10 国王トム
10 国王トム
トムはいつのまにかホーリーナイト神聖国の国王となってしまった。
自分が知らない間にアラスター王が死去し、ローズを王妃として迎え入れ、とんとん拍子に王となった。
まだ十歳の取るに足らない少年が王となった事に神聖国の貴族たちは困惑した。
だが、謁見の間で戦神と剣神を両脇に従え、魔眼を輝かせる少年を見て貴族たちは納得した。
「僕がホーリーナイト神聖国国王トムです。
貴族の皆さんに宣言しましょう。
僕は来たる魔王軍の襲来に備えて戦力の増強を図りたいと思います」
そう言いながら、トムは目線で側仕えに指示を下す。
側仕えの一人が鋼で出来た剣を持ってきた。
それをトムが手に取り、片手でバキッと粉々にした。
それを見た貴族たちは呆然としながらも歓声が沸き起こった。
新たな国王は完全な武闘派なのだと……。
「トム様。ホーリーナイト神聖国の最大戦力が一人、聖女ミラベルでございます」
聖女ミラベルが片膝附き一礼しトムの前に出る。トムは玉座でミラベルを観察した。
――成程……身のこなしに隙が無い。歴代最強の聖女と名高いのも頷ける。
トムはこの娘を決して軽んじることが出来ないと悟った。
隣の玉座で足をブラブラさせながら佇んでいるローズもこの娘を敬愛している様子だった。
国民や貴族の支持が高い。
流石、来たる大魔王戦役に置ける旗頭であった。
「ミラベル殿……僕は幼いので政治や外交には疎い。ミラベル殿が補佐してくださると助かる」
素直にトムは頭を下げた。
下手に出るのは慣れている。
それに実力も自分より高い可能性も有り得る。
「勿論でございます。このミラベル……政の手腕も尋常にあらず。
ホーリーナイト王国の宰相としての役目を先王の代から仰せつかっております。
必ずや来たる大魔王戦役を乗り越えましょう!」
「ああ、そう言ってくれると助かります」
聖女もミラベルと言う新たな駒を手に入れたトムは顔を綻ばせる。
それに可愛い王妃を手にし、トムは浮かれ切っていた。
トムの即位を周辺の勢力が危険視しているのも知らず……。




