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……お店に戻ると、すでに二人とも買い物を終えていたらしく、俺はじとーという怪訝な目で姉上2人に詰められていた。
「……シャル。どこいってたの」
「その……えと……お買い物に」
「もー!心配したんだから!」
ティアナ姉上はぷんぷんという擬音が聞こえてきそうな感じに怒っている。いやはや……怒った顔も可愛い。やっぱり可愛い担当は……。
「シャーリー?別の事考えてるわね?まったく、ダメよ。どこかに行くなら一言声をかけなさい」
「あ、あう。ごめんなさい」
どうやら顔に出ていたらしい。セリーン姉上に怒られてしまった。
いやだって声掛けたら私たちも行くーってなって商談が出来なさそうなんだもの。特にあの手のお店にドレスの女の子が大所帯なんて取り合ってもらえない可能性すらあるし……。
……まぁ、好奇心が抑えきれなかったというのが本音なんだけど。
「でも、護衛は連れていたし、そこまで遠くには行ってなかったみたいだから、お説教はおしまい」
どうやら許してもらえたらしい。二人は俺を抱き上げて撫でくりまわした後、お会計がまだらしく、お店のカウンターの方へ出かけて行った。ふー。じゃあ、俺はこの辺りで待っていようか……。
「お嬢様」
「うん?」
―――と、一息入れていたところで、後ろからアイダが俺に話しかけてきた。
「……なぜ、私ではなくカークを?」
「……あ、う、え、えぇとー……」
どうやら俺の護衛騎士じゃないカークを連れて行った事に、アイダさんもご立腹だったらしい。め、目が、目が座っていらっしゃる。
ど、どうしよう、アイダからの叱責については、頭からすっぽり抜けていた。い、言い訳、言い訳を……思い浮かばねぇー!
「お嬢様は私の事が嫌いなのですか……?」
「き、嫌いじゃないよ。ただ、えと、今回はこっそり抜け出したかったっていうかぁ……」
「私は、頼ってもらえないのですね……」
「もちろんアイダの事は頼りにしてるから!」
「では、今後は……」
「う、うん、まずはアイダを頼る」
「……わかりました。言質は取りましたよ?」
「ほぇ?」
目を逸らしながら話をしていた俺だが、アイダのほうを向くと、いつもの澄ました顔をしている。騙されたというか、これ、何かマズい事を言ってしまった……ん、だろうか……。いや、まぁ俺の専属の護衛騎士だし、本当は真っ先に頼るべき相手ではあるんだけれど……。
……よしっ、考えない事にしようそうしよう。
俺がアイダとこんなやりとりをしている間、向こうから執事さんをつれた姉上たちが帰ってきた。無事買い物は終わったのだろう。
「いっぱい買えたわ。これ以上長居しちゃうと、レインズ領に帰るのが遅くなるわね。帰りましょ」
「「はーい」」
うむ、まだ午後3時くらいといったところだが、前世と違い夜には辺りは真っ暗になる。薄暗い中なら、初級と謡われていたファイアなんかをトーチ代わりに使えば明かりは確保できるだろうが、深夜に、しかも馬車なんてとてもじゃないが走らせられない。だから、後は帰路につきましょうというわけだろう。
店を出ると、すでに馬車はそばに停車しており、帰りの準備は万端だ……っておいおい、すげぇないつの間に。あの執事さん、人畜無害そうなお爺ちゃんなのだが、実はとんでもない人なんじゃあ……。
俺が驚きながら見ていたのに気が付いて、にっこりと笑っていらっしゃる。う、ううむ、侮れん。
「ほら、シャーリーも早く乗って」
「うん……あ、ちょっと待って」
そう、どうせここからは馬車に揺られるだけだ。折角だからあの石の事をティアナ姉上に聞いてしまおう。
俺は駆け足でカークのほうへ行くと、麻布だけ渡してもらい、急いで馬車の中へと戻ってきた。
「シャル?何もってきたの?」
「ちょっと姉上に見てほしくて」
「私?」
ティアナ姉上はキョトンとした表情をして首を傾げている。うむ、かわいい。じゃなくて。
俺は赤染の麻布から例の石を取り出して、姉上の目の前に差し出した。さて、これでこの宝石がどんなものなのか分かるだろう。
「ねぇ姉上、これって……」
「んー?普通の石……?」
……お、おや……?え、うそ。姉上にもただの石に見えている……?
いや、姉上ってちょっと感性が豊かな所があるから、宝石に対してもなんというかこう天然な反応がある場合が……。
「どんな石に見える?」
「表面は綺麗に磨かれているけど、森とかに落ちてそう?」
「色は?」
「灰色。シャル、この石がどうかしたの?」
うお……まじか。どうやら錬金由来から少し遠ざかった気がする。
横でやり取りを見ているセリーン姉上も「普通の石ね?」と言っているあたり、なんか、実はコレ、すごいものな気が……。
まだ確定ではないが……これって、まさか、錬金じゃない魔法由来の代物だったりするのだろうか……。
と、なると、錬金以外の方法で物に魔力を詰め込めるという事になる。
もしそんな事が出来るのであれば、前世で色々な機材が組み合わさって、電力で動いているアレやコレをその過程をすっ飛ばして色々と便利なものが作れるのでは……!?
しかも、血に縛られる錬金術ではなく、ある程度量産も出来そうな、自由の利く魔法でだ……!研究……し、したい!!
となれば、もういっそこれは父上や母上にも内緒にしてしまおう。危ないものかもなんて取り上げられたらたまったものではない!
「あーえとーそのー、ナンデモナイ!」
「……?う、うん?」
俺はいそいそとその石を麻布にしまいなおして、自分の背中にすっと隠した。
「それにしても、今日はタノシカッタネー!」
そしてその後、しっかりと当たり障りのない話題にささっと切り替えた。よし、これでもうこの石が話題に挙がることはあるまい!
「……むー、シャル?あんまり危ないことはしちゃダメだよ?」
「へっ!?し、シナイヨ?」
「約束だからね?」
う、む。鋭い。が、姉上はどうやらこれ以上は追及する気はないようで、ぽんぽんと俺の頭を優しく叩くと、にっこりとしたいつもの姉上の顔に戻った。ふー、何とか切り抜けたぜ……。
……その後、馬車は予定通りに道をひた走り、恙なくレインズ領へと向かい、俺たちのアメリースでのショッピングは幕を閉じたのだった。
あ、そういえばコレ、護衛の報酬だったな。となると、次は秘密基地の確保だ!




