表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/25

===5===

 

 俺は部屋のソファによろよろと腰かけて額に浮かんできていた汗をハンカチでぬぐった。


 ドレス……動きにくい、痛い、気持ち悪い、恥ずかしい、そのうえ、自分一人では脱ぐこともできない。本当に良いところが一つもない。

 俺がアイダを待っていると、トントンとノックの音が響いた。はぁ、ようやくこの重苦しいドレスを脱がしてくれる人が来たか……。


「どうぞぉ……」


 俺がそう言うと、カチャリと音を立ててゆっくりと扉が開いた。おや、いつもなら失礼しますと一言あるような気がするのだけれど……。


「シャーリー?大丈夫?」

「……ん?リア?なんで居るの?」

「僕はロレイアス様の所にお使いだよ。その帰りにセリーン姉さんからシャーリーの様子を見てきなさいと言われたんだけど……」


 リア。リアム・レインズ。俺より2つ年上の、1番の友人である。本当は今日はリアの所に逃げ込む予定だったのだが、失敗したわけである。

 今日はもう会わない予定だったのだが、どうやらリアはこちらの屋敷にお使いに来ていたようだ。多分父上の錬金術の納品物に関してだろう。

 ということは、結局レインズの邸宅に逃げても、匿ってくれる先の人間がいなかったわけだ。今日は何かとうまくいかない日だ……。


 しかし、アイダがまだ来ない。俺が予定外の早退をして、まだ情報が伝達されていないのだろう。

 監視と言っても、ある程度は緩いものだ。俺が本気で国外にでも逃げ出さない限りはプライバシーは守られているわけで、四六時中傍にいるわけではない。


 ……今は傍にいてほしかった気がするが。はぁ、先ほどのメリディア夫人の所のメイドさんに脱ぐのだけでも手伝ってもらえば良かった……この調子だと、アイダが到着するまでもう少しかかりそうだ。


「……あー、もう、リアでもいいや。ねぇ、ドレス脱がして」

「ぬっ!!?」


 俺がすっと後ろを向いて髪を持ち上げて背中を見せた所、ぎょっとしたリアから変な声が漏れた。


「お、おバカ!女の子がそういう事を軽はずみに男の子に言っちゃいけません!」

「えぇー……でも、もう苦しいし、痛いから……」

「本当にシャーリーはそういう所が心臓に悪いよ……すぐにアイダさん呼んでくるから、もう少し我慢して」

「うぇぇー……」


 俺は恨めし声と視線をリアに向けたが、リアは俺に触る事もなく、扉から出て行ってしまった。


 ……次はドレスを自動で脱ぐことができる魔法でも開発しよう……。


 そんなことを思いながら、ソファに突っ伏していると、程なくして大急ぎでアイダが現れた。お、こんな顔のアイダはなかなか見れないな。


「はぁはぁ……も、申し訳ありません、お嬢様。すぐに御仕度いたします」


 アイダは一礼してすぐに、ソファでぐったりしていた俺をすっと抱き上げ、すぐさまドレスの後ろのホックを外し、ずっと外したかったコルセットの紐を外してくれた。はぁー……ようやく気兼ねなく息ができる。


 けど……。


「うー……気持ち悪いよう……」

「あ、あぁ……申し訳ありませんでした。きつく締めすぎたようです……」

「ほんとだよぉ……どうせお腹周りなんて、丈余ってるくらいなんだからぁ」


 オレは替えの着替えを着ずに下着姿のままソファの上へと突っ伏した。お腹周りというか、そもそも母上が買ってきた全部のドレスが丈が余っているような状態だ。むしろコルセットで締め付けない方がぴったり着れそうだ。


 ……いっそ21世紀に着られていたようなスレンダー系のドレスでも作ってもらおうか……。い、いや。そもそもドレス自体お断りだ。あ、そうだ!男装の麗人的なそんなニュアンスの礼服を……!


「ですが、ドレスには慣れていってくださいませ」

「俺、オ〇カルになる」

「……ええ、お嬢様が意味の分からない事を言い始めたらとりあえず『ダメ』と言えと言われていますので、ダメです」

「……ぐぬぅ」


 ……この断り方は、恐らく母上の差し金だろう。父上は俺があまりにも女の子らしくない事を少々心配しているらしいが、なんだかんだ甘い。

 にしても、とりあえずダメって酷くない?庭のちょっとした……いや、ちょっとしてはいなかったけど、あの爆発だって魔法の進歩に対する致し方ない犠牲……コラテラルダメージという奴だ。あと、周りの安全はしっかりと考慮している。


「お着換えのお手伝いは?」

「……いらない」

「かしこまりました、替えのお洋服はこちらに置いておきます」


 俺がいつも通り、アイダの着替えの手伝いを断ると、アイダはふぅと一息ついて「湯浴みの準備をしてきます」とこの場を後にした。あー、しばらくは服、着なくてもいいや……。


 ソファにそのままうつ伏せで倒れていると、トントンとまたノックが響いた。んー、姉上かぁ……?


「どーぞー」


 俺が振り向かずに声を出すと、ドアがガチャリと開いた音がした。うーん、誰だ?


「あぁ、シャーリー。良かった、気分は良くな……って……」

「おー、リアか。うん、ようやく落ち着いてきたとこ」

「お、お、お……」


 ……ん?リアの様子がおかしい。お?


「おバカ!!だからもうちょっと異性に対して危機感を持ちなさい!!!」


 リアはそういうと、大急ぎでばさりと自分の着ていた上着を俺にかけてきた。んー……?あぁ、そうか。服着てないや。


「あーごめんごめん」

「もー!この子はー!!」



とりあえずここまでで……。

書き溜め分は残り約20話あります。どんだけ代表作の方サボってんだって話ですね……。

もし、気に入ってくださり、続きが気になる場合はこちらも早めに投稿いたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