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20 神の使徒sideイアン

 20 神の使徒sideイアン



 トムが神となって10年後――。

 金色の髪と眼をした15歳の青年イアンは最強の国ホーリーナイト神聖国の辺境の名もなき村に暮らしていた。

 父と母は既に亡く、兄妹は半年前に魔物に倒され、全員失った。

 辺境である名もなき村周辺は度々魔物の襲来を許していた。

 大魔王コールドの軍勢が大挙として襲来したのだ。

 ホーリーナイト神聖国もそれに応じて兵を送ったが、大魔王コールドの氷の軍勢には手を焼いていた。

 魔物の軍勢は手強く、無慈悲にも村の大人たちも殆どやられていた。

 そんな絶望を味わったイアンであったが、魔物に襲われ、極限状態に達したとき、自らの眼に変化が起きた。

 魔物の動きがスローモーションで見え、手を翳しただけで黒炎が放たれ、魔物を一蹴した。

 一躍英雄となったイアンであるが、自分だけに見える存在がいた。それは正しく神であった。


「神様、今日も魔物を退治できたのは貴方様のお陰です」


 名もなき村の果てに建つ小屋で一息つくと自分だけに見える神様に礼を述べた。


『イアン、君は世界の均衡を保つために僕が選んだ存在。大魔王コールドを倒すのは君だ』


 神様は大魔王討伐をイアンに指示した。

 イアンもそのつもりであった。

 神様から手に入れた最強の力は世界の為に使うべきだと。

 失った両親と兄弟の為にも必ずや大魔王討伐を成し遂げるのだと固い決心であった。


『この剣を使うがいい。それは魔導真剣』


 突然、光がバチバチと鳴り響き、その場に黒い刀身の剣が現れた。


「これは……伝説の最強剣!」


 イアンは見ただけで分かった。

 正しく最強の剣だと。

 高揚し震える手で剣を握る。

 その剣を用いたイアンは早速、魔物討伐に赴き、村周辺の魔物を一刀両断。

 瞬く間に周りの全ての魔物は覚醒したイアンによって全滅。

 イアンは魔導真剣を携え、大魔王討伐の使命を受けて単身で旅立った。

 多くの村人が感極まりながら、イアンの門出に集まり、それを見送るのであった。





 故郷の村を捨て、旅に出たイアンであったが、その道中に凄まじき存在に出くわした。

 それは村を出て三時間ほどの間である。

 舗装された道を地図を手に、足早く歩き目的の城塞都市を目指していたが、急に全身に悪寒が襲来した。


「何だ!? この重圧は!」


 上を向くと空から鷲型の獣人の特徴を持った氷の魔物が飛来した。

 顔は人間とそう変わらないが人相は凶悪そのものである。

 周りに歩いていた人族は急に現れた魔族の先兵に恐怖し、右往左往している。


「神の使徒と見受けられる。我が名は氷魔将サイラス。貴様の命を頂く」


 突然現れた強敵となり得るであろうサイラスは着地すると、右腕の爪牙をイアンへと向けた。

 これは宣戦布告と言うべきか……イアンは魔導眼を発動し、戦闘態勢を整える。


「邪悪なる暗黒竜!」


 両手を翳し、暗黒の竜を象った黒炎を放つ。サイラスは爪牙を操り、イアンの間合いへと前進させる。

 しか、炎属性を極めているイアンには氷でできた両腕の爪牙等、ものともせず溶かしてしまった。


「腕が……! 私の最強の腕が! 溶けてしまった」


 属性の相性の差は時として残酷となりえる。


「終わりだ! 不死鳥の爆炎!」


 邪悪なる不死鳥の上位互換である最強の炎属性の技『不死鳥の爆炎』はサイラスの全身を溶かしていく。


「俺に勝てるもの等、この世には存在しない。

 何故ならば俺には神様がいつかなる時も見守ってくださるからだ」


「ぎゃあああーッ! 助けて! 助けて! 誰かお助けを……!」


 サイラスは全身を火達磨になりながら助けを呼んでいた。

 その時、空から一人のマントとローブを羽織った魔族が新たに降り立った。


「安心するがいい。この俺が助けてやる。

 仮にも大魔王様の幹部であるお前をここで失うのは惜しい故な」


 魔族の男は火達磨になっているサイラスに水魔法を掛ける。


「アレクサンダー様! この生意気な小僧を貴方様のお力で蹴散らしてくれ」


「言われずともそうするともりだ。

 サイラス、お前は安全な位置から俺の雄姿を見ているがいい」


 その魔族は二メートルを余裕で超えている偉丈夫であった。

 そして両目に輝く魔導眼……何故、この男が魔導眼を持っているのかが謎である。


「我が名は魔導騎将アレクサンダー。

 別けあって、大魔王コールド様によって死の淵からよみがえった。

 更なるパワーアップを果たしてな。究極の存在に俺はなったのだ」


 アレクサンダーは満を持してそう述べる。

 相当自身がおありの様だ。


「!?」


 イアンの隣で傍観していた神様が震えている。


「神様!?」


 すると神様は実体化して降臨する。

 初めてだこんな神様は……。


「やはり、我が息子、トムか。トム……お前は神様の真似事をしているのか?

