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===10===

 

「さて、シャーリー。何を企んでいたの?」

「な、なーんにも?ただのセケン話ですヨー?」


 見つかってから即座に俺はセリーン姉上に、詰められていた。どうやら話の端を聞かれていたらしい。俺は視線を全力で横に逸らしているが、姉上の疑惑の視線が突き刺さる……。


「いや、もう無理でしょ。姉さん、実はー……」

「あー!あー!あー!ダメだってばー!」


 まだ事実を赤裸々に話される訳にはいかない!リアめ、こんなところで裏切りそうになりおって!早いよもうちょっと粘って!!

 しかし、俺が全力で阻止したことで、さらに強い疑惑の視線がこちらに向けられている。ば、万事窮す……。


 くっ……こうなったら……。


「あの……あのね。おねえちゃん……おれっ、じゃなくて、わたしね、ひみつきちがね、ほしかったの」


 必殺中の必殺。あとからの自傷ダメージが半端ないから使いたくない秘奥義。その名も泣き落とし!上目遣いでちょっとだけ瞳を潤わせて、姉上の顔をじっと見つめる!おいそこで冷めた目で見つめているリア、後で覚えてろよ!


「……くぅっ、か、かわいい……ずるいわ、こんなのぉっ」


 姉上は俺の迫真の演技に、顔を赤らめながらぎゅっと俺の事を抱きしめた……あ、あの、ぐるじいです離して。この秘奥義中の秘奥義。なんだったら今からでも穴があったら入りたい秘奥義はセリーン姉上には初めて使ったのだが、こうかはばつぐんだ。


 なんだかんだセリーン姉上は俺とティアナ姉上には甘めである。


「もう、しょうがないわね。で、秘密基地って?」

「……ぶふぇっ。リアが、町はずれに使ってない空き家があるって……」

「あぁ。ゴーストが住み着いたとかで放置していたあそこかしら……で、子供だけでいけないから、護衛を探そうって事ね」


 どうやらゴーストの出る空き家というのは姉上も知っていたようだ。あれ、意外と秘密じゃねぇな?


「……よしっ。私が護衛するわ。見に行くのはいつ?」

「え゛」

「あら不満?」


 え、いやだって姉上……戦えるの?姉上は筋肉質ではない至って普通の健康的な女性という見た目だ。それに俺の前では、いつもお淑やかにしている印象だから、護衛なんて想像がつかない。

 言い方はあまり良くないのだけれど、いっそそこいらに置いてある辞典のような本ですら「重たい」と言いそうな気がするのだけれど……。


「シャーリー。こっち」

「ん?」


 俺が目を丸くしている所で、リアがこちらに耳打ちしてきた。


(姉さんはうちで一番強いよ。なんだったら下手な傭兵よりも)

「ほぁ!?」


 リアから告げられたのは驚愕の事実だった。なんと、あのアンジェロ兄上よりも、セリーン姉上のほうが強いらしい。しかも、そこいらの傭兵よりも強いとの事らしい……え、嘘だろ。この体のどこにそんな膂力が……!?

 あ、いや。もしかして、いつも俺が持ち上げられたり、抱きしめられて割と苦しかったりしているのって、単に俺が軽いとか潰れやすいとかではなくて、セリーン姉上やティアナ姉上が力持ちだったりするのだろうか。


「リアム?失礼な事は伝えていないわね?」

「ううん。姉さんはこう見えて強いよって言っただけだよ」


 姉上はリアの耳打ちに少しだけ警戒したようだが、リアの言葉に「じゃあいいかしら」と呟いた。しかし、少々予想外だったけれど、何とか空き家の内見もできそうだ。丁度良いし、姉上のお言葉に甘えてしまおう。


「じゃあ、おねがい……」

「……あっ、でもぉ」


 俺がお言葉に甘えようとしたところで、姉上がその言葉を遮った。むむ、何か不都合な事を思い出したのだろうか。そして、俺のことをちらちらと見つめると、にっこりと頷いてこちらに顔を近づけた。


「せっかくだから、報酬がほしいわ」

「ほーしゅー?」


 姉上はそう言うと、ゆっくりと俺の頭を撫でた。報酬……まぁ、そりゃ護衛してもらうのだから、報酬があって当然か。

 しかし、傭兵に勝る強さな姉上となると、報酬額は高くつきそうだ……うぅん。本当は手元のお金に手を付けたくないけれど、初期費用として見積もるべきだろう。

 果たしていくらくらいなのだろうか。


「おいくら?」

「お金はいらないわ」


 俺が値段を聞いたところ、姉上はそうではないと首を振った。どうやら金品が欲しかったわけではないようだ。そして、姉上は俺の肩に手を置いてまたにっこりと笑った。


「少しの間、おねえちゃんと遊びましょう?」

「…………あ、あそ……び?」


 ……な、なんだろう。悪寒がするぞ?


 俺がぼわっと膨らんだ尻尾を後ろに隠した所で、姉上は「もう」と冗談っぽく怒ると、困ったような笑顔を見せた。


「怖い事なんてしないわ。シャーリーったら私の所に来てくれないのだもの。結婚したらあまり会えなくなってしまうでしょう?だから、ね?」


 ……俺自身、魔法の開発に熱中していたし、歳も離れているし、用事もあまりなかったから、淑女教育以外で姉上の所へあまり行かなかったのは事実だ。結局依頼にお金もかからないみたいだし、それならば良いだろう。


「ん……そういうことなら」

「ふふ、折角ならティアも誘おうかしら。楽しみね」


 そこから、姉上とリアと俺とで3人で日程を話し合い、今週末は1日、姉上に付き合って、次の週末に空き家に行くという事になった。

 今週末と急な日程なのは、ティアナ姉上が早くしないと王都の学園へ帰ってしまうからだ。まぁ、すぐ済むに越したこともないだろう。


「……あら、もうこんな時間。シャーリー、早く帰らないとラモーナ様に怒られてしまうわ」

「……あ、やば。それじゃあ俺帰るから、リア、後は任せた!姉上はまた今度!」

「おねえちゃん。」

「……せ、セリーンおねえちゃん、また今度」

「はい、またね」


 俺は窓から身を乗り出して、とびお……りようとしたところ、姉上に「あぶないからダメ」と引きずり降ろされたので、リアの部屋からほど近い裏口のドアから屋敷を後にした。


 ふっふっふ、ここから俺の起業計画の第一歩が始まる。ようし、これから頑張るぞ、目指せあしながおじさんライフ!



 ―――……。



「……乗せられてるなぁ、シャーリー」

「余計な事は言わないの」

「はーい」


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