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===14===

 

 そこからしばらくファッションショーのようなものは続き、ゴスロリ風やらサマードレスやら、ワンピースやら、色々なものをティアナ姉上と一緒に着せられたが、ようやく解放された。

 あの後、色々お買い上げした中にあった薄桃色のドレスワンピのような服を「着ていきましょっ!」というセリーン姉上の一声でそのまま着ているわけなのだが、ティアナ姉上も「シャルとペアルックがいいなぁ」と呟いたことで、今は姉妹揃って同じ感じの服を着ている。

 店員さんの黄色い声を聴く限りは似合っているのだとは思うが……まぁ、姉上が楽しそうでなによりである……。う、うん、そう思おうそうしよう。


 そして、今は皆揃って軽い昼食の真っ最中。少々大きめのレストランに入り、今は円卓のある個室で顔を合わせながら座っている。

 俺は頼んだべべの肉……前世で言う地鶏のサンドイッチを頬張りながらふうと一息をついた。


「ティア、シャーリー。貴方たちは行きたいところはないの?」


 俺がサンドイッチを飲み込んだのを見計らって、セリーン姉上が俺達に尋ねた。


 その質問に、俺が隣に座っているティアナ姉上に「どうする?」と目配せすると、ティアナ姉上はにっこり笑って俺の頭をぽんぽんと優しく撫でた。これは多分「シャーリーの行きたい所からでいいよ」という事なのだろう。


 じゃ、じゃあ俺から……。


「……本屋」

「本……うーん、本ね……シャーリーはうちの蔵書って目を通している?」

「リアの部屋の?うん、大体置いてあるものは分かっているけど……」

「だとすると、多分物足りないわね……うちの蔵書はかなり揃っているのよ。大衆小説が読みたいわけではないのでしょう?」

「う……バレてる……」


 ……どうやらセリーン姉上は俺の考えている事がお見通しらしい。


 しかし、俺がリアの許可を得て本を探した限りでは、リアの部屋にはよくある魔導書的な本は存在していなかった。魔法入門の本……いっそ冊子と思えるほど薄い本と、初級から中級……だと思われるが、学園で習いそうなレベルの書籍。この2つしか無かったのだ。リアも一緒になって探してくれたから、恐らくは間違いないだろう。

 しかし、セリーン姉上はああは言っているものの、それでもこんな大きな町の本屋さんだ。流石に応用技術だとか、そういった本くらいあるだろう。


「……でも行きたい」

「まぁ、そんなに時間はかからないかしら。いいわ、新品も古本も扱っているお店があるから覗いてみましょう」

「!」


 お、やったぜ。どうやら俺の何処と無く吹かせていた「いや流石にあるっしょ?」という念が届いたようだ。そうと決まれば善は急げだ。俺は皿の上に余っていたベベサンドを無理やり口のなかに詰め込んでひょいと座っていた椅子から飛び降りた。


はへふへ(あねうえ)ー!はあふいほ(はやくいこ)ー!」

「……くぅっ、か、かわいい……!」


 はしゃいだ俺の様子をホワンとした顔をしながら眺めていたセリーン姉上だったが、すくっと立ち上がって俺の目の前まで来て目線を合わせてしゃがみこんだ。


「でも、お行儀が悪いわ。いっぱいに頬張ったりしちゃダメよ?」

「ん、む……ゴクン。はーい」


 口の中のサンドをようやく噛みこんだ俺は姉上に返事をして、もう一度「行こう」と促した。

 ティアナ姉上もそれに応じて席から立ちあがると、傍で控えていた護衛の二人もアイコンタクトをして動き始めた。よっし!いざ、街の本屋さんへ!


 ……―――と、勇み足で出掛けたものの、先程のレストランから程近い、広場の端。あまり歩かなくても良い位置に本屋さんはあった。これは確かに時間が掛からないな。急いで食べて叱られる必要はなかったかもしれない。


 到着した本屋は外見だけ見ると、どちらかというと宝石店とかに近い見た目をしているように思う。俺の思っていた図書館的な外見からは随分とかけ離れている。なんというか……言っては何だが、たしかにラインナップが少なそうな気がする。


「こ、これが一番大きい所?他のお店は?」

「残念だけど、ここしかないわね。恐らくこの辺りで最大規模かしら」


 俺は横のセリーン姉上に尋ねてみたが、どうやらこれが一番大きい所らしい。


 ま、まぁ、店の大きさはちょっと小さめだけれど、前世の街の小さな本屋さんみたいに本棚にぎゅうぎゅうに詰まっている可能性もあるしなっ!


 俺は一抹の不安を覚えながらも、店の中へと足を踏み入れたが……。


 中には結構頑丈そうな棚に本が背の状態ではなく、表紙の状態で並べられている。向こうの方には背の状態で棚に詰めて置いてあるところもあるようだが、1冊を大きく見せる感じの商品の置き方が大半を占めている。その内容も、宗教書だったり、宝石が埋め込まれている綺麗な装丁だったりするようだ。こ、これは……。


「ね?」

「な、なるほど」


 セリーン姉上の言っている事が大体理解できた。恐らくは本は美術的価値のほうが高いような貴重品なのだろう。

 向こうに詰め置かれている方の本は、古本のようで、装丁がひどく痛んでいたり、参考書や大衆小説のような本だったりするようだ。よく見ると、見慣れた薄っぺらなリアの部屋にあった魔法入門的な本もある。お値段を見てみると、こちらは高いと言えば高いが、少し背伸びをすれば変えそうな値段だ。


 が、いかんせん美術的価値寄りの本にスペースを追われ、ほとんどラインナップが無いように思う。


 ……よくよく考えたら、リアの部屋の本も大体筆跡が違うものだったし、一つ一つ手作りなのだろう。あの魔法入門書は見た感じ同じ書体っぽいから、活版で作成されているのだろうが、それ以外の本の手作りじゃない文字は判子くらいだった気がする。

 そういえば、さっきのレストランでも小説を読んでいるみたいな人はいなかったし、ましてや新聞なんてないものな……なんてこったい……。


 俺は念のため、店の隅々まできょろきょろと探してみたが、これと言って目の引く書物は無い。


「……ない」


 俺はがっくりと肩を落としてため息をついた。どうも、大衆的に魔法を大々的には教えてはいない、というのが答えのようだ。


 皆、魔力があるってわかっているんだから、個人情報参照だけじゃなくてもっと有効活用すれば良いのに……。


 俺は心の中でぶつくさ文句を言いつつ姉上たちに「ほしいもの無かった」と言って、その場をしょげしょげと後にした。


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