 天界を創造し、神様として君臨しているとは情報を掴んでいたが、まさか神の使徒を生み出していたとはな」


 アレクサンダー……アレクは目を丸くしていたが、すぐに強者の顔に戻る。

 神様はアレクの息子だったようだ。

 神様にもそんな過去があるとは思いもよらなかった。

 それに旅の序盤からここまでの強敵と遭遇するとは我ながら運がない。


「魅せてやろう! 新たに手に入れた我が最強の肉体を!」


 眩い輝きを放ち、アレクはローブとマントを弾け飛ばし、最強の肉体を披露する。

 凄まじき鳴動と唸り声が周囲に反響する。

 木々が弾け、圧倒する。


「グオオオーッ!」


 アレクの肉体は輝きと共に全身がダイヤモンドで覆われていた。


「これが俺の最強の体。全身ダイヤモンドで覆われている。

 何者も俺の肉体に傷をつけることなどできはしない。

 この戦いは最早、俺の勝ちは揺るぎようがない」


 アレクは自慢気にダイヤモンドの肉体を披露するが、狼狽する神様をよそにイアンは反撃の姿勢を許さない。

 気負いもせずに魔導真剣を手にアレクに向って特攻する。


「神速の剣戟!」


 イアンが放った剣戟は剣神の奥義である神速の剣戟。

 神の如く鋭い速さで敵を両断する冴えわたる技だ。

 これならばアレクに通用すると高をくくっていた。

 しかし、アレクの体を切り裂く前にアレクがイアンの右腕をひねってしまった。

 呆気なく悶絶するイアン。

 それを余裕綽々で見下ろすアレクの構図。


「フン! 神速の剣戟は鋭い踏み込みが肝要……魔導眼で手に入れた付け焼刃の技は身を亡ぼすぞ」


 イアンは一早く回復魔法を腕に掛けて、素早く後方に間合いを取る。


 ――何という力……膂力と言うべきか。


 圧倒的なアレクの膂力とパワー。

 イアンは後ずさり、怯えを見せる。

 今まで神様から得た力で快進撃を続けてきたが、遂に真の強敵と相対してしまった。

 しかも、こんな序盤からである。

 アレクは魔王軍の最高幹部であり、大魔王コールドの側近……勝てる道理はない。

 でも、それでもイアンは勝たなければならない。

 いや、常に勝ち続けなければ……。

 神の使徒として、人族の希望としての矜持。

 イアンは闘気を身に纏い、高める。

 それを魔導真剣に乗せる。

 闘気を帯びた剣戟が、アレクに迫る。

 今度は渾身の踏み込みをして接近し、アレクの体を一刀両断する。

 しかし、アレクの体は修復を始める。

 これが、大魔王コールドから授かった最強の肉体なのか。


「無駄だ……! この肉体は形状記憶能力を混ぜたダイヤモンドの肉体」


 イアンはガックリと肩を落として項垂れる。

 自分の最強の一撃が、全く意味をなさなかったのだ。

 武人としての格そのものが違う。

 余裕綽々で、自分を見据えるその眼は鋭い。


『イアン……一つ助言をしよう。ダイヤモンドは衝撃に弱い』


 神様からの啓示。

 そうだ。

 自分にはあの技がある。


「体砕きの波動!」


 これは相手の体に直接、衝撃を送り込む技だ。


「馬鹿め! この最強の肉体に弱点などある筈がなかろう!」


 アレクは一笑に付し、大笑いする。

 最早、勝ちは揺るがないだろうという思い込みに隙が出来る。

 アレクは慢心。

 その慢心にイアンは付け込み、再度接近。

 アレクの体に強い衝撃を加えた。

 アレクの肉体はガラスのようにヒビが入る。

 形状記憶の再生が何故か始まらない。

 やはり、衝撃を加えたことで形状記憶の再生に故障が出たのだろう。

 アレクは狼狽する。

 狼狽え、かつての武人の鑑にような誇らしい姿が影を見せる。


「ダイヤモンドの外殻は失ったが、俺の真の肉体はダイヤモンドの外殻の中に隠れているのだ!」


 ダイヤモンドの外殻を破壊に成功したイアンであったが、所詮は外殻。

 外殻の下にアレクの真の肉体が隠されていたのだ。

 その肉体は意外にも二メートルだが、細身であり、線が細かった。

 そして次第に落ち着きを取り戻し、武人の鑑に戻る。


「イアンと言ったか? 最後の戦いを始めよう。我が息子トムの使徒よ。

 お前はこの俺の手で葬ってやる。行くぞ、『魔導神眼』。究極魔法『魔導王の流星』!」


「アレクさん、貴方は真に武人の鑑だ。戦えることを誇りに思う。

 だからこそ勝ちたい! 『魔導眼』。光属性最強魔法『シャイニングフレア』!」


 互いに好敵手だと認めた両者は最後の技のぶつかり合いを始める。

 両者の持ち得る技の最大戦力が激しく衝突する。

 光を帯びた光属性最強の一撃と魔導眼の秘奥義。

 そのぶつかり合いは苛烈に極まる。

 お互いの技が弾け、両者に被弾。

 二人はお互いの技を受けてその場に崩れ落ちる。

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