===幕間(19)===
「……寝ちゃったねぇ」
「ふふ、お疲れみたいね」
馬車の中、ティアナとセリーンは横で壁に寄りかかりながら寝ているシャルロットを見ながら笑いあっていた。
辺りはもう夕焼けを通り過ぎ、だんだんと暗くなってきており、馬車の車体についた吊り下げ式のランプには火が灯っている。
もうアメリアンス公領は抜け、レインズ伯領に入っており、あと数十分もすれば屋敷が見えてくるところだ。
「そういえば、シャルが隠そうとしていたのって……」
ふと、眠っているシャルロットの横にある古ぼけた麻布の小袋を見て、ティアナが呟いた。どうやら寝ている間に背中からポロリと横に転げ落ちてきたようだ。
ティアナはそっと袋を持ち上げてそれを観察した。
「……随分年季の入った袋ね。端がほつれてきてるわ」
セリーンも顔を寄せ確認した。なにせ約100年前の布である。赤染とは言え、色は落ちてきていて、赤どころか茶色に近い色合いになってしまっているし、袋の裾は擦り切れて、今にも穴が開きそうだ。
「……どこで見つけてきたんだろ、こんなの……」
ティアナはそう言いながら、縛ってある袋の紐を解き、中に入っている石を取り出した。
やはりティアナの目には、その石はただの石に見える。しかし表面は研磨されていて、人の手が入っているというのは分かる。
「うーん、やっぱり普通の石……に、見えるんだけど」
「シャーリーにとってはこんな感じの石がお宝なのかしら?」
「さすがに『綺麗な石みつけた!』なんていうのは無いんじゃないかなーと思うんだけどぉ……」
ティアナはそう言いながら、石を右へ左へと眺めた。
「……うーん、危険はなさそう。私に見せたって事は多分錬金関連だと思ったって事……ん?」
ティアナは、何気なく石を撫でたところで、はたと手を止めて、指先を石の上に当てた。
「この石……いや、うーん……」
「あら?どうかしたの?」
「なんというか意識して触れた時の感触が……普通の石じゃないというか」
「……どうゆう事かしら?」
「分からないけど……もしかしたら、ただの石じゃないのかも。シャルは『どんな石に見える?』と言っていたからシャルには何か違うものに見えている……?」
ティアナはそう言いつつ「ふう」と一息ついて、その石をもとの麻布にしまうと、シャルロットの背中側にそっと置きなおした。
「あの、ね。お姉ちゃん」
「なにかしら?」
「多分この子の事だから、この石がどんなものか知りたくて、咄嗟に隠したんだと思う。私は学園に戻らないといけないから、もし危険な事になりそうだったら……」
「ふふ、わかっているわ。二人とも私の可愛い妹だもの。危険にならないように、見守っているわ」
「えへへ、ありがとう!」




