦の前の宴に招いてやる。良く食べ、ダリアの話を聞かせてくれ」
フリーダはやっと穏やかな笑みを見せた。
しかし、完成度の高い微笑であった。
きっと人族が好きではないのであろう。
何しろ、妹を失っているとダリアから聞かされている。
しかし、世界の秩序と均衡の為にハイエルフは存在していると豪語するフリーダ。
彼女の苛烈な振る舞いはやはり、人々を傅けるものであった。




