15 王女ミアの成長
15 王女ミアの成長
ホーリーナイト神聖国王宮
トムとローズの娘、王女ミアはすくすくと成長し、14歳となった。
更に二人の子、王子ルイスも誕生、13歳となる。
どちらも上位魔族の因子を持っていなかったが、トムとローズに顔立ちが似ている。
王子ルイスは努力家で剣術を学び、勉学にも手を抜かない子だ。
偉大な父であるトムのように成りたいと日々精進している。
一方、王女のミアは我儘な性格であった。
しかし、見目が良く、天下一の美女と名高いローズに似ている為、家臣たちに甘やかされている。
トムもミアを可愛がっており、世界の盟主たるホーリーナイト神聖国の王女であるミアを溺愛していた。
「お父様、お願いがあるの」
ミアは王宮の一室で父、トムに上目遣いで可愛い所作を取る。
トムの外見は相変わらず十歳の見た目の為、ミアに身長を少し抜かされてしまった。
ショックである。
「何だい?」
トムは娘に優しく笑いかける。
「学園に通いたいの」
ミアのお願いは何でも聞いてきたトムであったが、学園に通いたいというのは意外だと思った。
我儘放題に育った娘が学園に通いたいと……その魂胆は何なのか。トムは思案する。
確かにミアにはもう少し成長してほしいと思う。
超大国の王であり、世界の盟主である国王の一人娘としてミアは周囲を魅了し傅けてきた。
何不自由ない優雅な生活。
ミアは幼い頃から贅沢三昧の生活に甘んじてきた。
しかし、それも危ういと思う。
大国の姫君としていつかは何処かの王室に嫁ぐのだ。
これから本当にミアの幸せを願うならば、と本気で娘の今後の事を考えなければならない。
「分かった。僕も考えておくよ。お前の今後についてな……」
そういってミアの頭を優しくなでる。
ミアはトムに撫でられて顔を綻ばせる。
猫のようだ。
改めてみると娘は可愛い……見目麗しい美人となるだろう。
娘以上に美しい女性は最早、ハイエルフぐらいのものだろう。
ハイエルフと思ってトムは思い出した。
エルフの国は北の大地にある。
彼らは排他的であり、人族と長年対立してきた。
ハイエルフはエルフ族の上位種族であり、寿命という概念を超越し、何万年、何億年と生き続けることが出来る。
そして見目麗しく、才能に溢れる肉体を持つ。
しかし、自らの種族を選ばれしものと言う考えを持つものが多く、高慢で傲慢なものが多い。
それゆえに非力な人族と対立し、八百年前に大規模な衝突があり、大戦にまで発展したのだ。
トムは国王になってから、世界の盟主としてエルフ国と国交を開いてきた。
使者を送り、または自らエルフ国に赴き、人族とエルフの仲を取り持ってきた。
その苦労が報われ、遂に人族とエルフ族は仲良くなった。
そしてエルフ国第一王女であり、希少な純血のハイエルフ、フリーダ姫をトムの長男ルイスとの婚約が決まったのである。
フリーダ姫は八百年前の戦争で、先頭に立って人族と戦い、『戦姫』と謳われる活躍を見せていた女傑である。
年齢は千二百歳に及ぶが、見目麗しく、見た目は十六歳の可憐な姫君である。
フリーダ姫とはルイスの成長と共に何度もエルフ国に赴いて会談を重ねているが、ハイエルフにしては珍しく話の分かる娘である。
このようにルイスには用意されたレールを敷いているのに我儘なミアには何も敷いてはいない。
このままではいけない。
トムは考える。
考えた末、トムは思い切って娘に過酷な道を歩ませるのである。
「ミア、これから僕はお前に恨まれるかもしれない。
お父様は自分の事が嫌いなんだと思うかもしれない。だが、このままではお前は駄目になる。
だから、僕は決心した。お前を剣士の国である剣神国に送る。そこでは王族だからという忖度は通じない。
そこでは剣の腕前が全てだ。剣の腕で身分が決まる修羅の国だ。獅子は子供を谷底に落とすというからな。
だが、お前の事は常に心配している。
剣神国にはルイスの婚約者エルフ国のフリーダ姫の妹君であり、剣王である第二王女ダリア姫が師範の一人として君臨している。
ダリアを頼りなさい。彼女ならば目をかけてくれるだろう」
それだけ言うと、トムは王宮にある一室を去った。
――王女ミアside
トムが王宮の一室を去った後、ミアは話の展開についていけなかった。
いつものように我儘を言ったとたん、父は自分をあの修羅の国と噂される剣神国に送り出すと宣言した。
ミアは剣術はおろか箸よりも重いものは持ったことがなかった。
弟が剣術を習っているのを見たことはある。
だが、ミアは自分に出来るとは到底思えなかった。
認めよう……自分には父のような超人的な力はない。
どうすればいいのか分からなかったミアだが、一つだけの救いはエルフ国第二王女ダリアが優しい事。
一度だけミアはあった事がある。
ミアの今年の誕生日にホーリーナイト神聖国に遥々やってきたのだ。
そうだ。
その時から父……トムは自分の事を見据えていたのかもしれない。
希少な純血のハイエルフであるダリアは美しかった。
自分の自慢の容姿がかすんでしまうほどに。
ダリアはミアに優しくしてくれたのだ。
彼女曰く、ホーリーナイト神聖国には大きな借りがあるのだという。
ミアに話してくれたのは八百年前に起きた人族とエルフ国の戦争でダリアはまだ駆け出しの上級剣士であった。
とても凄まじい戦いについて行けるだけの力はなく大規模な衝突を指をくわえてみているだけであった。
その時にダリアは親族を始め、可愛がっていた妹さえも失った。
ダリアも人族に追い詰められ、これまでと思った時に後にホーリーナイト神聖国の礎を築いた伝説の勇者に助けられたのだ。
その為にいつか借りを返すのだという。
ミアはダリアの言葉を忘れてはいなかった。
自分が剣神国に行ったら、ダリアは助けてくれるかどうか分からないが、ミア自身このままでは不味いという危機感はある。
弟がメキメキと成長しているのを肌で感じ、ミアは遂に剣神国に行くことを決心した。
今回はここまで。
まだ書き貯めはありますので随時投稿していきます。
読んでくださりありがとうございます。




